あの、あなたは車のカーナビゲーションシステムを使うとき、何を一番に期待しますか?
普通に考えれば、渋滞情報を回避して、分担員の正確さで目的地までの最適解としてのルートを提示してくれることですよね。
はい、そうですね。可視化された効率性というか、データに基づいた完璧に計算された安心感ですね。
私たちは、普段そのシステムに従えば、絶対にスムーズに物事が運ぶって信じています。
ええ、ナビの指示通りに動くのが一番合理的だという前提がありますからね。
でも、ちょっとここで想像してみてほしいんです。もし、運転している友人が突然、ナビの指示を完全に無視し始めたらどうでしょう?
ナビを無視ですか?
ええ、なんかあっちの道が楽しそうだからって未舗装の道に入ったり、突然アイスクリームを食べるために急に昼寝休憩まで挟んだりして、助手席のあなたはもうパニックですよ。
それはまあ、かなり不安になりますね。予定通りに着くのかって。
なのになぜかナビの当初の予定時刻よりも早く、しかもこれまでで一番最高に楽しいドライブ旅行として目的地に到着してしまったとします。
こうなると、ナビの計算システムって完全に存在理義を失って崩壊しますよね?
なるほど。完璧なシステムが予測不可能なノイズによって完全に打ち破られた状態ですね。
絶対的なエラー行動をとっているはずなのに、なぜか最高の結果を出してしまうという非常に厄介なパラドックスです。
そうなんです。ナビが壊れているのに最高の結果を出す。というわけで、今回のThe Deep Diveへようこそ。
今日私たちが探求していくのは、まさにその予測不可能なノイズを体現し、巨大なシステムを根底からおふすってしまった男の物語です。
ええ。1993年に放送され、ライトノベル原作アニメの先駆けともなった名作SFコメディー、無責任感情タイラーの世界ですね。
はい。今回はこの作品を徹底解剖していきます。専門家の視点からかなりいろいろな資料を集めていただいたんですよね。
今回のアプローチのために、かなり多角的な資料のスタックを用意しました。
1990年代日本アニメーションの構造的意義を分析した学術レポートですとか、フィルマークスなどのレビューサイトに寄せられた現代の視聴者の熱量ある考察、そして作品の時系列データなどです。
すごい量ですね。
はい。これらを統合するとですね、この作品が単なるドタバタコメディーなんかではなくて、高度に計算された組織論のケーススタディーであることがはっきりと見えてくるんです。
なるほど。今回の私たちのミッションは、初心者の方にも分かりやすく、この奇想天外な物語の魅力を伝えることです。
単なるあらすじ紹介ではなくて、なぜ無責任とされる男がガチガチの官僚組織や、さらには敵国までも変容させてしまったのか、そのメカニズムを探っていきます。
タイラーの行動が、いかにして巨大なシステムをハッキングしていったのか、そのプロセスを時系列で追っていくと、驚くほど現代に通ずる発見があるはずです。
はい。昔見ていたファンの方も、これから初めて触れるあなたも、ぜひ一緒に深掘りしていきましょう。
では、物語の出発点、彼が直面したシステムの正体から見ていきたいと思います。舞台は宇宙歴6978年ですよね?
そうです。人類が所属する惑星連合宇宙軍と、エルフのような耳を持つ異星人、神聖ラールゴン帝国が血で血を洗う戦争状態にある世界です。
ワープコウホーとか、巨大な宇宙艦隊が飛び交うまさに本格的なスペースオペラの世界観ですよね?
ええ。しかしここで注目すべきは、人類側の組織構造がですね、超科学の世界であるにも関わらず、きまめてヌラ臭いお役所仕事として描かれている点なんです。
そうなんですよ。派閥争いがあったり、出世欲にまみれた上層部がいたりして、規則でガチガチに硬直化しているんですよね?
はい。そんな息苦しいエリート軍隊組織に、主人公のジャスティ・ウェキ・タイラーという20歳の青年が志願してくるわけですが、
資料を読んでいて頭にクエスチョンマークが浮かんだんですよ。彼の志願動機って…
安保完備で、会食後には恩急モデルから…ですね。
それです。戦争中の厳格な軍隊で、こんなただ落画したいというふざけた理由の人間、普通なら即刻つまみ出されるか、軍法会議者じゃないんですか?なぜ彼が採用されてしまうんでしょうか?
それはですね、軍のシステムそのものが、彼のような完全に規格外の人間を想定して作られていなかったからです。
と言いますと?
当時の軍の採用は、AIによる適正試験システムに完全に依存していました。
AIは、論理的な動機を持つ人間を評価するようにプログラムされているんですが、タイラーの回答はあまりにも非論理的で無作為だったんです。
ああ、なるほど。
そのため、AIが処理しきれずにエラーを起こしたか、あるいは計測不能な天才と誤認してしまったと分析されています。
結果として、システムは混乱したまま彼を受け入れ、最も日陰の部署である年金課に配属してしまうんです。
コンピューターの盲点を天然でついてしまったわけですね。
そして、年金課に配属されたタイラーは、最初の転換点を迎えます。
伝説の英雄であるハナ元帝徳へ、年金の至急漏れを届けに行くんですよね?
はい。そこで偶然、ラールゴン帝国のスパイによるテロ現場に遭遇し、人質事件に巻き込まれてしまいます。
外では軍がミサイルを撃ち込もうとしている絶体絶命の状況でした。
これ、先ほどの例えに戻ると、超絶エリートが集まる外資系IT企業に無料の車植目立てで入社した新入社員が、初日に社内をうるついていたら、
偶然、CEOの暗殺計画に巻き込まれ、立ち話のついでにそれを阻止してしまい、いきなり役員に抜擢されるようなものですよね?
アナロジーとしては非常に近いですね。