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2026-10-14 35:49

【蓮月堂奇譚 -3-『青鐘屋敷のエラ』】

【蓮月堂奇譚 -3-『青鐘屋敷のエラ』】

作:Ene @ene_oeuf 様

BGM:魔王魂


https://giraffe.noor.jp/era.html


お借りしました!

#フリー台本


2・4・6・12

16・18・22・26日更新予定


BGM:魔王魂『ピアノ41』

https://maou.audio/bgm_piano41/


【活動まとめ】 https://lit.link/azekura

感想

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00:06
僕、最近考えるんだけどさ。
君ぐらいの年頃は、四六時中何かしら考えているものですよ。 いや、そういうことじゃなくって。
恋って難しいよねーって。 先生?
いえ、時の流れとは早いものだと思いまして。 あの小さかったいたずら小僧が。
で、お相手は誰です? 学校の子ですか?
うん、まあクラスメイトなんだけど。 カトリーって言うんだ。授業が一緒でさ。よく話すようになったんだけど。
フラれたんですか? なんでそういうことを言うかなぁ。仲良しだよ。
でも… でも?
なんかちょっと… なんて言うのかな。僕も先生と付き合うようになってから、そういう違和感みたいなのにさ、気づくようになっちゃったんだよ。
だからつまり先生のせいなんだよ、これ。責任取ってくれなくちゃ。 話がさっぱり見えませんが。
だからつまり、 先生の出番だなって。
と言うと… 話してもいい?
どうぞ。お客さんが来るまでならね。 おかけなさい。お茶を入れましょう。
僕、うーんと甘いのにして。 あと奥の戸棚に先生がこっそり隠してるジャムケーキも出して。
なんで知ってるんです? で、何です?話してご覧なさい。
先生はさ、なんか変な絵本の話って聞いたことある?
絵本ですか? うん。
多分いつも先生が言ってるみたいな、なんか不思議なやつだと思う。 ほら、こないだの窓の話みたいにさ。
あんなものをそうそう転がってるわけじゃありませんけどね。 その不思議な絵本をカトリーが…
最初から話すね。 カトリーさ、ずっと学校に来てなかったんだ。
病気でさ、もう半年とかそれぐらい。 だから僕、実を言うとこの前までカトリーのこと知らなかったぐらいなんだよ。
それはお気の毒なことで。 だけど2週間ぐらい前かな。
急に投稿してくるようになったんだ。それも病気だなんて見えないぐらい元気でさ。 ピッカピカの健康体って感じ。
本人も言ってたよ。もうどこもすっかり悪くないんだって。 かけっこだってできるんだ。
03:04
現代医学の進歩は目覚ましいものがありますからね。 よかったじゃありませんか。
僕もそう思ったよ。で、僕ってほら、いい子だから先生に頼りにされてるじゃん。 だからカトリーのお世話係に任命されてさ、いろいろ面倒を見てあげてたんだ。
そしたら3日前だよ。 放課後にさ、急にあの子泣き出しちゃって。
僕が泣かせたんじゃないよ。話の途中で急に。 僕、女の子に目の前で泣かれたのなんて初めてさ。
もうパニックになっちゃって。 君が何かしたんじゃないんですか?
違うよ。 それで訳を聞いたらさ、エラがって言うんだ。
エラ。 そう、ごめんなさい。エラごめんなさいって繰り返すばっかりでさ。
ずっと泣いてるんだ。 そんで昨日からまた学校来なくなっちゃった。
で、その時彼女が、なんていうのかな、ギュッとさ、古い絵本みたいなのをずっとこう抱きしめて泣いてたんだよ。
なんでそんなもの学校に持ってきてるのかわからなかったけど、本当に古い絵本なんだ。ボロボロで。
で、なんとか聞き取れたのは、そのエラって名前みたいな単語と、ごめんなさいだけ。
お友達と喧嘩でもしたんじゃないんですか? それぐらいの年頃の女の子にはよくあることでしょう。
僕もそう思ったけど、うちの学校にエラって女子は2人しかいないし、 そのどっちもカトリーと喋ったことなんてないってさ。
見上げた行動力ですね。 恋の力ですか?
茶化さないでよ。 で、ここからが本題なんだ。
僕、カトリーに先生のことをちょっと話しちゃったんだよね。 話したというのは?
もし何か困ってるなら、僕の知り合いの大人が相談に乗ってくれるかもって。 だってその本なんか見るからにこう曰くつきでさ、変な感じがするんだ。
僕、そういうのちょっとわかるようになってきたし。 女子は?
ごめんなさい。でも本当なんだよ。 カトリーもそれ何?って聞いたらさ、魔法の絵本って言ってたんだもの。
多分何かあるんだよ。 魔法の絵本ね。
心当たりない? いわゆる魔道書と呼ばれるものには心当たりがありすぎるぐらいなんですけどね。
ただ。 ただ?
その表紙にエラと。 あ、うん。それは多分間違いないよ。
06:02
真っ黒だったけど腕の隙間から文字が見えたから。 カトリーもずっとごめんなさいエラって言ってたわけだし。
青金屋敷のエラですか? 何それ?
さてね。 もしもそれが僕の知っているものと同じならちょっと話が面倒ですよ。
というより、それが本当なら僕はあまり関わりたくないんですがね。 なんでさ?
何でもです。 それより女子は最初に言っておいたでしょう。
出来もしないことに首を突っ込んではいけないと。 ここに出入りするならそれが条件だったはずですよ。
でもさ、傘を一つしか持たない人間は他人に傘を貸すことはできません。
その人にまた誰かが貸してやらなければならなくなるからです。 君はまだ自力で傘を手に入れることのできない子供ですよ。
そりゃ分かってるよ。でも僕はまだ子供だよ。 大人の力を借りて何が悪いのさ。
僕がいつか大人になったらその時は僕みたいな子供を助けてやるつもりだよ。
しかしね、女子は。 カトリーは友達なんだ。何か困っているなら力になってあげたいと思うのは当たり前じゃないか。
誰だってそうするでしょ、先生。
ああ言えばこういう。 では問いますが、ジョシュア・ヘンリー・カーター。
君はここから先の自分の行動に責任が取れますか? どんな結末になっても後悔しない。
なんでそんな脅すようなことを言うのさ。先生らしくないよ。 その絵本が何なの?
あまり気分のいい話にはなりそうにないからですよ。 どうして?
さあ、ともあれまずは実物を見ないことには僕には何もできません。 まだそうと決まったわけではありませんしね。
カトリーにうちに来るよう話すことはできますか?
うん、分かった。話してみるよ。
ちなみにカトリーはお父さんと二人暮らしですか?
え?
もしそうならお父様もご一緒にと伝えてください。 時間はいつでも構いませんから。
ん?分かった。いらっしゃいませ。
やあ、こんにちは。本当に日本人だ。 ベネットです。初めまして。
09:02
よく言われます。僕のことは好きにお呼びください。 発音が難しいでしょうから。
それで今日は…
そのご主人、ジョシュアが言うにはあなたが何か…
最初にはっきりさせておきたいのですが、ミスターベネット。
私はあなたのしたことの是非には興味がありませんし、 それを判断する立場でもありません。
あなたが何もかも理解して、承知の上で行ったことならばね。
今日はお嬢さんは?
すみません。どうしても家から出たくないと言って塞いでいるんです。
ジョシュアが今朝から家に来て、あの子を見てくれています。
結構。
本はお持ちですか?
はい、ここに。
残念ですよ。まさかとは思いましたが、これは本物です。
本物のエラだ。
これがそう呼ばれるものであることはご存知でしたか?
はい、ですがあまり詳しくは…
一体全体、どうやって手に入れられたのです。
これはそこらに出回るようなものではないはずで、何ならもう長いことを所在不明だったはずなのですが。
一月ほど前に占い師の婆さんに声をかけられまして、道端で、
普段そういうものに金を払ったりはしないんですが、あの日はたまたま、
その婆さんが気味が悪いほど何でも知っていて、全部当ててきたんです。
娘の病気のことも、その治療がはかばかしくないことも、全部。
私ももう何にでもすがりたいような気持ちで、
女王にも困ったものですよ。
まだこの子を痛めつけたいんですかね。
気の毒に。
えら、本当ならとっくに解放されているはずだったのに。
死んではよみがえり、また殺され。
あの、どういう。
まあ、おかけなさい。お茶を入れますから。
今回は少しばかり話が長くなりますがね。
はあ。
さて、とりあえずはお聞きしましょう。
これをどちらで。
シャドウヒルの図書館です。
閉科書庫の本を見たいと頼めば開けてくれるから、
その一番奥の真っ黒に古ぼけた本を手に取るようにと、その老婆が言っていました。
12:04
半信半疑でしたが、驚いた。
本当に何もかもあの婆さんの言う通りになった。
その老婆はあなたに詳しい説明をしましたか。
はい、全部信じていたわけじゃない。
でも、もし本当なら試す価値はあると思って。
病気が治る本だと。
ええ、まあ、読むだけでどんな怪我も病気も立ちどころに治るのだと。
実際そうなりました。
カトリーは元気になった。
もう学校にも通えるんです。
ですが、この少女はご覧の有様だ。
このことも理解していましたね。
ですが、これは、これは本でしょ。
その女の子だってエラーと言うんでしたっけ。
絵ですよ、ただの。
どういう仕掛けか知らないけれど、随分と悪趣味じゃありませんか。
まさかこの女の子が本当にいるわけじゃなし。
本当ですよ。
え?
読むだけで病気が治るなどというファンタジーは信じておいて、
エラーの存在は信じない。
ここに彼女はこうして存在しているのに。
ですが、すでにこの本は使用された後ですから、当初の状態はもうわかりません。
ですが、あなたの娘さんが初めてこの本を開いた時は、おそらくエラーは生きていたはずだ。
以前にこの本が使用された記録からは、もう100年近くが経過していますから、
そうでなければ今回カトリーが救われることもなかったでしょうからね。
あの、すみません、話が理解できない。
どういう意味です。
何を言っているんです、あなたは。
これは文字通り魔法の本です。
こちらの世界のものではありません。
詳しく説明すると長くなるので省きますが、
別の世界からこちらにとある事情で運ばれてきたものだと理解してください。
今回シャドウヒルの図書館に眠っていたのも偶然ではない。
誰かが置いたんです。
でなければこれは世に出てこない。
あなた、一体何者なんです。
薬屋ですよ。
どうしてその本のことを知っているんです。
15:01
そういう役目だからです。
話を戻しましょう、ベネットさん。
あなたがおっしゃる通り、これは本です。
ただし、ただの本ではありません。
それはもうご理解いただきましたね。
私たちの間ではこの本は青金屋敷のエラと呼ばれているものです。
エラとはここに描かれている少女の名前。
彼女は紛れもなく実在しています。
この本の中に…
そんな…
一言で言えばね、これは呪いなんです。
あの本のことはよく覚えているわ。
パパが、パパが私のためにそれを見つけてきたの。
タイトルはエラ。
青金屋敷のエラという本だった。
私、もう死ぬんだと思ってたの。
ひどい病気だった。
とても怖かったわ。
私、まだ13年しか生きてないのに死んじゃうんだって。
そんなの嫌だった。
何度も何度も、助けてってパパに言ったわ。
パパはいつも泣きそうな顔で私を見てた。
知ってたわ、うちにはお金がないことぐらい。
だから私、きっと病院にもかかれずに死んじゃうんだって思ってた。
でも、どうしてもそれが嫌だった。
パパがあの本を持ってきたとき、私はもう目も見えなくて、耳も聞こえていなかったわ。
パパはいつもは私の嫌がることは絶対にしないのに、
その時だけは私を無理やりベッドから起こして、
何かカサカサして重たい紙の束みたいなものを持つように私に命じた。
きっと本だと思ったわ。
でも不思議だった。
だって私はもう目が見えないのよ。
パパ、本なんて読めないわって言いたかったけど、
もう喉も腫れて塞がっていて、ちっとも声が出なかった。
病気の体は牢獄みたいなものよ、女子は。
私ずっとそこにいたの。
ああ、でもなんて言えば、どう言えばいいかわからないけど、女子は本当だったの。
1ページ目をめくった時、すべてがわかった。
何か神秘的なことが起きたのだと。
病気になってからずっと私の体にまとわりついていた、
黒くて重たくてベタベタした嫌なものが、急に剥がれ落ちて消えていくのを感じたわ。
18:04
2ページ目で耳が、3ページ目で目が治った。
絵本の中には私と同じぐらいの年の女の子が書かれていて、
私はついにそれを自分の目で見ることができたのよ。
ああ、あなたがエラね。初めまして。
素晴らしい気分だったわ。
だけどすぐにおかしなことに気づいたの。
私はパパに尋ねたわ。
この子は一体どうしたのって。
だって絵本の中のエラはひどく苦しんでいたのよ。
今にもこちらに手を伸ばしてきそうだった。
どうしてかわからなかったわ。
だってその絵本には一つも文字がなかったから。
私は4ページ目に手をかけたわ。
そうしたら今度は私のお腹にずっと沈んでいた、
鉛のような重たい苦しみが嘘のように消えるのを感じた。
空も飛べそうなくらいに気分が良かった。
あれほど戻りたかった本当の自分に戻れた気がした。
それをずっと待ち望んでいたのよ。
だけど、ねえ、女子は?
4ページ目のエラはもう立っていることすらできなくなってた。
うっすらと理解していることが一つあったわ。
私はパパの顔を見た。
私の考えが合っているかどうかを確かめるために。
そしてじっと私を見つめるパパの表情が
そうだよ、カトリーと言っていた。
あなたはきっと私を軽蔑するわ、女子は。
私はページをめくるのをどうしてもやめられなかったんだもの。
だってもう私の手は自由に動くの。
とても簡単なことだったの。
私は絵本の中のエラに心から謝ったわ。
もうわかってた。
私とこの子が不思議な何かでつながっていることを
私は完全に理解していた。
女子は、私たちはまだお友達になったばかりよ。
だからあなたのことを私はほとんど知らないの。
ねえ、私を軽蔑する?
それともきっとただの偶然だと言ってくれる?
馬鹿ね。
偶然なんかじゃなかったわ。
知ってた。知ってたのよ。
絵本の中の彼女が、エラがどうしてこんなに苦しんでいるのか。
あの子は私よ、私になったの。
まるで入れ替わるみたいにね。
ごめんなさい、エラ。ごめんなさい。
21:00
だけど、その時の気持ちをどう表現すればいいかわからない。
最後までこの本を読めば何が起きるか
私はきっとそれもわかってた。
でもやめられなかったの。
だって私、元気になりたいの。
死にたくないの。
ごめんなさい。許して、エラ。
あなたを愛してる。
ありがとう。ごめんなさい。
止められなかった。
エラ、ごめんなさい。ごめんなさい。
許して。でも私、死にたくなかった。
パパを悲しませたくなかったの。
ごめんなさい。許して。許して。
ごめんなさい。
エラは、実在した少女です。
かつて青金屋敷に
今はサリバン屋敷と呼ばれていますが
暮らしていた女の子なんですよ。
エラには兄が
そう、兄がいましてね。
美しい子供でしたが
あの屋敷に閉じ込められて
すっかり心がねじれてしまいました。
女王が
今となってはもうこの呼び名にも意味はありませんが
女王がそう命じたからです。
そう、あの屋敷には当時
女王と呼ばれる女性がいました。
女王?
正体が今もわかっていません。
少なくとも僕は知らない。
青金屋敷というのは
大昔、それはそれは
曰くつきの出来事が続いた
事件現場のようなものでしてね。
事の始まりは
ロエル家という古い貴族の家柄が
あの家を買い取ったのが始まりだとは聞いていますが
すみません。
そんな風に言われても何が何だかわからない。
さっきから話が飛びすぎていて
何の話をしているんです?
あなたはそこに行ったことが
その屋敷は今もあるんですか?
この世界のどこかに
ありますよ。
行くのはお勧めしませんけどね。
本当はエラだったんですよ。
あの屋敷に閉じ込められていたのは。
兄の方は自由だった。
女王のお気に入りだったから。
それでエラは兄に言ったんです。
外の世界を見てみたいと。
兄は1日だけの約束で取り替えに応じました。
ですがエラは戻らなかった。
24:01
1日過ぎても
7日過ぎても
1年が過ぎても
屋敷から出られなくなった兄はエラを恨んで
恨んで呪いをかけました。
この後すべての災いが妹の身に降りかかるように
エラは逃げて逃げて
呪いから逃げて
やがて一人の魔術師に出会った。
彼は言った。
お前さんを本の中に隠してあげようとね。
エラはそうすると答えました。
他に方法はなかった。
でもね、それは罠だったんですよ。
兄と女王はエラを本の中に閉じ込めて
強い呪いで封じてしまった。
つまり、あの絵本は
そう、これが青金屋敷のエラですよ。
あの本を開く者は
自らの不幸をエラに移すことができるのです。
そういう呪いがかかっている。
これまでに多くの人間が
エラにあらゆる病や苦痛を肩代わりさせてきました。
私は、私は魔法の絵本があると
そう聞いて、その通りに。
あなたをそそのかした老婆の正体は
おそらく女王でしょう。
あの本に用がありそうな人間を物色していたんでしょうね。
ですから定期的にあの本は世に出てくるんです。
おおよそ100年から150年
エラの傷が癒えた頃にね。
気分の悪い話だ。
エラのことをまだ許していないのか、その女王は。
さあ、人間の心というものは
ひとたびねじれたらもう元には戻りませんから。
あの老婆は言いました。
薬も手術も捧げ物をするだとか
代わりに何かを断つとか
そういうものも何もいらない。
ただ開いて読むだけでいいのだと。
それだけで私の娘は元気になると。
そんな夢みたいなことがあるのなら試したいに決まってる。
そうでしょ。
誤解しないでください。
私はあの子のためにあらゆる治療をしてきました。
だけど効果がなかったんです。
金がなかったんじゃない。
金は苦面したんだ。
あの子には言ってないけど
奥歯さえ打ったんだ。
だけど効果がなかった。
あらゆることが無意味だった。
耐えられますか。
私は独身ですから。
すみませんがお気持ちは分かりかねます。
27:04
何もしなければもう1週間ともたないだろうと言われていました。
もうできる治療はないと。
あとは奇跡を祈れと。
娘が1ページ目を開いた時
あんたの言う通りだ。
エラはまだ自分の足で立っていて
こちらをじっと見つめていた。
なんて君の悪い絵本かと思った。
だけど信じてページをめくれと言ったんだ。
私があの子に。
2ページ、3ページ。
私たちは理解した。
この本が魔法の絵本だと。
だけど娘は言ったんです。
パパ聞いて。
私目が見える。
そう叫んだんです。
分かりますか。
私の気持ちがあなたに。
いいえ、ベネットさん。
13ページ目で
エラは死にました。
カトリーは今元の健康を取り戻し
学校に通い
クラスメイトと楽しく遊ぶことができるんです。
将来の夢だって持てる。
今はショックが大きいかもしれないけれどきっと
カトリーはまた学校に行けなくなったそうですね。
ジョシュアがそう言っていましたよ。
彼女は罪の意識に苦しんでいるのではありませんか。
優しい子ですから。
でも生きているんです。
それが全てです。
僕は何も断罪のために
今日お呼び立てしたわけではありません。
ジョシュアのためでもありません。
一つは絵本が本物かどうか確認する必要があったこと。
そしてもう一つは
もう一つ
この本がその起源からもわかる通り
決して夢のようなアイテムではないとお伝えすべきだからです。
これは呪いなんです。
良いものではないんですよ。
幸福をもたらすことはない。
長く持つべきではありません。
現にあなたはもう退化を支払っておられるでしょう。
ミスター・ベネット
え?
奥様は出て行かれましたね。
違いますか。
なんで知って…
いやそうだ、ジョシュアが言ってた。
どうしてあなたはうちに母親がいないことを…
みんなあなたのような理由でこの本を開くんです。
しかし誰かを助けるためにね。
一番多いのが子供を助けたいという親の願いです。
ですが大抵どちらかが耐えられなくなって家を出る。
これはただの統計ですが
そうした場合大抵女親の方が姿を消してしまうんですよ。
30:03
エラを娘に重ねてしまうのでしょうね。
俺だってエラを気の毒だとは思っているさ。
ルーシーが出て行ったのは男がいたからだ。
そう聞いてる。
さようで。
あなたは俺を断罪する気はないと言いましたね。
じゃあなんで…
じゃあなんでこんなムナクソの悪い話を聞かせたんだ。
聞いてどうしろって言うんです。
カトリーは治った。
それが俺たちの願いだった。
この本を開いた人間のおよそ半数が
数年以内に何らかの精神病を発症し
さらにその半数が自ら命を断つと言われています。
人間は強くないんですよ。
そうありたいと願うほどには。
いやそんなの俺だけじゃない。
俺たちだけじゃないだろ。
自分が助かるために他人を犠牲にするなんてことは
誰だってやってることじゃないか。
カトリーは大丈夫ですか。
彼女が負わされた選択の重さを
あなたは理解していてください、ミスター・ベネット。
彼女には他の選択肢はなかった。
だからこそ
それを選んだという事実は一生の重荷になります。
守るさ、俺が。
あんたには娘がいないからわからないんだ。
そうかもしれません。
失礼、お茶が冷めてしまいましたね。
入れ直しましょう。
いや、結構。
もう帰るよ。帰らせてくれ。
あの子の側にいてやりたい。
ジョシュアにも礼を言わなけりゃ。
本はどうなさいます?
おそらくシャドウヒルの図書館には
もう戻せないと思いますよ。
もともと目録にない本ですから。
預かってくれるのか?
ご希望ならね。
もしまた何か御用があれば取りにいらっしゃるとよろしい。
あんた嫌な男だな。
日本人はもっと親切だと思っていた。
よく言われます。
いや、いや、助かるよ。
そうしてください。
正直な話、それを家に置いておくと
カトリーが落ち着かないんだ。
それじゃあ失礼。
お気をつけて、ミスター・ベネット。
なあ先生、今回のことは全部俺のせいなんだ。
俺は地獄に落ちるかもしれないが、構いませんよ。
喜んで落ちるさ。それでいい。
33:00
すべての父親が同じことをすると知っていますから。
はい。
じゃあカトリーは結局…
うん。空気のいいところに引っ越すってさ。
ま、ヨークシャーの空気が体にいいとは思えないもんね。
君はそれで納得できましたか?
納得も何もさ。
こないださ、カトリーの話を聞きながら
僕、何もできなかったんだ。
ずっと手を握っててあげることしかできなかった。
あの子、ずっと泣いてたよ。
僕、自分の傘も持ってないのに
カトリーにあげようとしてたんだね。
君は他人です。
あとは彼女本人の問題ですよ。
苦い初恋でしたね、女子は。
結局その本、先生が引き取ったんでしょう?
そのエラって女の子さ。
助けてあげることはできないの?
女王の怒りが解けない限りはね。
この本を家に置いておくのも
本当はあまり良いことではないんですが。
じゃあ、ずっとそのまま?
家にある限り、少なくとも次の使用者は現れません。
女王が余計なことをしなければ。
ですが、その本を貸してって言ってくる人が来たら
どうするのさ?
さあ、カトリーさ、元気になるかな?
体は治ったのに今度は心が病気になっちゃうなんて、あんまりだよ。
どうでしょうね。
僕、余計なことをしたのかな。
カトリーのお父さんもなんか思い詰めちゃってたし。
先生の言う通りだ。
責任取るって難しいね。
たまに手紙でも書いてあげなさい。
あの本を使った人間は
強烈な罪悪感に一生苛まれることになります。
それも呪いですから。
君みたいな能天気な友人が一人いるだけで
いくらかは違うと思いますよ。
僕のこと、まだ怒ってる?
さあね。
なんか僕、喉乾いちゃった。
お茶ご馳走してよ、先生。
ご自分でどうぞ。
ティーセットは棚にありますよ。
やっぱ怒ってるじゃん。
35:49

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