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2023-10-17 07:50

青水仙、赤水仙/海若 藍平(夢野久作)

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作品名:青水仙、赤水仙
著者:海若 藍平(夢野久作)

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青水仙 赤水仙 海若 藍平 夢野久作
歌子さんは友達に教わって、水仙の根を切り割って、赤い絵の具と青い絵の具を入れて、お庭の隅に埋めておきました。
早く芽が出て、「赤と青の水仙の花が咲けばいい。」と毎日水をやっておりましたが、いつまでも芽が出ません。
ある日、学校から帰ってすぐにお庭に来てみると、大変です。
お父様がお庭じゅうをすっかり掘り返して、畑にしておいでになります。
そうして、歌子さんを見ると、「やあ、歌子か。お父さんはうっかりして悪いことをした。
お前の大切な水仙を二つとも桑で半分に切ってしまったから、
裏の草原へ捨ててしまった。勘弁してくれ。
その代わり、今度水仙の花が咲く頃になったら、大きな品水仙を買ってやるから。」とお謝りになりました。
歌子さんは泣きたいのをやっと我慢して、裏の草原を探しましたが、
もう見つかりませんでした。
そうしてその晩、布団の中で、「品水仙はいらない。あの水仙がかわいそうだ。
もう水をやることができないのか。」と、いろいろ考えながら泣いて寝ました。
あくる日、学校から帰るときに歌子さんは、
もう家へ帰っても水仙に水をやることができないからつまらないなあ。
と、しくしく泣きながら帰ってきますと、
途中で二人のきれいなお嬢さんが出てきて、
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なれなれしくそばへ寄って、
あなた、なぜ泣いていらっしゃるの?
と、答えました。
歌子さんが訳を話すと、「それでは私たちと遊んでくださいましな。」
と、親切に言いながら連れ立ってお家へ帰りました。
二人は本当に静かなおとなしい子でした。
顔色は二人とも雪のように白く、
おさげに黄金の稲飾りをつけて、
一人は赤の、一人は青のリボンを結んでおりました。
歌子さんは少し不思議に思って尋ねました。
あなたたちはそんな薄い緑色の着物を着て寒くはありませんか?
いいえ、ちっとも。
どうも。お名前は何とおっしゃるの?
花子。
魂子と申します。
どこにいらっしゃるのですか?
二人は顔を見合わせてにっこり笑いました。
この頃、ご近所に来たのです。
どうぞ遊んでくださいましね。
歌子さんはそれから毎日、
三人でおとなしく遊びました。
本を見たり、
絵や字を書いたり、
お手玉をしたりして、
日が暮れると二人はそろって、
さようなら、
と帰っていきました。
お母さんは、
本当におとなしい、品のいいお嬢さんですこと。
歌子と遊んでいると、
うちにいるかいないかわからないが、
くらいですわね。
と、
お父さんと話し合って、
喜んでおいでになりました。
そのうちに、
お正月になりました。
歌子さんは初夢を見ようと思って寝ますと、
いつも来るお嬢さんが、
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二人そろって枕元に来て、
さもうれしそうに、
今日は、
お別れに来ました。
と言いました。
歌子さんはびっくりしましたが、
これはきっと夢だと思いましたから、
安心して、
まあ、
どこへいらっしゃるの?
と尋ねました。
二人は決まり悪そうに、
今から、
裏の草原に行かねばなりません。
どうぞ、
遊びにいらしてくださいね。
と言ううちに、
二人の姿は消えてしまいました。
歌子さんは、
はっと目を覚ましたが、
このとき、
やっと気がつきまして、
それじゃ、
水仙の精が、
遊びに来てくれたのか?
と、
夜の明けるのを待ちかねて、
草原へ行ってみました。
草原は黄色く枯れてしまっている中に、
水仙が一本、
青々と伸びていて、
青と赤と、
二色の花が、
美しく咲き並んでおりました。
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