これらの資料は、日本における東京一極集中の是正と地方創生に向けた多角的な取り組みを解説しています。政府は移住支援金の支給や学生の地方就職支援を強化しており、地域おこし協力隊の隊員数も過去最多を更新し、任期後の定着率も約7割に達しています。特に北海道厚沢部町の「保育園留学」は、子育て世帯を呼び込み地域経済を活性化させる先進的な仕組みとして注目されています。また、2024年施行の二地域居住促進法により、完全移住だけでなく「デュアルライフ」という新しい選択肢も制度的に支援されるようになりました。単なる人口確保から、デジタル活用や地域OSの構築を通じた、持続可能な地域社会への転換が加速しています。
二地域居住等の促進に関する包括的ブリーフィング資料
エグゼクティブ・サマリー
本資料は、国土交通省が推進する「二地域居住」の促進策、法的枠組み、予算措置、および具体的な実施状況についてまとめたものである。二地域居住とは、主な生活拠点とは別に、特定の地域に生活拠点を設ける暮らし方を指す。
人口減少が加速する中、地方への人の流れを創出・拡大する手段として、二地域居住は極めて重要な役割を担っている。令和6年5月に成立した改正法により、市町村による「特定居住促進計画」の作成や、民間団体等を「二地域居住等支援法人」として指定する制度が創設された。これにより、ハード・ソフト両面での環境整備が加速している。
主なポイントは以下の通りである。
- 社会的意義と個人的意義: 地域の担い手確保や消費拡大といった社会的側面と、ウェルビーイングの向上や新たな働き方の実現といった個人的側面の両立。
- 制度的支援: 法律に基づき、コワーキングスペース整備等の特例措置や、空き家対策・地域交通のリ・デザインに対する重点的な予算配分がなされている。
- 官民連携: 1,200を超える団体が参画する「全国二地域居住等促進官民連携プラットフォーム」の構築により、マッチングや課題解決が図られている。
- 中長期の課題: 交通費・滞在費の負担軽減、生活環境(医療・教育等)の維持、および「デジタル住民票」等を通じた地域との関わり方の最適化が今後の焦点となる。
1. 二地域居住の定義と意義
二地域居住は、単なる観光以上、完全移住未満の「関係人口」の深化形態として位置づけられる。
二地域居住の定義
主な生活拠点とは別の特定の地域に、ホテル等を含めた生活拠点を設ける暮らし方。都市部と地方部の往来だけでなく、地方部間での多拠点居住も含まれる。
促進の意義
二地域居住の促進には、以下の多面的な意義が存在する。
| 分野 | 主な意義・効果 |
|---|---|
| 社会的意義 | 地域の担い手確保、消費需要の創出、新規ビジネス・後継者の確保、雇用の創出。 |
| 個人的意義 | ウェルビーイングの向上、新たな働き方・学びの機会の創出、豊かな自然環境での子育て。 |
| 冗長性(リダンダンシー) | 自然災害やパンデミック等の突発的な危機に対する避難場所・拠点の確保。 |
2. 法的枠組みと推進体制
「広域的地域活性化のための基盤整備に関する法律の一部を改正する法律」(令和6年5月成立、11月施行)に基づき、以下の制度が運用されている。
自治体による計画制度
- 広域的地域活性化基盤整備計画(都道府県): 広域的なインフラ整備や拠点整備の方針を策定。
- 特定居住促進計画(市町村): 地域の実情に応じた二地域居住の具体的な方針、拠点施設(住宅、コワーキングスペース等)の整備、利便性向上策を記載。
- 特例措置: 住居専用地域におけるコワーキングスペース開設の円滑化などが含まれる。
二地域居住等支援法人(特定居住支援法人)
市町村長は、NPO法人や民間企業(不動産会社等)を支援法人として指定できる。
- 役割: 空き家・仕事・イベント情報の提供、マッチング支援、計画作成の提案。
- 現状(R7.12.31時点): 全国で51法人が指定されている。
協議会制度
市町村、都道府県、支援法人、地域住民、交通事業者、商工会議所等で構成される「二地域居住等促進協議会」を組織し、関係者間の連携を図る。
3. 予算措置と支援事業(令和8年度当初予算案)
二地域居住の「住まい」「なりわい」「コミュニティ」の課題解決に向け、多角的な予算配分が行われている。
| 分野 | 予算項目 | 内容 | 予算額(案) |
|---|---|---|---|
| 住まい | 空き家対策総合支援事業 | 空き家再生等、二地域居住促進に資する取組を重点支援。 | 5,900百万円 |
| なりわい/コミュニティ | 地方移住促進テレワーク拠点施設整備支援事業 | 計画区域内でのコワーキングスペース等の整備を補助。 | 45百万円 |
| インフラ | 広域連携事業(社会資本整備総合交付金) | 拠点施設整備と一体となった周辺基盤整備(アクセス道路等)を支援。 | 459,693百万円の内数 |
| 地方創生 | 地域未来交付金(地域未来推進型) | 二地域居住促進に資する取組を重点的に支援。 | 160,000百万円の内数 |
| 観光 | 第2のふるさとづくりプロジェクト | 特定居住促進計画に関連した申請案件との連携。 | 300百万円 |
| 離島 | 特定有人国境離島地域社会維持推進交付金 | 二地域居住者等を支援要件に追加。 | 5,500百万円の内数 |
4. 自治体および法人の取組状況(令和7年12月31日時点)
制度の活用は全国的に広がっており、各地域で計画策定が進んでいる。
- 都道府県計画: 20計画(北海道、宮城県、新潟県、長野県、和歌山県、高知県等)
- 市町村計画: 28計画(北海道北見市、新潟県佐渡市、長野県白馬村、和歌山県田辺市、長崎県五島市等)
- 支援法人指定数: 51法人(日本航空、パソナJOB HUB、アドレス、各地のNPO法人や信用金庫等)
5. 先導的プロジェクトの実装例
官民連携による「二地域居住促進先導的プロジェクト」では、移動費負担やコミュニティ接続に関する実証が行われている。
- 移動負担の軽減:
- マイレージ活用による航空移動費の負担軽減(和歌山県、三豊市、日本航空等)。
- 離島航路・航空路の負担軽減(新潟県佐渡市、長崎県壱岐市等)。
- 新幹線等の鉄道交通費負担軽減(新潟県三条市、JR東日本等)。
- デジタル・情報の活用:
- デジタル住民票・第2住民登録による可視化とサービス提供(福島県磐梯町、茨城県境町等)。
- ブロックチェーンを活用した受入促進施策(島根県大田市)。
- コミュニティ・なりわい:
- 地域の人事部による担い手マッチング(秋田県大館市)。
- 伝統産業関連人材の確保(佐賀県有田町)。
- デュアルスクール(親子二地域居住)の実証(山形県高畠町)。
6. 中長期的課題と今後の展望
二地域居住を定着させるためには、一過性のブームに終わらせないための環境整備が必要である。
検討すべき中長期課題
- 諸費用への支援: 高速道路料金、燃料費、新幹線代、滞在費などの個人負担軽減策の継続検討。
- 生活環境の維持: 買い物、医療・福祉、子育て・教育サービスの持続可能性確保。
- 地域との関わりの制度化:
- 「ふるさと住民登録制度(仮称)」の創設検討。
- ベーシック登録(観光・特産品購入)からプレミアム登録(ボランティア・副業・参画)への段階的な深化。
官民連携プラットフォームの強化
令和6年10月に設立された「全国二地域居住等促進官民連携プラットフォーム」では、以下の専門部会を設置し、具体的な解決策を協議している。
- 負担軽減部会: 交通・滞在費用の軽減。
- 登録・地域関与部会: 居住者の証明と地域貢献の環境整備。
- 空家部会: 空き家の情報収集からマッチングまでの課題解決。
以上の施策を通じて、都市部と地方部が相互に補完し合う、持続可能な国土形成が目指されている。
感想 1
サマリー
国土交通省の資料に基づき、日本における「二地域居住」(デュアルライフ)の促進策が詳細に解説されています。これは、単なる富裕層の趣味ではなく、人口減少に直面する地方の活性化、個人のウェルビーイング向上、そして災害やパンデミックに対するリスク分散という多面的な意義を持つとされています。これまで障壁となっていた住まい、仕事、コミュニティ、そして交通費といった課題に対し、法改正による規制緩和、民間企業やNPOが担う「特定居住支援法人」の設置、さらには交通費軽減やデジタル住民票といった具体的な予算措置と実証プロジェクトが進行中です。企業側も、定住人口の奪い合いから、定期的に地域に関わる「関係人口」の生涯価値(LTV)を重視するパラダイムシフトが起きており、二地域居住は社会システムとして本格的に整備されつつあります。