WEBVTT

00:00:08.050 --> 00:00:17.750
ようこそいらっしゃいました。 ここは紡ぎ屋、世界中の物語を紡いでご紹介する小さな案内所です。

00:00:19.010 --> 00:00:26.370
この店は日中には姿を見せません。 必要な時にだけあなたの前に現れます。

00:00:27.490 --> 00:00:38.860
どうやら今夜はお客様が物語を求める方のようですね。 この子はお客様を案内する紡ぎです。

00:00:39.760 --> 00:00:48.340
招かれたものにしか見えない不思議な猫です。 紡ぎ屋では様々な形の物語を紹介しております。

00:00:49.100 --> 00:01:02.360
映画、絵本、漫画、ゲーム、国も時代も関係なく、いろんな物語を紡いでいきます。 本日私が担当する物語は、星を紡ぐ物語。

00:01:03.260 --> 00:01:12.300
前回、春の星座をご紹介させていただきました。 今回は夏の星座にちなんだ物語をご紹介します。

00:01:13.200 --> 00:01:23.880
ちょうど今からプラネタリウムのプログラムが始まりますが、お時間良ければいかがでしょうか。 紡ぎも是非にとおっしゃっております。

00:01:24.860 --> 00:01:32.680
一見見せ構えは狭く見えるかもしれませんが、奥には広い空間がつながっておりますのでご案内します。

00:01:42.820 --> 00:01:57.390
それでは席に座ってゆったりとリラックスしてください。 これから少しの時間、銀河の旅に出かけてみましょう。

00:01:59.640 --> 00:02:07.720
最近空を見上げたのはいつですか? 最近空を見上げるのを忘れていませんか?

00:02:11.000 --> 00:02:22.590
今日は夜の空を思い浮かべながら、ゆっくりと聞いてください。 今あなたがいる場所から

00:02:23.250 --> 00:02:27.790
少しだけ遠くへ 夜の空を見上げてみましょう。

00:02:31.130 --> 00:02:36.590
昼間は明るかった空が 少しずつ暗くなって

00:02:38.010 --> 00:02:44.870
夜の色になってきます。 夏の夜空でまず見つけてほしいのが

00:02:45.390 --> 00:02:53.380
3つの明るい星です。 夜空に浮かぶ3つの大きな三角形。

00:02:54.020 --> 00:03:05.080
これが夏の大三角です。 3つの星にはそれぞれ名前があります。

00:03:07.690 --> 00:03:10.770
一つ目は 七夕の織姫。

00:03:12.490 --> 00:03:19.710
織姫は 植女星とも呼ばれ、こと座にある一等星ベガを指します。

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二つ目は ひこぼし。

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県牛星とも呼ばれ、和し座にある一等星 アルタイルを指します。

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そして3つ目がデネブ。 白鳥座の星です。

00:03:55.410 --> 00:04:02.850
織姫のベガとひこぼしのアルタイルは カササギが翼を並べて

00:04:02.850 --> 00:04:09.350
天の川に架けた橋を渡って会いに行きますが このカササギが

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ベガとアルタイルの間にある 白鳥座。

00:04:20.330 --> 00:04:26.030
この3つの一等星で形作られるのが 夏の大三角です。

00:04:28.520 --> 00:04:32.700
デネブは白鳥座で最も明るい恒星。

00:04:35.180 --> 00:04:42.280
約1200年から1600光年も地球から離れているのに

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白色で 長居星のため一等星に見えます。

00:04:51.490 --> 00:04:55.670
デネブのすぐ東にある三高星雲。

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北アメリカ星雲は写真に撮ると 北アメリカ大陸に

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よく似ているのがわかります。 ベガは琴座の一等星。

00:05:13.310 --> 00:05:19.270
地球から比較的近く およそ25光年の距離にあります。

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この星には塵のリングが見つかっており 惑星が存在するのではと考えられております。

00:05:34.950 --> 00:05:39.750
M56星団 M57星雲があり

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M57星雲は環状星雲で リング星雲とも呼ばれます。

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アルタイルは和紙座の一等星。 数億歳であろうと言われていますが

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恒星の中では非常に若い星。

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アルタイルとはアラビア語で 飛翔する和紙の意味。

00:06:12.870 --> 00:06:18.810
対して琴座のベガには 落ちる和紙という意味があり

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織姫、彦星のようにペアになっています。

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夏の南の空 そこには大きなサソリがいます。

00:06:34.200 --> 00:06:41.620
サソリ座です。 その中心には赤く輝く星があります。

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これがアンタレスです。

00:06:51.680 --> 00:06:57.600
そしてこのサソリには 一人の狩人との物語があります。

00:06:59.900 --> 00:07:02.960
その狩人の名前はオリオン。

00:07:15.030 --> 00:07:19.810
昔オリオンという とても腕のいい狩人がいました。

00:07:22.260 --> 00:07:26.080
彼は自分の腕に 絶対の自信を持っていました。

00:07:29.010 --> 00:07:32.890
俺に倒せない獲物なんて この世界にはいないさ。

00:07:34.900 --> 00:07:41.040
その言葉を聞いていた神様は 少し困ったようにオリオンを見つめました。

00:07:42.760 --> 00:07:46.480
そうか、ずいぶんと自信があるようだな。

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もちろんだ。 俺は誰にも負けない狩人だからな。

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神様はしばらく黙っていました。

00:07:59.230 --> 00:08:02.690
そして小さく息を吐いて こう言いました。

00:08:04.370 --> 00:08:09.750
では、お前が本当に恐れるものがあるか 試してみよう。

00:08:12.620 --> 00:08:16.840
その夜、オリオンの足元で 小さな音がしました。

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カサ、カサ。

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暗い草むらから 一匹のサソリが現れます。

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オリオン。

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なんだ、こんな小さなサソリが 俺に何をするって言うんだ。

00:08:39.170 --> 00:08:44.140
そう思うのなら近づいてみればいい。

00:08:46.820 --> 00:08:50.760
オリオンは一歩、また一歩と近づきます。

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そしてサソリの毒針が静かに光りました。

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その後、オリオンはサソリ座の毒によって 命を落としてしまいます。

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神様は二人を星空へあげました。

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オリオンを星座に。

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サソリも星座に。

00:09:17.110 --> 00:09:20.630
けれど、二人が二度と会わないように

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夜空の中でサソリが昇ってくると オリオンは沈んでいきます。

00:09:28.570 --> 00:09:33.170
まるで今でもオリオンが サソリから逃げているように。

00:09:35.510 --> 00:09:39.890
そんな物語が星空には残されています。

00:09:44.180 --> 00:09:50.380
サソリ座の近くにはもう一つ 夏の代表的な星座があります。

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イテ座です。

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弓を引く人の姿をした星座です。

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ただ、実際の星空で探すなら、

00:10:04.220 --> 00:10:11.140
人の姿よりもジーポッドのような形を探す方が 見つけやすいかもしれません。

00:10:14.220 --> 00:10:19.800
そして、イテ座のあたりに広がっているのが 濃い天の川。

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そして、夏の大三角の一つ デガが輝いているコト座。

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この星座には美しい音楽を奏でる 青年の物語があります。

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名前はオルフェウス。

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オルフェウスはとても美しい音楽を奏でる青年でした。

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彼が献金を奏でると、

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人々だけではなく動物たちも、木々も、

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そして岩さえもその音に耳を傾けたといいます。

00:11:20.250 --> 00:11:22.050
この音を聞かせたかったんだ。

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オルフェウスには愛する女性がいました。

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その名前はエウルディケ。

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二人は幸せに暮らしていました。

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けれどある日、エウルディケは命を落としてしまいます。

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オルフェウスは悲しみに暮れました。

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そして決めたのです。

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迎えに行こう。

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オルフェウスは生きている人間が生えることのできない

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死者の国へ向かいました。

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そして、そこで献金を奏でます。

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その音はあまりにも美しく、

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死者の国を治める神の心さえ動かしました。

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お前の願いを聞こう。

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エウルディケを返してください。

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よい。

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ただし一つだけ条件がある。

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条件?

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地上へ戻るまで決して後ろを振り返ってはいけない。

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彼女の姿を確認してはいけない。

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わかりました。

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オルフェウスは歩き始めました。

00:12:54.130 --> 00:12:55.730
前を歩くオルフェウス。

00:12:57.110 --> 00:13:00.110
その後ろをエウルディケが歩いています。

00:13:02.920 --> 00:13:08.020
一歩、また一歩、暗い道を二人は進みます。

00:13:09.980 --> 00:13:11.640
地上へ近づいてきました。

00:13:13.320 --> 00:13:16.620
遠くに小さな光が見えます。

00:13:18.380 --> 00:13:22.270
もうすぐだ、もうすぐ地上だ。

00:13:23.690 --> 00:13:28.150
けれどオルフェウスの胸には一つの不安がありました。

00:13:30.230 --> 00:13:33.150
本当に彼女はついてきているのだろうか。

00:13:35.810 --> 00:13:37.770
足音が聞こえます。

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一歩、また一歩、

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エウルディケ、ここにいるよ。

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その声を聞いたオルフェウスはほんの少しだけ振り返ってしまいました。

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そこにはエウルディケがいました。

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けれどまだ彼女は地上へ出ていませんでした。

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オルフェウス。

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次の瞬間、エウルディケの姿は暗闇の中へ消えてしまいました。

00:14:21.520 --> 00:14:25.220
今度こそ本当に彼女を失ってしまったのです。

00:14:34.120 --> 00:14:40.240
物語の後にもう一度夏の夜空を思い浮かべてみましょう。

00:14:43.070 --> 00:14:52.470
空の高いところには夏の大三角、ベガ、アルタエル、デネブ、

00:14:54.370 --> 00:15:01.290
その近くには天の川、その中を白鳥が飛んでいます。

00:15:04.100 --> 00:15:11.400
南の空には赤いアンタレス、そしてサソリザ、

00:15:13.680 --> 00:15:21.400
少し離れたところにイテザ、そしてベガのあるコトザ。

00:15:24.700 --> 00:15:30.860
先ほどの物語の登場人物たちは今も星空の中にいます。

00:15:32.700 --> 00:15:36.780
オリオンとサソリ、オルフェウスの献金、

00:15:38.320 --> 00:15:41.200
星はずっと昔からそこにあります。

00:15:43.360 --> 00:15:47.900
私たちが眠っている夜も、朝を迎える夜も、

00:15:48.700 --> 00:15:54.480
誰かが見ている夜も、静かに光り続けています。

00:15:57.490 --> 00:16:02.890
もし今夜空を見上げることがあれば思い出してみてください。

00:16:18.180 --> 00:16:19.580
いかがでしたでしょうか。

00:16:20.360 --> 00:16:27.160
小さな小さな銀河の旅、最後までお聞きくださりありがとうございました。

00:16:28.660 --> 00:16:29.780
お疲れ様でした。

00:16:31.860 --> 00:16:34.380
本日はいかがだったでしょうか。

00:16:35.400 --> 00:16:38.280
自分たちはあくまで案内人ですので、

00:16:38.920 --> 00:16:42.580
毎回お客様にいろんな物語をご案内しております。

00:16:43.720 --> 00:16:47.760
次回来る時はまた7人の案内人のうち、

00:16:48.460 --> 00:16:50.760
別のものが案内すると思いますので、

00:16:51.600 --> 00:16:54.760
次にお会いできるのを楽しみにしております。

00:16:56.260 --> 00:17:02.900
その時はまたぜひ季節の星座のプログラムをご用意させていただきます。

00:17:07.680 --> 00:17:11.720
次回のプラネタリウムはおそらく秋です。

00:17:13.180 --> 00:17:16.980
秋の夜にお客様をご案内します。

00:17:17.840 --> 00:17:21.720
またいつかどこかの路地裏でお会いできるといいですね。

00:17:22.940 --> 00:17:26.080
月明かりの下でまたお会いしましょう。
