こんにちは、かねまるです。
プラントライフは、化学プラントの技術者が、化学を軸に、皆さんの視野を広げていく番組です。
皆さんは、コーヒー一杯を作るのに、どれくらいの水が使われていると思いますか?
不思議な質問なんですけど、コーヒー一杯にコーヒー一杯の水が使われているわけではないんです。
実際には、コーヒー一杯の水を作るために、裏では風呂一杯分の水が使われていると言われています。
そんな見えない水はバーチャルウォーターと言われているんですけど、今回はそのバーチャルウォーターについて詳しく話をしたいと思います。
実はこの話はすでに過去の回で行っておりまして、第20回の放送のリメイク版です。
1年以上前の回を今の目線で話してみます。
それでは行ってみましょう。
まずバーチャルウォーターというのは、もしその輸入品を日本で作ったとしたら、どれだけ水が必要だったかということを表す水のことなんですけど、日本語だと仮想水と言いますかね。
バーチャルウォーターの方が一般的な言葉だと思います。
日本ではたくさんの食料が輸入されています。
その食料も当然作るときに水を使いますね。
野菜や果物であれば水をあげて栄養にしますし、家畜の場合はその生き物の飲み水として使われます。
さらに食品については輸送するときに使う水ですとか、加工するときに使う水というのもありますね。
そうして私たちの手元に届くまでに使われる水の合計をバーチャルウォーターという数値で表しているわけなんです。
環境省のサイトにはバーチャルウォーターの量を計算できるサイトがあります。
コーヒー1杯で約210リットルの水が使われると試算されています。
210リットルというとお風呂1杯の水ぐらいです。
だいたい家庭の浴槽が200リットル前後と言われています。
だいたいコーヒーカップの中に入れるコーヒーっていうのは200ミリリットルぐらいですかね。
0.2リットルです。
それに対してバーチャルウォーターが210リットル。
ざっくり1000倍ぐらいバーチャルウォーターが使われています。
コーヒーを題材にどんなところでそんなに水を使うのかって考えてみましょう。
コーヒーはいきなり茶色い豆が摂れるわけではありません。
まずはコーヒーの木というものを育てて、コーヒーチェリーという赤い実を収穫します。
これがコーヒー豆の元になるものなんですけど、
コーヒーチェリーから種子を取り出してきれいにして乾燥をさせて焙煎します。
そしてようやく私たちが見る茶色いコーヒー豆になります。
作るところというよりはやっぱり農作物を育てる段階で必要になる水が多いですよね。
生産地まで時間と場所を遡ってやっと見えてくる水なんです。
バーチャルではあるものの、海外の水を大量に輸入していることを意味します。
じゃあその水の消費の仕方がものすごく悪いのかって言われたら、それは微妙な話でして、
水の使われ方にもいろいろ種類がありますね。
雨として降って、土壌に蓄えられて植物の成長に利用される水。
もしくは河川や湖、地下水などから取水して使う水。
大事なのは、雨の多い地域で元々降った雨を使って作物を育てたのか。
水不足の地域で地下水などを汲み上げた水なのか。
単純にバーチャルウォーターの水何リットルという数字だけでは、水資源への影響っていうのはわかりません。
だから大事なのは、コーヒー200リットル、牛肉2万リットルっていう数字のインパクトはあるものの、
これが大きいからすべて悪いと判断するための数字ではないんです。
もっとしっかり見ておくとすれば、どこの水なのか。
雨水なのか、河川水なのか、地下水なのか。
その地域では水が余っているのか不足しているのか。
そうした地域まで見て初めて、水問題として意味が見えてきます。
こうした情報はウォーターエイドジャパンというNPO法人がまとめたデータがあるんですけど、
物理的に水が不足している人口の多い国っていうのはインドや中国です。
その他にバングラディッシュやアメリカなどがあります。
どの国にも生計を立てるために何かを売らないといけません。
その売り物に水を使って農業を行ったりもします。
そうなってくると飲み水が足りなくなってくるんです。
反対に飲み水を優先してしまうと今度は経済的に維持できなくなるという結構がんじがらめの状態です。
今度は日本の情報を見てみますと、2005年の少し古いデータではあるんですけど、
日本が1年間に輸入しているバーチャルウォーターっていうのはだいたい800億立方メートルと言われています。
この規模感、何と比べるのがいいかというと、実は日本国内で1年間に使う水の量とほとんど同じなんです。
生活用水とか工業用水、農業用水など全部含めた国内の水の使用量と
ほぼ同じだけの水を見えない形で海外から輸入しているんです。
比較的雨が多くて水が豊かな島国のはずの日本なんですけど、
実は世界有数の水の輸入国なんです。
世界には水が足りない地域がたくさんあるんですけど、
日本の食卓はそういう地域の水も間接的に使って成り立っている可能性があります。
だからこそこのバーチャルウォーターという考え方が大事になってきます。
知っておかないといけません。
解決策はバーチャルウォーターを使わないことと思うわけなんですけど、
そう単純にはいけません。
作物には育ちやすい気候や土地が当然あります。
日本にも水が豊かな地域と貧しい地域があります。
そしてバーチャルウォーターのすべてが悪いわけではありません。
この水自体も各国の貴重な資源です。
石油や天然ガスと同じ役割があります。
他国に輸出することで経済的に有利になります。
大事なのはどこからどんな水を使って作られたものを輸入しているかということです。
水が豊富な地域なのか不足している地域なのか、
そう考えるだけでも同じ輸入でも意味がかなり変わります。
食料って面白いですね。
水そのものをタンカーとかで運んでいるわけではないんですけど、
水を使って作った小麦とか大豆、牛肉などを国境を越えて運ぶことで、
水資源を間接的に移動させることができます。
これまでは農作物などを成長させるときに使う水に焦点を当ててきました。
今度はその農作物などを加工するときに使われる水について話してみます。
このあたりが私の専門的な領域になってきまして、
化学プラントでもたくさん水を使っています。
食品加工でもたくさん水が使われます。
例えば大量生産の領域ですと冷却水というものが使われます。
プラントでは大量の熱を発生させますので、その熱を冷やすために冷却水というものが使われます。
冷却灯という気化熱を用いた冷却装置がありまして、
それで冷やした水を設備に循環させながらどんどん冷やしていきます。
この水も生産に使われる水ですね。
ずっとその水は循環しているわけではなくて、汚れていくと少しずつ捨てていきます。
捨てた分は当然新しい水を補充します。
プラントではやっぱり何かを溶かす溶媒というよりは冷却水ですとか蒸気加熱のような加熱冷却で使う水が多いです。
食品の加工においては結構水っぽい食品って多いですよね。
中でもトマトなんて水分がたくさん入っててみずみずしくて私大好きなんですけど、
ケチャップを作る時ってその水どんどん煮詰めてなくしていきますよね。
大気に放出しちゃっていいんでしょうか。
せっかく水を使って育てたトマトの水分も無駄にしないということでカゴメがやっています。
ケチャップでも有名なカゴメではトマトを濃縮して出てきた蒸気を回収してボイラーの水として再利用しています。
ボイラーっていうのは火とか電気を使って高い温度にして蒸気を発生させるための装置です。
その蒸気でいろんな設備を温める役割があります。
ボイラーで発生させる水をトマトから手に入れているんですね。
その他にも似た例でトマトを蒸発濃縮してトマトペーストを作る時に出てきた水を飲み水にまで生成して再利用できるようにしたっていう例もありました。
こういう食べ物から水を取ってくるみたいなちょっと面白い使い方私も好きなんですけど
化学プラントで似たような水の再利用などを使っている身としては結構大変なこともやってるなっていう印象を受けています。
というのもトマトから例えば水を取り出す蒸気として取り出す場合は加熱とかしますよね。
そして取り出した時に単純に蒸気だけ上から出てくるわけではなくて、蒸気と一緒に果肉とか皮とかトマトに由来するものも一緒に飛んでくるかもしれません。
機体だけじゃなくて固形物も一緒に飛んでくると、配管、パイプのところを詰まらせてしまったりとか、ボイラーのところまで到達してしまうとその果肉が焼け焦げちゃって汚れとして溜まる可能性もあります。
再利用するっていうのはすごく見た目はいいんですけど、実際に成り立たせようと思ったら少し大変な部分もあったりします。
使っているわけではないので実際のところどうなのかはわからないんですけど、そういう大変なところもあるんじゃないかなと想像しています。
やっぱり本心としてはすごく綺麗な水をジャブジャブ使えるのが理想的だなっていうのは思います。