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ちょっと想像してみてほしいんですけど、何千年もの長い進化を経て、過酷な環境に適応して植物連鎖の頂点に立つ、無敵の存在になったとしますよね、あなたが。 うんうん、最強の生物ですね。
でも、その進化の過程で、たった一つだけ致命的なバグを抱えちゃったとしたらどうですか? バグですか?そうです。例えば、悲しくて涙を流すと、
陸の上なのに突然エラ呼吸になっちゃって息ができなくなるっていうバグです。 いやいや、生物学的に見たら、それは敵者生存の原則から完全に逸脱したとんでもない大失敗ですよね。
ですよね。 だって捕食者がちょっと感傷的になって泣いただけで、陸上で文字通り窒息死するリスクを抱えているわけですから、まさに進化の袋じろですよ。
普通なら即座に絶滅しそうな欠陥じゃないですか。 でも、もしそんな感情のコントロールができなくて、すぐ体が変化してしまう不器用な生き物たちがですよ。
逆に感情を完全に捨てて、徹底的に管理されたテクノロジーを操る完璧な人間たちと、地球の運命を賭けて戦うことになったら。
ああ、なるほど。その構図は熱いですね。
ええ、今回私たちが徹底解説していくのは、まさにその世界なんです。
一見するとおバカなコメディーの顔をかぶりながら、実は非常に奥深いテーマを隠し持っている、90年代の傑作OVA、慶応世紀ビースト三十四、そして続編の2の世界です。
これは名作ですね。最近BS11で一挙放送されたことで、改めて注目している方も多いんじゃないでしょうか。
そうなんですよ。なので今回は、この作品に初めて触れるというあなたに向けて、なぜこの作品が今見ても強烈に面白いのか、その魅力を余すところなくお伝えしていきます。
得意な世界観とか、巨大コンピューターのガイアを巡る壮大な冒険の全貌を明らかにしていきましょう。
お願いします。この作品は、90年代初頭のアニメーションが持っていた特有のエネルギーが、もう100%凝縮されたような作品なんですよね。
わかります。
当時のオタクカルチャーのレトロポップな空気感を色濃くのかしながらも、描かれているテーマは、現代の私たちが直面している問題にも通じていますし、予定調和の安心感って、現代の視聴者にこそ新鮮に映ると思いますよ。
確かに。ではまずはこれを紐解いていきましょう。そもそもこの作品、物語の世界に入る前に、どうやって世に出たのかっていう誕生の経緯自体が、すでに常識破りなんですよね。
そうなんですよね。プロジェクトB4っていう原作者ユニット名義で作られているんですけど。
プロジェクトB4。
はい。これ、当時のアニメ界を牽引していた4人のクリエイター、ねぎしひろしさん、赤堀さとるさん、伊藤がけひこさん、中原れいさんの集合体でして。
豪華なメンバーですよね。
ええ。ただ、最初から彼らがOVAとしてこの作品を企画していたわけではないんです。
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あ、そうだったんですか。
もともとはですね、1990年のテレビアニメNG騎士ラムネ&40の後番組として準備されていた企画だったんですよ。
ああ、ラムネの次枠だったんですね。
そうなんです。でも関連玩具の売り上げがちょっと振るわなかったせいで、テレビの放送枠そのものが消滅してしまったんです。
えーっと、企画段階で枠がなくなるって、クリエイタラ人にとっては完全にハシゴを外された状態じゃないですか。
まさにその通りです。行き場を失った企画はどうなるか、お空入りかと思われたんですが、ここでキャラクター原案の伊藤賀輝子さんが動いたんです。
何をしたんですか。
ご自身の漫画の単行本のおまけページに、ボツ企画のキャラクターとして主人公であるビーストたちのラフスケッチを載せちゃったんですよ。
えー、それって今で言うなら、メジャーデビュー直前でレコード会社から契約を切られたバンドが、やけくそで未完成のアクスティックデモ音源をSNSにアップするようなものですよね。
あー、まさにそんな感じです。そうしたら読者から絶対にアニメ化してほしいっていう熱望が殺到しまして。
この曲最高じゃないかってファンが熱狂して、結果的にインディーズで爆発的にヒットして、スタジアムツアーが決まったみたいな奇跡的な大逆転劇ですね。
そうなんですよ。そしてファンの声に後押しされて、当時急成長していたOVA、つまりオリジナルビデオアニメーションの市場へと戦いの場を移したわけです。
なるほど、そこでOVAになったんですね。
えー、ここで興味深いのは、テレビ放送のような厳しいスポンサーの制約とか、表現の規制から完全に解き放たれたという点なんです。
確かにOVAって自由なイメージがあります。
初期企画段階では、なんと成人向けレーベルでの展開まで真剣に検討されていたほどですから。
えっと、アダルトでですか?それは全然違う作品になりそうですね。
そうなんです。でもそこに赤堀悟さんが合流したことで、ハイテンションなギャグと熱いロボットアクションが融合した、ハイティーン向けの戦衛的なコメディとして、見事に再構築されたんです。
なるほど。テレビの枠から外れたことで得た圧倒的な自由さが、あの作品のカオスなエネルギーを生み出しているわけですね。
クリエイターたちがやりたいことを全部のせにするぞって暴れ回ってる感じが伝わってきます。
この自由度こそが、当時のオタクカルチャーの情熱そのもので、90年代アニメ黄金期の原動力になったと言えますね。
そして、その自由な発想が一番色の濃く反映されているのが、SFの常識を鮮やかにひっくり返した世界観の設定なんですよね。
はい。ここからがまた面白いんです。
舞台は最終戦争、ハルマゲドンによって南半球がごっそり消滅してから1万年後の地球なんです。
1万年後。
ええ。かつての高度な科学文明は崩壊して、地球は再び鬱蒼とした大自然に覆われた野生の世界へと先祖返りしています。
そこで食物連鎖の頂点に立っているのが、極限の環境に適応して人類から進化した新人類、つまりビーストたちですね。
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そうです。獣人ですね。彼らは陸、海、空に分かれて自然と調和しながら平和に暮らしています。つまり、追われる側、被害者としての位置づけなんです。
平和に暮らしているミュータントなんですね。一方で旧文明の生き残りであるヒューマン、人類はどうなっているんですか?
彼らは地球の過酷な環境に適応できず、空中要塞ウラノスというところに閉じこもっています。
引きこもってるんだ。
ええ。自分たちこそが地球の正当な支配者でと自称しているんですが、実際には北半球の空気を直接吸うことすらできず、生命維持のためのマスクが手放せないんです。
つまり、非常に非優雅な存在になり下がっていると。ここが本当に面白いポイントですよね。
そうですね。
普通90年代の王道SFアニメなら、大自然を守護する人間が環境を破壊する悪のミュータント星人を倒すっていう構図になるじゃないですか。
ええ。よくあるパターンですよね。
でもここでは全く逆なんですよね。自然と共生して幸せに生きているミュータントの領域に、テクノロジーに完全に依存した青びろい顔の脆弱な人間たちが冷徹な兵器を使って侵略してくる。
ヒューマン側が完全に毒された侵略者として描かれてるんです。
より大きな視点で捉えると、この全枠の構造の逆転には、当時の環境問題や行き過ぎたテクノロジー依存に対する非常にソフトでエソい費用性が隠されているんです。
なるほど。
そして両者が奪い合っているのが、かつて地球を半分消し飛ばした超巨大コンピューターシステムガイアです。
ヒューマンはこれを手に入れて、再び地球を支配しようとビーストを襲撃するんです。
だからこそ、初めて見る方は単なる完全超枠のストーリーじゃなくて、この逆転した世界の奇妙さに注目すると一気に引き込まれるはずですね。
ええ、初心者が世界観に引き込まれる最大の注目ポイントだと思います。
で、そんな過酷でシリアスな背景設定の中で暴れ回るのが、さっき冒頭でも触れた進化のバグを抱えた驚くほどコミカルで愛すべきビーストたちなんですよね。
はい。彼らの最大の特徴は精神的な情動、つまり感情の高ぶりがそのまま肉体を重人化させるトリガーになっているという点です。
感情と肉体は直結してるんですよね。主人公のワンダバダは14歳の熱血で食いしん坊な虎のビースト。彼なんかガイアをご馳走だと思ってたくらいですからね。
そうそう、食べ物だと思ってましたからね。ワンはくしゃみや極暴の怒りによって重人化します。
そして、彼に思いを寄せるキザマ人魚のビースト、メイマー。彼女がまさに冒頭で話した、涙を流すと人魚に変身してしまい、陸上ではエラ呼吸になって窒息するという致命的な弱点を持ったヒロインです。
陸上で泣くと息ができないって本当に大変ですよね。他にも、恐怖を感じで鳥肌が立つと鳥に変身してしまうキザナナンパ師のバドミントとか。
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鳥肌で鳥に?ってダジャレみたいですけど。
そうなんですよ。あとは驚くと亀になって甲羅に引きこもってしまうメッカマンネン。彼は戦闘力はないんですが、頭脳派の朝廷役ですね。
敵役も個性的ですよね。ウラノス最強の魔法戦士を名乗りながら実は傲慢でおバカなブイダーンとか。戦場に立つと死者の数を数えながらヨダレを垂らす悪魔子とか。
ええ、敵役も非常に魅力的です。
ちょっとここで考えてみたいんですけど、ここからが本当に面白いところなんですが、一見するとこの感情で勝手に変身しちゃうっていうのは、ただのドタバタコメディをやるためのギャグ設定に見えますよね。
まあ、コメディリリーフ的な要素ですよね。
でも、先ほどのヒューマンとの対比で考えると、このギャップがシリアスな戦いの中でどう生きるんでしょうか。
ヒューマンたちは要塞に引きこもり、マスクで顔を隠して機械の力で感情を抑圧している。
それに対してビースたちは自分の感情を隠すことが物理的に不可能なんですよ。心が動けば体も強制的に変化してしまう。
これって感情を抑え込むヒューマンのテクノロジーに対する生命の剥き出しのエネルギーの工程なんじゃないでしょうか。
素晴らしい洞察ですね。まさにその通りで、日常のコミカルなテンポとバトルシーンの緊張感に心地よいリズムを生み出しているんです。
感情に嘘をつけない彼らだからこそ戦いにも生命ささが宿る。
そしてそれをさらに増幅させているのが当時の豪華声優陣の演技です。
山口活平さんや金井美香さんたちがキャラクターの感情の爆発に圧倒的な生命力を吹き込んでいます。
声の力で完全に表現しきっていますよね。
さて、そんな生身の魅力にあふれたビーストたちですが、実は彼ら生身で戦うだけじゃなくて巨大ロボットにも乗るんですよね。
そうなんです。古代の自立駆動型巨大兵器、心霊機、ジンですね。これを飼ってヒューマンと戦います。
気力特化のワンの地霊王、圧倒的パワーを誇るメイマーの海霊王、そして飛行や輸送を担うバドの空霊王ですね。
ええ。でもこれ、ただのロボットじゃなくて、ジンの心、ソウルゲージというものを通じて、搭乗者の精神や生命力とメカがリンクするんです。
つまりこれって何を意味しているんでしょうか。巨大なメカが単なる機械ではなく、搭乗者の心と生命力で動くというのは。
これは重要な問題を提起しています。現代のテクノロジーで例えるなら、ただ電力を送るケーブルじゃなくて、アドレナリンや怒り、悲しみといった人間の生の感情データを直接機械に流し込むようなものです。
感情で動く生体USBケーブルみたいなものですね。
まさにそれです。心霊機自体は無機質な機械ですが、起動する燃料は野生の感情なんです。
そして冒険の始めりは5年に1度のジンの心争奪戦の最中でした。そこにヒューマンが襲撃してくるんです。
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そこで祖父をVダーンに殺された6歳のヒューマンの少女ユーニを救出したことで彼らは追われる身となるんですよね。
そうです。そして彼女には秘密があって、ガイアの遺跡に触れるとトランス状態になり、バラバラだった3体の心霊機を最強の心霊王へと合体させるトリガーになるんです。
ちょっと待ってください。ビーストたちの感情で動くロボットを合体させる最終スイッチがなぜヒューマンである人間の少女じゃないといけないんですか?
そこがポイントなんです。心霊機は人間のテクノロジー、ビーストは自然の生命力。純真無古な人間の少女であるユーニがインターフェースとなることで初めて機械と自然が融合し、真の力が誕生するんです。
ああ、なるほど。テクノロジーと自然の融合こそが、かつて地球を破壊したガイアという存在に対する彼らなりの一つの答え、アンチ定性になってるんですね。
その通りです。だからこそ、力でガイアを支配しようとするヒューマン側は彼らを必要に追うことになります。
クライマックスへの展開はどうなっていくんでしょうか?
OVA第2期の2に入るとシーシガルなどの新たな刺客が登場します。そしてユーニが捉えられ、ワンたちは緑豊かな大地から一転して過酷な航海を渡る旅に出ます。
凍てつく氷の海ですか?
ええ、その氷の海の果てについに超巨大コンピューターガイアの中枢本体が姿を現すんです。そこからヒューマンとビーストが一触即発の最終決戦に突入していくという非常にドラマティックな構成になっています。
衝撃的な結末に向けてメカアクションの迫力と相まって息をつかせぬカタルシスがありそうですね。
はい、クライマックスの盛り上がりは本当に素晴らしいです。
こうやって全体を俯瞰してみると、慶応世紀ビースト30史がただのドタバタコメディなんかじゃなくて、練り込まれた世界観、魅力的なキャラクターの生態、そして恐らく力のメカアクションが見事に融合した傑作だってことがよくわかります。
ええ、90年代を代表する作品の一つですね。
これから初めて見るあなたは、この予定調和の安心感と善悪の逆転構造に注目してみることで、物語の世界にスムーズに入り込めると思います。
ぜひ、当時のセルガならではのエネルギーも楽しんでほしいですね。
さて、今回はここまでなんですが、最後にソース死後を読み込んでいて見つけた、ちょっと挑発的で面白い思考実験を皆さんに投げかけて終わりにしたいと思います。
おお、何でしょうか。
実はですね、この作品未完に終わってしまった小説版の第3巻が構想されていたそうなんです。
幻のプロットですね。
ええ、そこでは17歳に成長したワンとメイマーを中心としたラブコメ展開が予定されていたらしいんですよ。
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へえ、17歳の2人ですか?
もし、あの激闘の末にガイアの力を受け継いで、さらに大人へと成長したビーストたちが地球に新たな文明を築き始めたとしたら、一体どんな社会になると思いますか?
それは興味深い問いですね。かつての旧文明はテクノロジーで自然を管理して自滅したわけですから。
そうなんです。でもワンやメイマーたちは違います。怒れば虎になり、悲しめば人魚になって息ができなくなる。感情と肉体が直結していて、自分の心に一切の嘘がつけない不器用な生き物たちです。
そんな嘘をつけない者たちが作る文明は、かつて地球を滅ぼした人間の文明とどう違っていたんでしょうか。
心のないテクノロジーはそこに存在するんでしょうか。あなたならどんな優しい未来の形を想像しますか。ぜひ本編のアニメを楽しみながらその先の未来図も想像してみてください。
いやー考えさせられますね。
それでは今回の徹底解説はここまでです。次回もお楽しみに。