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2022-06-13 03:10

#42【青空文庫】かんざし

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新美南吉「かんざし」

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Niimi Nankichi title:ornate hairpin

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かんざし、にいみなんきち 女の子が、池の淵から水の中を覗いておりました。
水の中には、一匹の魚が沈んでおりました。 と女の子が叫びました。
かんざしが女の子の頭から抜けて、池の中に落ちたからであります。 かんざしは魚のそばに沈んできました。
「魚さん、かんざしを拾ってください。」 と女の子が魚に頼みました。
「これは何ですか?」 と魚は聞きました。
「それは、かんざしといって、頭に刺すものです。」 と女の子は教えてやりました。
「大事なものですか?」
「ええ、私には大事なものです。」 そこで魚は欲が出ました。
かんざしを自分のものにしたいと思いました。 「私は拾ってあげません。」
「自分でお拾いなさい。」 女の子は困ってしまいました。
水は深いので、とても自分で拾うことはできません。 女の子は泣きながら言ってしまいました。
魚は大変得をしたと思いました。
「一つ、頭に刺してみよう。」 と言って、かんざしを刺してみました。
そしてその時、自分の頭には、 かんざしはさせないことが初めてわかりました。
そしてまた、他の人には尊いものであっても、 自分にはちっとも尊くないこともあるのだということがわかりました。
次の日。 女の子はまた池の淵にやってきました。
魚はかんざしをくわえて、 水の上に浮かびました。
「私が悪いございました。 さあ、かんざしをお返しします。」
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女の子はどんなに喜んだことでしょう。 何度も何度もお礼を言いました。
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