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千代紙の春 前編
2024-03-23 16:48

千代紙の春 前編

0078 240323 小川未明 千代紙の春 前編 朗読:田畑竜介
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おしゃべり本棚。この時間は福岡のRKB毎日放送のアナウンサーによる朗読をお送りします。
小川美名作 千代紙の春
前編 町外れのある橋のそばで一人のおじいさんが鯉を売っていました。
おじいさんは、けさその鯉を豚屋から受けてきたのでした。
そして、長い間ここに店を出して通る人々に向かって、
「さあ、鯉を買ってください。負けておきますから。」と、人の顔を見ながら言っていました。
人たちの中では、立ち止まって見てゆくものもあれば、知らぬ顔をしてさっさと言ってしまうものもありました。
しかし、おじいさんは根気よく同じことを言っていました。
そうするうちに、「これは珍しい鯉だ。」と言って買ってゆくものもありました。
そしてくれがたまでには、小さな鯉はたいてい売りつくしてしまいました。
けれど、一番大きな鯉は売れずに番台の中に残っていました。
おじいさんは、大きなのが売れないので気が気でありませんでした。
どうかして、それを早く辺りが暗くならないうちに売ってしまいたいと焦っていました。
「さあ、大きな鯉を負けておきますから。買ってください。」としきりにおじいさんはわめいていました。
みんな通る人はその鯉に目をつけてゆきました。
「大きな鯉だなあ。」と言ってゆくものもありました。
そのはずであります。
鯉はいく年か大きな池に、またあるときは川の中に住んでいたのです。
鯉は川の水音を聞くにつけて、あの林の淵をなつかしく思いました。
また、木々のかげにうつるかがみのような青々とした池の故郷をこいしく思いました。
しかし、万代の中にとらえられていては、もはやどうすることもできなかったのです。
そのうえに、もうとらえられてからいくにちもたって、あちらこちらと持ち運ばれていますあいだにすっかりからだがよわってしまって、まったくむかしのようなげんきがなかったのであります。
03:08
大きな鯉は、じぶんのこどものことを思いました。また、ともだちのことを思いました。
そして、どうかしてもういちどじぶんのこどもやともだちにめぐりあいたいと思いました。
「さあ、鯉をかっていってください。もう大きいのがいっぴきになりました。うんとまけておきますから、かっていってください。」
おじいさんはそのまえをとおるひとたちにむかってこえをからしていっていました。
万がたのみちをいそぐひとたちはちょっとみたばかりで、
このこいはねもいいにちがいないとこころのうちでおもってさっさといってしまうものばかりでした。
大きなこいは、しろいはらをだして万代の中でよこになっていました。
こいはよくこえていました。けれどもはやみずすらじゅうぶんにのむこともできなかったので、
こののちそんなにながいこといのちがたもたれようとはかんがえられませんでした。
はるさきであったから、かわみずはなみなみとしてながれていました。
そのみずはやまからながれてくるのでした。
やまにはゆきがとけて、たにというたにからはみずがあふれでて、みんなかわのなかにそそいだのです。
こんなときには、いけにもみずがいっぱいになります。
そしててんきのいいあたたかなひには、まちからむらからひとびとがつりをしに、
いけやかわへでかけるのももうまじかなころでありました。
あわれなこいはそんなことをくうそうしていました。
このときひとりのおばあさんがありました。
つえをついてこのはしのうえにきかかりました。
おばあさんにはしんぱいがありましたから、とぼとぼとしたをむいてあるいてげんきがなかったのです。
それはかわいいまごのみよこさんがからだがわるくてうちにねていたからです。
どうかしてはやくみよのびょうきをなおしたいものだ、とおばあさんはこのときもおもっていました。
みよこさんはちょうどじゅうにでした。
このごろはからだがわるいのでがっこうをやすんでいしゃにかかっていました。
けれどなかなかもとのようにげんきよくよくなおりませんでした。
そしてみよこさんはまいにちねたりおきたりしていました。
06:03
おきているときはおにんぎょうのきものをぬったりまたざっしをよんだりえほんをみたりしていましたけれど、
もとのようにおともだちとかっぱつにそとへでてかけたりしてあそぶようなことはなかったのです。
みよこさんのおかあさんやおとうさんばかりでありませんでした。
しんぱいをしたのはうちじゅうのものでありました。
ほんとうにあのこのびょうきはなぜなおらないのだろうかとおばあさんはいつもそのことをおもいながらつえをついてあるいてはしのたもとにきかかったのです。
さあこいをまけておきますからかっていってくださいとおじいさんはいっていました。
おじいさんははやくこいをうってうちへかえりたいと思いました。
うちにはふたりのまごがおじいさんのかえるのをまっていたからです。
おじいさんのうちはびんぼうでした。
そしておじいさんがこうしてこいをうってかねにしてかえらなければみんなはたのしくゆうはんをたべることもできなかったのであります。
さあまけておきますからこいをかっていってくださいとおじいさんはねっしんにいいました。
おばあさんはそれをきくとつえをつきながらたちどまりました。
そしてはしのそばにみせをひらいているばんだいのなかのおおきなこいにめをとめたのであります。
おばあさんはこいをびょうにんにたべさせるとたいそうちからがつくというはなしをおもいだしました。
ほんとにいいおおきなこいだなあとおばあさんはたまげたようにいいました。
まけておきますどうぞかっていってくださいとおじいさんはこえをかけました。
うちのちいさなむすめがびょうきだからそれにかっていってやろうと思ってなとおばあさんはいいました。
このこいをおあがりなさればすぐにびょうきがなおりますとおじいさんはこたえました。
おばあさんはじっとおおきなこいがこえたしろいはらをだしているのをながめていましたが、
なんだかこのこいはげんきがないなあじっとしているとおばあさんはこごんでいいました。
どういたしましてこれがよわっているなどといったらげんきのいいのなどはありませんとおじいさんはいいました。
おばあさんはそれでもくびをかたむけていました。
09:03
しんでいるのではないかいとおばあさんはたずねました。
あんなにくちをぱくぱくやっているではありませんかとおじいさんはいいました。
いくらだい。
おおまけにまけていちりょうよりしかたがありませんとおじいさんはこたえました。
どれちょっとおおをもってはねるかみせておくれとおばあさんはちゅうもんをしました。
このときほんとうにこいはしんでいるようにじっとしていましたが、
おじいさんはおばあさんがそういうのでおおきなこいのおおをにぎってたかくさしあげました。
こいはこのときだと思ったのです。
いまじぶんがにげなければすうふんかんのうちにころされてしまうと思いましたから
ちからまかせにおじいさんのうでをおでたたきつけておじいさんがびっくりしててをはなしたすきに
かわのなかへひととびにとびこんでしまったのです。
あ、こいがにげたととおりすがりのひとびとはさけんでくろくそのまえにあつまりました。
おじいさんもおばあさんもびっくりしましたが、
なかにもおじいさんはこのおおきなこいをにがしてしまったのでおおぞんをしなければなりませんでした。
まごたちにゆうはんのおかずをかってゆくどころでありませんでした。
おおをつかんであげてみせろなどといわなけりゃこいがにげてしまうことはなかったのです。
どうかこのこいのおかねをくださいとおじいさんはおばあさんにいいました。
おばあさんはかんだかなちょうしになって
なんでうけとりもしないのにだいきんをはらうわけがあるかい。
かわいいまごのくちにはいれないものをわたしはおかねなんかはらわないよとあらそっていました。
このときあつまったひとびとのなかからかみをながくしたえきしゃのようなおとこがまえにでてきました。
おばあさんこんなめでたいことはありません。
しんだと思ったこいがはねてかわのなかへおどりこむなんてほんとうにめでたいことです。
きっとおまごさんのごびょうきはあすからなおりますよ。
まごのかわいいのはだれもおなじことです。
このおじいさんにもかわいいまごがうちにまっているのだから
おばあさんこのだいきんをはらっておやりなさいとそのかみのながいおとこはいいました。
おばあさんはこのだいきんなんどはらうものかと思っていましたが
いまこのおとこのいうことをきくとなるほどもっともだと思いました。
12:04
そこでおばあさんはしなびたてでさいふのなかからぜにをとりだしておじいさんにはらってやりました。
おじいさんはおばあさんがこいのだいきんをはらってくれるとにこにこしました。
そしてふところからうつくしいちよがみをだしました。
おばあさんこのちよがみはわたしがまごにみやげにもっていってやろうと思いましたが
なにもきょうにかぎったことでないどうかごびょうきのおまごさんにもっていってあげてくださいましといってわたそうとしました。
おばあさんはめをまるくしてちよがみならうちのこはたくさんもっていますよそんなものはいりませんといってことわりました。
けれどおじいさんはむりにちよがみをおばあさんにてわたしました。
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バッテン少女隊の春野きいなと青井りるわです。
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