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今回の深掘りにようこそ。あの、今日私たちが取り上げるのはですね、 防災士教本第2講なんです。
はい。テーマは、ズバリ、気象災害・風水害ですね。
ええ。で、この教本なんですけど、もう冒頭から一切の逃げ道がない事実を突きつけてくるんですよ。
と言いますと?
気象災害は毎年必ず繰り返される、ってバシッと断言してるんです。
ああ、なるほど。確かにその通りですね。毎年必ずどこかで起きていますから。
そうなんですよ。なんか私たちって、普段雨が降れば、ああ傘を挿そう、くらいの感覚じゃないですか。
ええ。
ちょっとした工夫でやり過ごせるお天気、みたいな。でも、この資料を読むと、その概念が根底から壊されるというか。
まあ、気象災害はもはや日常の延長線上にある脅威ですからね。異常気象がニューノーマルになった今、これは単なる強要じゃないんです。
ですよね。今これを聞いているあなたが、自分や家族の命を守るための具体的な、いわばバイバルツールにならなきゃいけない。
まさにその通りです。
ということで、今日はただ異常気象を怖がるんじゃなくて、そのメカニズムを解剖して、具体的なアクションへどう変換していくか、ここから一気に紐解いていきましょう。
はい、よろしくお願いします。この教本が本当に優れているなと思うのは、いきなり表面的な気象現象の解説から入らないところなんですよ。
地形の話から始まるんですよね。
そうです。私たちが立っているこの日本という国の地形、つまり変えられない前提条件から説明を始めている点ですね。
なぜ日本でこれほど風水害が起きるのかという根本的な理由。
ええ、日本の河川って大陸の川と全く違うんです。大陸の川が数千キロという距離をかけてゆったり海へ注ぐのに対して。
日本の川は大和から海までの距離が極端に短いんですよね。
そうなんです。急流で短いという特徴がある。これが風水害と密接に関係しているんです。
荒れるプールだとすれば、日本の川は傾斜のきついウォータースライダーみたいなものだなというイメージを持つました。
ああ、それはすごく的確な例えですね。まさにウォータースライダーです。
ですよね。
で、問題なのはそのウォータースライダーの構造自体は何千年も前から変わっていないんですが、そこに注ぎ込まれる水の量と勢いが劇的に変化してしまったことなんです。
水の量が?
ええ。教本のデータを見ても、降水量、特に短時間で猛烈に降る豪雨が明確に増加傾向にあることが示されています。
あの、素朴な疑問なんですけど、なぜ急にバケツをひっくり返したようなゲリラ豪雨が増えたんですか?
はい。
ウォータースライダーの形が同じなら、注がれる水の量が増えれば溢れるのは当然ですけど、そもそもその水の供給源がバグを起こしている理由が知りたいなと。
そこですよね。最大の要因は気候変動による海水温の上昇なんです。
海水温ですか?
ええ。空気というのは、温度が上がれば上がるほど水蒸気を抱え込める量が増加するという熱力学的な性質を持っていまして。
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ということは、空気という名のスポンジが大きくなって限界まで水を吸い込んでいる状態ってことですか?
まさにそのイメージです。巨大化したスポンジが上空にある。しかも、そこにエルニーニョ温床やラニーニャ温床といった地球規模の海面水温変動が絡んでくるんです。
ほうほう。
例えば、エルニーノ温床が発生すると、太平洋赤道域の東側の海水温が上がって、逆に西側が下がります。
はい。
これがですね、大気全体の大循環を歪めせるんですよ。
結果として、日本上空の編成風の弱光だったり、太平洋高気圧の張り出し方に直接影響を与えるんです。
なるほど。つまり、日本周辺の風のバリアとか通り道が通常とは違う形に固定されてしまうわけだ。
そうなんです。そして、固定された通り道に、先ほどの巨大化したスポンジから絞り出された大量の水分が流れ込んで、赤卵雲を急速に発達させる。
わあ、それが極地的大雨、いわゆるゲリラ豪雨のメカニズムなんですね。
ええ。だから、この川は昔から氾濫したことがないから大丈夫、というような過去の経験則はもはや通用しないんです。
通用しない。
はい。気象というソフトウェアが完全に別次元にアップデートされてしまった現代では、その考え方は致命的な判断ミスにつながります。
変えられない地形という宿命の上に気候変動という新しい要素が加わってしまったと。
そういうことです。
毎年のようにやってくる具体的な脅威として、教本は台風と集中豪雨にかなり大きなページを湧いていますよね。
ええ。この2つは日本の風水外の代表格ですからね。
台風については、ただの強風や大雨として片付けるんじゃなくて、強さと大きさという2つの独立した指標で見積もるべきだとありました。
はい。そこも非常に重要です。
ただ、個人的に読んでいて一番恐ろしいと感じたのは、台風に伴う高潮のメカニズムなんです。
ああ、高潮ですね。
これ、単に波が高くなるだけの話じゃないんですよね。
全く別物ですね。
高潮のメカニズムは、巨大な掃除機とブルドーザーの組み合わせを想像してもらうとわかりやすいかと思います。
掃除機とブルドーザー?
ええ。まず、台風の中心って極端に気圧が低いですよね。
はい。低気圧の中心ですからね。
気圧が低いということは、海面を上から押さえつける空気が薄くなるんです。
すると、海水を下からストローで吸い上げるように持ち上げる、吸い上げ効果が発生します。これが掃除機です。
ちょっと待ってください。掃除機で吸い上げられるみたいに、気圧が低いだけで海面そのものが盛り上がっちゃうってことですか?
その通りです。目安として、気圧が1ヘクトパスカル下がるだけで海面は約1センチ上昇します。
1センチ。なので、中心気圧が950ヘクトパスカルの猛烈な台風なら、それだけで50センチ近く海面が持ち上がるんですよ。
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50センチも、それだけで相当な高さですよね。
さらに恐ろしいのはここからです。そこに、猛烈な風が盛り上がった海水を陸地に向けてブルドーザーのように押し込む吹き寄せ効果が加わります。
吸い上げてさらに陸に押し込むのか。
ええ。
それがもし、満潮の時間帯なんかと重なってしまったら。
まさに文字通り水の壁が町に押し寄せてくることになります。逃げ遅れたら命はありません。
いやー恐ろしいですね。さらに教本は過去の災害から継続して学ぶことの重要性を強く説いていて。
はい。過去の教訓を忘れないことは防災の基本ですから。
西日本豪雨とか2015年の井の川決壊といった特定の災害をわざわざ那覇市で記録していますよね。
これって単なる歴史の振り返り以上の重い意味があるように読めたんですが。
おっしゃる通りです。これらの事例が教本に載っているのは、気象メカニズムの恐ろしさを示すためだけじゃないんです。
というと?
なぜ人間は逃げ遅れるのかという心理的な壁を浮き彫りにした事例だからなんですよ。
心理的な壁ですか?
ええ。2015年の井の川決壊を例にとると、映画みたいに堤防が突然ドカンと爆発して破裂したわけじゃないんです。
ああそういうイメージ持ちがちですけど違うんですね。
違うんです。汚水と言って川の水が堤防の高さを超えてちょろちょろと溢れ出て、そこから土砂が削り取られるように崩れていくプロセスがリアルタイムで数時間かけて進行していたんです。
つまり水がじわじわと迫ってきて堤防が削られていくのを住民の方々は目の前で見ていたんですよね。
はい。見ていたにもかかわらず逃げ遅れた人が多数出てしまった。
これって人間の脳に備わっている正常性バイアスの強烈な事例ですよね。
まさにそれです。
脳は日常の精神状態を維持するためにストレスの強い異常な情報を自分は大丈夫だとか大したことないって無意識に処理してしまう。
いわばスパムフィルターみたいな機能ですよね。
ええ。平時においてはちょっとした異常に毎回パニックを起こさないための自己防衛機能としてすごく役立つんです。
スマホの命楽メールフィルターなら便利なんですけどね。
でも災害時にはそのフィルターが命を奪います。
西日本豪雨の際も広範囲で何日も雨が降り続いているという明らかな異常事態の中で今まで氾濫しなかったから今回も大丈夫だろうという強固なフィルターが働いてしまいました。
火災放置機がガンガン鳴り響いているのにあこれは訓練の音だって勝手に脳が変換してしまうようなものですね。
本当にその通りで恐ろしい働きなんです。
メカニズムもわかった過去の恐怖をも知っているそれでも正常性バイアスが邪魔をしてしまう。
はい。
となれば私たちが情報を受け取ってから行動に移すまでのプロセスに根本的な欠陥があると言わざるを得ないですよね。
教本でも気象情報と避難情報が別々に存在していて。
そこが情報の迷路になりやすいところです。
情報量が多すぎることで逆に受け手がフリーズしてしまう現象が起きていますから。
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5段階の警戒レベルとか予報円の解釈とか正直情報が多すぎてパニックになりませんか。
だからこそ教本が提示している5段階の警戒レベルの本当の意味を日常の言葉に翻訳しておく必要があるんです。
1から5まである警戒レベルパッと聞いて即座にどう動くべきかわからない人も今聞いている人の中に多いと思うんですよ。
そうですよね。まずレベル1と2は気象庁が発表する注意報などの段階です。
ここは行動ではなく準備のフェーズだと考えてください。
まだ逃げる段階ではなくて最新の気象情報を確認したりハザードマップで避難経路をおさらいを置く時間帯ですね。
アンテナを張る時間です。そして重要なのは次です。レベル3は高齢者等避難。
高齢者等。
これはお年寄りや障害のある方など移動に時間がかかる人立てに対する出発の合図です。
そしてすべての人が最も意識すべきなのがレベル4全員避難です。
レベル4が出たら逃げ始めるということですか?
いや、そこが大きな勘違いなんです。レベル4が出たら逃げ始めるのではなく、この時点で安全な場所への移動を完了していなければならないということです。
え?完了してなきゃいけないんですか?
そうです。なぜならレベル5は緊急安全確保。つまりすでに災害が発生しているか目前に迫っている命の危険の段階だからです。
なるほど。
レベル5が出てから外に出て避難所へ向かうのは激流の中に飛び込むようなもので、はっきり言って自殺行為に等しいんです。
レベル5になったら逃げようは完全に手遅れなんですね。いや、これは勘違いしている人が多そうです。
情報の解釈の違いといえば、テレビの台風ニュースでよく見る予報円も誤解されがちですね。
ああ、あの丸い円ですね。あの円がだんだん大きくなっているのを見ると、うわ、台風が成長してモンスター化しながら近づいてきているって錯覚してしまいます。
実は、予報円の大きさは台風の大きさとは全く無関係なんですよ。
え、無関係なんですか?
ええ、あの円は台風の中心がその円の中に入る確率が70%であるという不確実性の範囲を示しているにすぎません。
ということは、2日後3日後と先になればなるほど予測が難しくなるから円が大きくなっているだけってことですか?
その通りです。台風がモンスター化しているわけではないんです。
はあ、こういう基礎知識のずれが正常性バイアスを強化してしまったり、逆に不必要なパニックを引き起こしたりするわけですね。
ええ、国や行政も治水事業や水防法の改正、広域避難の整備などシステムを整えてはいますが、最後に逃げる決断を下すのは個人の脳ですから。
じゃあ、情報型の中でパニックにならずに行動するにはどうすればいいんでしょうか?
教本が最も強力なツールとして推奨しているのがタイムライン、つまり防災行動計画の策定です。
タイムライン、今これを聞いているあなたに少し想像してみてほしいんです。
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はい。
もし今、手元のスマホからけただましいアラートが鳴って警戒レベル3が発令されたとします。
その瞬間、誰に電話をかけ、何を持って、どのルートで逃げるか即答できますか?
なかなか難しいですよね。
ええ。もし即答できないなら、あなたはすでに情報の迷路で立ち止まってしまっています。
極度のストレス化では、人間の思考力や判断力は著しく低下しますからね。
ですよね。
タイムラインの革新は、台風が来る3日前には庭のものを片付ける、とか警戒レベル3が出たら実家の親に電話して車に乗せる、
そしてレベル4が出たら高台のセンターへ行く、といった具体的な行動を何もない平時のうちに決めておくことなんです。
緊急時にどうしようって迷うプロセス自体を消去するわけですね。
その通りです。
未来のパニックになっている自分のために、今の冷静な自分がマニュアルを作ってアウトソーシングしておく。
決断のコストを極限まで下げる、まさに究極のリスク管理ですね。
ええ、本当にそれが命を分けます。
さて、ここまで水と風という急激に襲いかかってくる脅威と、いかに素早く情報を処理して逃げるか、という話をしてきました。
はい。
しかし、教本を読み進めると、全く質の異なるもう一つの気象災害に強烈なスポットライトが当てられているんです。
雪害ですね。
ええ。視点を冬に移ります。日本の雪害について。
日本は世界でも有数の豪雪地帯を抱える国ですからね。台風や豪雨の対策とは全く異なるベクトルでの危機管理が求められます。
台風や豪雨の害って、基本的には安全な場所に逃げて、屋内をシェルターにして嵐が過ぎるのを待つという、ある意味受け身の行動が正解になりますよね。
ええ、基本は屋内退避ですね。
水から外に出て、除雪という極めて危険な肉体堂々をしなければならないじゃないですか。
そうなんです。そこが雪害の特殊なところです。
被害を防ごうとする能動的な行動そのものが、命の危険に直結している。この雪国特有のパラドックスって非常に過酷ですよね。
教本もそこを明確に指摘しています。中垂れのような純粋な自然現象による被害よりも、実は除雪作業中の事故というヒューマンエラーによる死傷者が圧倒的に多いんですよ。
遠得る寒さの中で足場の悪い傾斜した屋根の上で重労働をするわけですからね。想像しただけでも恐ろしいです。
加えて、加速化が進む地域では、その過酷な作業を高齢者が担わざるを得ないという社会構造の問題があります。
ああ、そうか。若者が都市部に出てしまって。
ええ、屋根からの滑落事故だけじゃなくて、急激な温度変化によるヒートショックや重労働による心筋梗塞など、人間の肉体的な限界が引き起こす災害でもあるんです。
自然現象だけじゃなくて、人間側の限界が被害を拡大させていると。
だからこそ、大雪時のチェーン規制など冬季の交通対策も含め、個人だけじゃなく社会全体で雪という避けられない脅威をどうコントロールするかが問われているんです。
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水であれ雪であれ、結局のところ気象災害との戦いというのは、単に自然との戦いではなくて、自分自身の心理の逆転とか社会構造の限界との戦いでもあるんですね。
知識を得て満足するのではなく、それをどう具体的なアクションに落とし込むか。教本が目指している最終地点は早めの避難と家族や地域住民の命を守る行動です。
もし今これを聞いているあなたがまだやっていないなら、今日必ず実行してほしいアクションがありますよね。
はい。洪水ハザードマップを家族と一緒に確認することです。
あなたが毎日歩いている通勤路や家の前の道が実はウォータースライダーの底かもしれないわけですからね。
ええ。自分はどんな地形の宿命の上にいるのかを知ることが、先ほどのタイムラインを作るすべてのスタートラインになりますから。
そうですね。今回の深掘りを通して、私たちは気象災害という巨大なシステムと、そこから逃げ切るための正しい読み解き方を学びました。
はい。
でも最後に私から、今これを聞いているあなたにあえて少し挑発的な問いを投げかけさせてください。
おっ。
もし今日あなたがハザードマップを確認して、よし、私の家は安全なエリアだと安心したとします。
ええ。
しかし、明日記録的なゲリラ豪雨が発生し、目の前の道がどんどん冠水し始めた。スマホからのアラートは鳴っていないし、テレビの公式情報ではあなたの住むエリアは安全とされている。
なるほど。
しかし、目の前の現実は明らかに異常事態を示しています。
私たちが今日学んだ公式な情報と目の前で起きている現実が完全に矛盾したとき、最後にあなたの命を救う判断基準は何になるのでしょうか?
うーん。
自然は私たちが作ったルールや想定の通りには動いてくれません。
傘で新幹線を止められないように、自然の猛威は人間の予測をいとも簡単に超えていきます。
あなたが今日手に入れた知識が、いざというときの想定外の事態における自己判断の羅針盤になることを願っています。
それでは、また次回の深掘りでお会いしましょう。