タイトル
キオクシア、直接液冷対応のAI向けSSD「NX1」を開発──次世代データセンターの熱問題に挑む
このエピソードで登場するキーワードを説明します。
KIOXIA: 日本を代表する半導体メモリメーカー。NAND型フラッシュメモリの開発で世界的なシェアを持つ。
直接液冷 (DLC): Direct Liquid Coolingの略。発熱する部品に冷媒を直接当てて冷却する方式。高発熱化するAIサーバーで空冷に代わり導入が進んでいる。
E1.S: データセンター向けSSDのフォームファクタ(形状と寸法の規格)の一つ。省スペースと高い冷却効率を両立する。
FMS: The Future of Memory and Storageの略。毎年米国シリコンバレーで開催される次世代メモリとストレージに関する世界最大級のカンファレンス。
それでは解説に入ります。
2026年7月29日、キオクシアはAIサーバーやハイパースケールデータセンター向けに特化したPCIe 5.0対応の次世代NVMe SSD「KIOXIA NX1シリーズ」を開発し、一部顧客へサンプル出荷を開始したと発表しました。
最大の注目点は、キオクシアの製品として初めて「直接液冷(DLC)」方式に対応したことです。現在、生成AIの大規模な学習や推論を支えるデータセンターでは、GPUやAIアクセラレータの消費電力急増に伴い、サーバー内部の発熱問題が深刻化しています。これまでの空冷システムでは冷却能力が限界を迎えつつあり、冷却効率の高い液冷システムを採用したラック設計への移行が業界全体で急ピッチに進んでいます。NX1シリーズは、コールドプレートを用いた直接液冷構成に対応した設計を採用することで、熱源となるCPUやGPUの周辺に配置されるストレージ基盤においても効率的な放熱を実現し、高負荷時におけるシステム全体のパフォーマンス低下を防ぎます。
また、本製品は独自の次世代コントローラーと第8世代のBiCS FLASHメモリを搭載しており、前世代モデルと比較してデータ書き込み性能も大幅に引き上げられました。シーケンシャルライト性能で最大約38%、ランダムライト性能で最大約20%の向上を達成しており、膨大なデータを高速かつ低遅延で処理する必要があるAIインフラの厳しい要求に応えるスペックとなっています。
この「NX1シリーズ」は、2026年8月4日から米国カリフォルニア州サンタクララで開催されるイベント「FMS: The Future of Memory and Storage」で実機が展示される予定です。FMS自体も近年、従来のフラッシュメモリ中心の枠組みから、AI時代を見据えた包括的な次世代メモリ技術のイベントへと名称やカバー範囲を拡大しています。高密度化と高性能化が同時に求められる現在のAIデータセンター市場において、キオクシアの新たな液冷対応SSDは、ストレージが単なるデータ保存の役割を超えて、システム全体の熱設計や運用効率を左右する重要な中核デバイスへと進化していることを示しています。
今回のエピソードは以上で終了です。また次回お会いしましょう。
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