鶴の笛
2023-11-18 16:25

鶴の笛

0060 231118 林芙美子 鶴の笛 朗読:武田早絵
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おしゃべり本棚。この時間は福岡のRKB毎日放送のアナウンサーによる朗読をお送りします。
林文子 鶴の笛
昔、紀錦の続いた年がありました。 その村には鶴が大変たくさんいました。
鶴たちは毎日食べ物を探して歩きましたけれど、どこにも食べ物がないので、気の早い鶴はみんな旅自宅をして遠くへ飛んで行きました。
すると、足の悪い鶴とそのお嫁さんだけがその村へ残ることになりました。
足の悪い鶴は、みんなのいなくなった寂しい沼地の淵の足の茂ったところに立って、みんなが飛び立って行った空を見ていました。
ある日、鶴のお嫁さんは水際の中を一生懸命くちばしで食べ物を探していました。
小魚でも一匹ぐらいいないかしら。土壌でもいい。もう、今朝はさすがにふらふらになって、一生懸命あっちこっち探していました。
朝日がきらきら光って、広い空に雪雲がひとつ、西の方へゆるく流れて行きます。
若木の林の中は、ところまだらに陽の光がけむっていて、美しい景色でした。
すると、しばらくして、なんとも言えない美しい笛の音色が聞こえました。
おや、なんだろうと思いました。
今までお腹のすいていたお嫁さんの鶴は、ふっとお腹がいっぱいになるような気がして、その美しい笛の音色を聞いていました。
そーっと笛の音のする方へ歩いて行きますと、足の悪い鶴が横笛を吹いていました。
おやおや、あなたが笛を吹いていたのですか。
お嫁さんの鶴が尋ねました。
足の悪い鶴は恥ずかしそうに振り返って、
さっきね、何かないかと思って沼の中を探していたのさ。
そしたらカチンと固いものが口にさわったので、あわててくわえたらこの笛だったんだよ。
03:02
なんだろうと思ってね、いろんな風にくわえていたら、
ふっと竹の小さい穴からきれいな音がしたのさ。
もうお腹のすいたのも忘れて、これを吹いていたのさ。
まあ、そうでしたの。とてもきれいな音色でびっくりしました。
なんだか昔の楽しい頃のことが浮かんできて、とても気持ちがよくなりましたわ。
笛の音色があまりにきれいなので、お腹のすいた二羽の鶴は、
今まで食べることばかり考えていつもくよくよしていたことがばかばかしくなりました。
自分たちを置いて勝手に飛んでいってしまったたくさんの鶴たちを恨んで、
二人は毎日愚痴ばかり言っていましたけれど、
笛を拾ってからは笛の音色があんまりきれいなので、
二人は乏しい食べ物に満足して、お話をすることは楽しかった思い出話や、
遠くに行った鶴たちが幸福であればいいという話ばかりになりました。
「ねえ、私は笛の音色を聞いていると、こんなみじめな年ばかりじゃなく、
今にとても放年の続くいい年も来るような希望ができて、少しもがっかりしなくなりました。
今日は少しちょっと遠くまでお魚を探してきますから、ときどきその笛を吹いてくださいね。」
お嫁さんの鶴が言いました。
「ああ、いいとも。けがをしないように行っておいで。」
お嫁さんの鶴はすぐ飛び立って行きました。
しばらくすると、小さい沼のところへ来ました。
沼の上にときどき水しぶきがしています。
おや、なんだろうね、と狙いをつけて飛び降りると、
今までに見たことのないたくさんの小魚が群れをなしているところがありました。
お嫁さんの鶴は胸がどきどきしてその魚をとりました。
さっそくお土産をつくって笛の音色のほうへ旅立ちますと、
西のほうから、子どもの鶴を三羽もつれた夫婦の鶴に会いました。
「おやま、ずいぶん久しぶりですね。どうしたんですか?」
お嫁さんの鶴がたずねますと、
ええ、ひどい目にあいましたよ。
06:02
どこへ行ってもいいことはなく、
とうとう私の子どもは二人とも病気で死んでしまいました。
どこかいいところはないかと思ってほぼさまよっているところへ、
なんともいえないきれいな笛の音がするので、
きっとあの笛の鳴るほうにはいいことがあるにちがいないと思ってやってきたのですよ、
と申しました。
まあ、そんなに笛の音が遠くまで聞えるのでしょうか。
あれは足の悪いうちの主人が吹いているのですよ。
お嫁さんの鶴の案内で飛んで行きますと、
自分たちの見捨てた村だったのでびっくりしました。
お嫁さんの鶴は笛の音色を長い間聞いていましたので、
心の中がひろびろしていて、どんなに自分たちが困っていても、
ほかのものに施しをするのは気持ちのいいものに思うようになっていました。
早速、さっき取ってきた魚を夕食に出して、
旅疲れのしたお腹の空いている鶴たちに食べさせてやりました。
足の悪い鶴もお嫁さん鶴もほんの少し食べたきりで、
遠慮しないでおあがりなさい。たくさん食べて元気を出して行ってください。
としきりに進めましたので、
鶴の親子は涙ぐんでしまいました。
たったこの間まではみんな食べ物を隠しあって、
自分たちのことばかり考えていた鶴たちは、
夜と触ると食べ物のけんかで、
中ではお互いにだましたり、傷つけあったりして、
血なまぐさいことばかりで、
鶴たちは食べ物のことといっしょに精神的な心配で、
今日は楽しいという日は一日だってありませんでした。
みんながやがやと群れをなして、
弱いものをおびやかしては、
少しの食べ物も取り上げて、
強いものが威張っているのです。
鶴の子どもたちも自然に気持ちがすさんで、
大人の悪いところばかり真似るようになってきて、
汚い言葉遣いでけんかばかりしていたのです。
あまり飢饉が続いたので、
みんな村を捨てて行ってしまいましたけれど、
今はかえって以前より平和になり、
09:00
七羽の鶴はどんなことがあっても望みを捨てないで、
ここで元気に働いて暮らしましょうと話し合いました。
鶴のお嫁さんの案内で、
魚のたくさんあるところを見つけましたので、
七羽の鶴は質素な気持ちで、
いつも楽しい食事をすることができました。
ある夜、あんまり美しいお月夜で、
金色の光が高校とあたりを照らしていますので、
足の悪い鶴はまた笛を吹きました。
三羽の子供の鶴は、
お月さまへ向かって歌を歌いたくなりました。
きれいなきれいなお月さま。
小さい鶴が歌いました。
すると中の兄さんの鶴が、
生まれた村が一番いいと歌いました。
上の兄さんは、
気持ちのいい夜だね。
何を考えても楽しいねと歌いました。
子供鶴のお母さんはのんびりとして、
本当に私たちは幸せになったのね。
お前たちがガツガツしなくなっただけでも、
帰ってきてよかった。
お父さんもお母さんもみんな帰ってきてくれると、
にぎやかになっていいのにねと申しました。
鶴のお父さんは一服煙草を吸いながら、
足の悪い鶴の笛の音に聞き取れていました。
笛の音色はピヨロピヨロと涼しげな音色を立てています。
あら、なんだかにぎやかな羽音がしますよ。
誰かが帰ってきたのでしょうか。
やがて、金色の空から、
一羽、二羽、三羽、四羽、
村を捨てていった鶴たちが、
笛の音色に誘われて戻ってきました。
誰も威張らないで、
みんなで分け合って食べ合う気持ちならば、
帰っていらっしゃい、足の悪い鶴が申しました。
帰ってきた鶴たちは喜んで涙を流しました。
それからは、みんなで働きに行って、
みんな仲良く分け合って食べました。
にぎやかな美しい鶴の国は、
12:02
今もどこかにあるのでしょうか。
きれいな心がいつもいい、
貧しくても心は豊か。
みんなで分け合って、みんなで働いて、
いつもきれいな心で、
みんな愛し合って行きましょう。
鶴の笛はいつもそう言って、
ピヨロピヨロと優しく鳴っていたのです。
卓後課の立川翔子です。
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