00:01
第一話 捜査開始
やっとできる
と秋舟は呟いた
時は2050年、31歳の秋舟は刑事として念願の事件担当となったのだ。
それは27年前に起きた一家殺害事件で、彼は唯一生き残った被害者だった。
殺されたのは父、母、姉であった。
警察に入って以来、10年近く希望してきた事件担当が急に実現した理由を秋舟は知るよしもなかった。
第二話 大人の事情
警視庁の会議室は、警察への批判の嵐で、紛糾していた。
警察は誰に頼まれたのか、曝露系インフルエンサーの摘発ばっかりしていて、一般市民が被害者になった事件はやる気がない。
どうか
大企業は警察OBをガードマン代わりに使っていて、警察は一体どっちを向いて仕事をしているのか。
どうかそこである知恵者が
一家殺害事件の被害者の刑事が、その事件を捜査する、というのはどうでしょうか。
どうせ解決しないので、仇討ちにもならないし、マスコミも最初は飛びつくんじゃないでしょうか。
本部長は言った よし、それで行こう
第三話 残された家族写真
秋宗は事件のショックからか、事件と事件以前の記憶を喪失していた。 ただ、残された家族写真に写っていたのは、誠実そうな父、優しそうな母、弟の肩を抱いている姉であった。
その後、身寄りのない秋宗は施設で育てられた。 秋宗は正義感の強い、まっすぐな人間に育った。
そして心に誓ったのだ。 犯人は必ず見つけ出して復讐する。
秋宗が空手を習い、警察に入ったのはそのためだった。 第四話 近所に住んでいた人
しかし意気込みとは裏腹に、捜査は難航した。 ただ一つの手がかりであるインターホンビデオの映像から、犯人が中年男であることが
わかっていたが、それ以上の情報はなかった。 ある情報が捜査線上に浮かんできた。
当時近所に住んでいた女性が、今介護施設にいるという情報だ。 秋宗はすぐに施設に急行した。
03:01
もう老婆となったその人に、事件のことを聞こうとした矢先、 面会時間終了となり、続きは明日ということになった。
第五話 抹殺 翌日、再度施設に行った秋宗は、職員に告げられた。
昨晩、刑事さんがお帰りになってから、 今朝までの間に、何者かに人工呼吸器のコンセントが抜かれ、 女性は亡くなりました。
そして壁にエヌミカと書かれていた。 その後も一家殺害事件の情報提供者が秋宗が行く前に、次々と殺され、
壁にエヌミカと書かれていた。 第六話 傷跡
秋宗は事件の時に首に切られた大きな傷跡がある。 当時の資料によると、狂気の包丁は幼い秋宗が駆けつけた警官に手渡したとあったが、
指紋検査しても秋宗以外の指紋は見つからなかった。 犯人は手慣れた用心深い人物と推測された。
第七話 エヌミカ 捜査が行き詰まったある日、エヌミカからメールが届く。
そこには一家殺害事件の真相を知りたければ、 事件現場の家に来るよう書かれていた。
秋宗が家に行くのは27年ぶりだった。 懐かしい家は電気が止められて中は暗かった。
秋宗は部屋に入り暗闇で思い出を辿った。 第八話 真犯人
突然、暗闇で声がした。 久しぶりだな、秋宗。
俺が誰だって。エヌミカだ。 そしてエヌミカが真犯人であることを告げ、事件の真相を明かした。
実は誠実そうと思っていた父は家庭を帰り見ない詐欺師で、 優しそうと思っていた母はアルコール依存症で育児を放棄していたのだった。
そして弟思いと思っていた姉はそんなストレスから秋宗をパワハラしていたのだ。 第九話 第二人格
そんな家庭環境で秋宗の心の中に第二人格のエヌミカが生まれた。 エヌミカは家族に敵を抱き殺害計画を立てた。
エヌミカは秋宗と違い電子機器に詳しく、当時最新のAI技術で架空の人物の動画を作り、インターホンのビデオに仕組んだ。
06:05
エヌミカは幸せそうな家族写真を作った。 エヌミカはどうすれば命に別情なく首に大きな傷をつけられるかをAIから聞き出した。
当時狂気と見られた包丁に秋宗の指紋しかなかったのは当然だった。 第十話 提案と答え
計画通り犯行は行われた。 事件の後秋宗が悩んだり自白したりしないようにエヌミカは秋宗の記憶を消した。
一連の事件の真相を語った後エヌミカは提案した。 あんな家族から救ってやったのにお前は真相を知ろうとした。
もう真相がわかったからこれからは俺と楽しく生きていこうじゃないか。 秋宗は
いやあんな家族でもかけがえのない家族だった。 あの事件がなければ必ず幸せな家族にしてみせた。
と言った後拳銃を頭に当て引き金を引いて復讐を遂げた。