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心の森と赤い炎
ある日のこと 一人の旅人が
自分の心の森を彷徨っていました。 森は暗く、重たい煙に覆われていました。
木々の間から光は射さず 歩いても歩いても胸の奥がざわついて落ち着くことができません。
旅人はつぶやきました。 なぜだろう
私はただ黙って頑張ってきたはずなのに 胸の中にはどうしようもない苛立ちと
針のような痛みが残っていました。 旅の途中
仲間と荷を分け合うことになりました。 けれど仲間は思い荷をすべて旅人に押し付け
知らぬ顔で歩き出しました。 旅人は必死に笑顔を作りました。
大丈夫だよ、怒るほどのことじゃない そう自分に言い聞かせて足を進めました。
けれど背中にのしかかる荷物よりも重たいものが 胸の中でじりじりと燃えていました。
夜になると旅人は眠れませんでした。 笑顔の下に押し込められた思いが煙となり
胸を締め付けて息を苦しくさせます。 どうして
怒ってはいけないのに 我慢すればいいだけなのに
旅人は頭を抱え森の奥へと彷徨いました。 やがて旅人は大きな炎の前に立たされました。
赤い火が揺らめきゴーゴーと音を立てています。 お前さえいなければ
旅人は怒鳴り拳を握りしめました。 怒りなんていらない
お前のせいで私は苦しいんだ 炎は答えませんでした
03:00
ただ激しく燃え 黒い煙を吐き出すばかりです
煙は旅人の目を覆い 息を詰まらせました
涙があふれ 森の地面が濡れていきました
やっとのことで座り込んだ旅人に 微かな声が届きました
私は君を壊すために燃えているのではない 知らせたいのだ
その荷は重すぎると 君の心が傷ついていると
旅人は耳を塞ぎました うるさい
お前は人を醜くする 誰もが嫌う炎だ
声を拒むために 煙は濃くなり
森は闇に閉ざされていきました
長い間旅人は炎を睨みつけていました
すると不思議なことに気づきました
炎の奥で何かが動いているのです
小さな影が火に包まれるように揺れていました
目を凝らすとそこには 小さな妖精たちが寄り添っていたのです
彼らは震えながら 微かな声を上げていました
疲れたよ もう重すぎるよ
もっと自分を大切にしたい
旅人は息を呑みました
これは私の声
妖精たちは旅人の胸の奥から生まれた 小さな心の欠片でした
怒りの炎は その欠片たちを守るように燃えていたのです
旅人は胸に手を当てました
自分の内側にも小さな赤い炎が灯っていました
それは冷たい世界から身を守るように 必死に揺らめいていました
お前は敵ではなかったのか
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旅人はようやくつぶやきました
けれど炎はすぐには光に変わりません
なおも圧迫 激しく燃え 妖精たちを包み込みながら 煙を吐き続けています
旅人は問いました
どうしたらいい?
どうすれば君は静まるのだ?
炎は答えません
ただ揺らめき 妖精たちの声を守るように燃え続けるだけでした
日が昇り また暮れても
旅人は炎の前にとどまりました
逃げることも 押し込めることもせず ただ問いかけました
君は何を告げようとしているのか
何を守りたいのか
繰り返し繰り返し問いかけました
その度に炎は揺らむ気を治め 煙が少しずつ薄くなっていきました
やがて 妖精たちの声ははっきりと聞こえるようになりました
私は一人で重荷を背負いたくない
私は疲れてるんだ
私はもっと自分を大切にしたい
旅人は静かにうなずきました
胸の奥に押し込めてきたもの
それがこの小さな声だったのです
やがて炎は少しだけ姿を変えました
まだ赤く燃えてはいましたが 旅人を焼き尽くそうとはせず
妖精たちのそばを柔らかく照らしていました
旅人は立ち上がりました
怒りよ お前は敵ではなかった
小さな声を守るために ここにいたのだな
炎は答えませんでした
けれどまるで安堵したように 煙を少しだけ手放したのです
09:03
それからも旅人は何度も煙に包まれました
頭ではわかっていても 炎に飲まれてしまう夜がありました
妖精たちの声を聞き取れず また苦しくなることもありました
けれど旅人はもう炎を憎みはしませんでした
煙の奥で小さな声が守られていることを知っていたからです
怒りがあってもいい 煙に覆われる日があってもいい
その奥で本当の自分が守られているのだから
旅人はそうつぶやき 胸の奥に灯る炎を抱きしめました
炎はもともと人を守るために生まれたものでした
それは超えてはならぬせんだ 私を大切にしてほしい
そんな合図を送るために灯っていたのです
けれど多くの人はその炎を恐れました
怒りは危険だ 消してしまわなければ
そう思って押し込めたり 無理に蓋をしたりしました
すると炎は苦しくなり 黒い煙となって森を覆います
その煙は心を曇らせ 安らぎを奪ってしまうのでした