工場で価値という時によく使われる物差しがあります。
機能、コストで割ったものが価値という考え方です。
機能をコストで割ったもの。
機能割るコストですね。
これはバリューエンジニアリングっていう手法の考え方になります。
必要な機能を保ったまま、どれだけコストを最小化して価値を高められるかっていう考え方です。
この考え方って別に特殊なことでもなくて、市場経済で勝ち残るために価格を安く抑えて価値を高めていきます。
若干似たような言葉でコストダウンっていう言葉があって、すごく似たように感じるんですけど、
コストダウンだと単純に金額だけ見ているのに対して、バリューエンジニアリングはコストを下げる、それに対して品質のような機能がどうなっているかってところにも注目します。
コストダウンをするために悪いものを使って、悪いものができたら意味ないですね。
こうしたバリューエンジニアリングという考え方を搬送に当てはめてみます。
製造の現場で部品を隣の機械まで運ぶっていうシチュエーションを考えると、隣の機械に運んだところで部品の形は変わりません。
特に性能が上がるわけでもありません。
形とか性能みたいな機能の部分は増えていないのに、運ぶ人もしくは機械、運ぶための時間といったコストは増えています。
バリューエンジニアリングの考え方だと、機能はそのままで分母、割る数の方が増えちゃってます。
コストだけ増えちゃってるんですよね。だから価値を下げる側に働く。これが搬送は無価値と言われる理由の一つです。
搬送業界に敬意を持った上で、あえて強い言葉を使うと、ただ運ぶだけ、価値は上がっていない、お金がかかっているだけ、っていう意味合いになってしまいます。
こういうところを切り取られてしまうと、やっぱりそういう業界で働いている方々、搬送も含めて全体の生産システムを設計されている方々、こういう方々を真っ向から否定してしまうということになってしまいます。
先に言っておくと、搬送業界ってもちろん盛んでいろんな会社さんありますので、無価値なんてことはありません。経済的に成り立ってますからね。
この辺りは結論を急がずにゆっくり考えていきましょう。工場の仕事を調べるときの基本に工程分析という方法があります。
物が製品になるまでの流れをある単位に区切って分けていくようなやり方です。
よく出る分け方としては、加工、運搬、検査、停滞っていう4つがありますね。
加工は形や性質に変化を与えるもの。ここがバリューエンジニアリングでいう価値を上げるところになります。
運搬は先ほどから話している搬送の部分。物の位置に変化を与える工程です。
検査はイメージの通り、物の量とか品質を測って基準と比べる、要は検査する工程です。
最後、停滞っていうのは計画的に貯めておく貯蔵とか計画に反して滞っている滞流っていうのがあります。
物を貯めておいたり、貯まってしまってたりする工程のことですね。
実際には一つの部品などを追いかけて、これがどういう順番で並んでいるかを考えます。
金属を削ったりするのが分かりやすいんですけど、台車で次の機械まで運ぶ。
機械の前で順番を待つ。削って価値を出す。長さを測って検査する。
こうして工程分析していくと、物が変わっている部分がどこなのかっていうのが見えてきます。
先ほどの例だと、台車で機械まで運んでも、機械の前で順番を待ってても、長さを測っても、形状とか性能とかっていう機能の部分は変わっていません。
唯一変わっているのは機械の中で削っているところだけなんです。
つまりは加工の部分のみで機能が変わっています。
私の専門にしている化学の分野で考えています。
化学プラントだと、まず化学反応の部分は分子の種類が変わっているので機能が上がっています。
あとは蒸留という操作も、沸点の違いを使って中の成分の割合を変えていますので、加工になりますね。
その一方でタンクからポンプを使って別のタンクに送るのは、場所を変えるだけなので運搬になります。
ここまで話すと、なんだか無駄なこと多いなって思うかもしれません。
とは言っても今やっている作業って無駄とは言えなくて、どちらかというとやらないといけないような作業が多いです。
加工や組み立て、反応みたいに物に付加価値をつけることに直接関わる作業がありますね。
そこに対して準備とか後始末、搬送などはその価値を上げるために必要な作業として考えます。
Xの餌っぽくなってきました。
バリューエンジニアリングの見方だと搬送っていうのは価値を下げるものでした。
ただし生産全体で見ると何か機能を上げるために必要な作業として扱います。
プラスよりとマイナスより2種類の見え方があるんですね。
ここで日本ならまず考えるならトヨタでしょう。
トヨタ生産方式TPSというものがあります。
徹底的に無駄を排除して生産性を高めていく、トヨタ自動車が確立した生産方式です。
有名なのは必要なものを必要な時に必要なだけ作るという考え方ですとか、
異常が発生したら人が止めるだけじゃなくて機械が自動で検知して止まってくれる、異常が続かないようにするという仕組みがあります。
この製造業界では特に有名なトヨタ生産方式ですけど、ここでは運搬というのは無駄の一つに数えられています。
トヨタ生産方式の7つの無駄というものがあります。
加工、在庫、作りすぎ、手持ち、動作、運搬、不良や手直しという7つです。
運搬の無駄っていうのがあるんですよね。
じゃあトヨタが言うから運搬、搬送の部分って無駄じゃんってなりそうなんですけどちょっと早いです。
私の認識だと必要以上のっていう言葉がだいたい頭につきます。
無駄に運ぶのは無駄だよっていう意味ですね。
料理をしていて、まな板で人参を切ってその横の鍋に入れる。
これも一応人参の搬送にあたるんですけど、これが直接的に無駄だと言っているわけではないと認識しています。
どちらかというと極端に言えば人参を切って一旦リビングに置いてそのリビングから鍋の中に人参を入れる。
そういう無駄な部分をなくしましょうっていうのがトヨタの考え方だと思っています。
在庫の無駄なんかもそうですね。
ただ無駄にたくさん在庫として貯めておくのが良くないとして、何か理由があるのであれば大丈夫。
例えば材料が本当に入ってこない。
ナフサの関係なんかもそうです。
もしくは原料を買っている工場が止まる予定がある。
それが分かっているから事前に1ヶ月分多めにまとめて買って在庫として持っておく。
これはお金はかかっちゃうけど単純な無駄と呼ぶわけにもいきません。
どちらかというと調達の戦略と言ってもいいかもしれないですね。
こういう在庫が存在する理由があるものは良いけど、
とりあえず山のように買っとこうかって在庫を持っていくのが無駄という意味です。
こんな感じでトヨタが無駄と言っているから無駄っていう短絡的な感じで捉えてしまうともったいないです。
そもそもですね。
先ほど私7つの無駄話したんですけど、最初に加工の無駄っていう話をしています。
このエピソードの一番最初に加工が価値になると話したのに、
トヨタ生産方式だと加工の無駄っていう言葉があるんです。
言葉だけ聞くとなんだか矛盾している感じですけど、
トヨタでは必要以上に加工をしないことという意味合いになってきます。
要はここまでやるっていうのをちゃんと決めときましょうねっていう意味合いなんですけど、
金属を削って丸いものを作るっていう時に、
お客さんとしてはとりあえず丸っぽいものがあればいいやって思っているのか、
ものすごく綺麗な丸で、形がちょっとでも崩れたら大変なことになるっていうお客さんなのか、
そこに合わせてどこまで加工するのが適切なのかを決めて、それ以上無駄にやらないようにっていう意味です。
その他にも安全のための検査。
製品の価値を上げるわけではないんですけど、やめるわけにはいかないですよね。
搬送の多くも近い部分があります。
部品を作る場所と組み立てる場所が離れている限りは、運ばないと先に進めません。
ここが一番大事なところで、価値を生まないことと要らないことはまた別の話なんです。
搬送は無価値じゃない。
価値のある工程を繋ぐための大事なものだっていうところは理解はできるものの、
私自身は搬送は無価値という考えに基本的には賛成なんです。
もともといろんな製造の仕方とか、搬送の仕方っていうのも仕事で考えてきました。
やっぱり無くせるなら無くしたい。
でも現実には無くせないことが多い。
だから何とか減らそうと考えてきました。
搬送のための機械には価値があるとは思いますけど、
それでも可能な限り使わないに越したことはないっていうのが私の立ち位置です。
何かを改善するときの考え方の一つとして、イクルスというものがあります。
大文字でECRSとアルファベットで書いてイクルスと呼びます。
改善する4つの考え方。
業務改善とか生産性向上をするために4つの順番で考えていくといいですよっていうわかりやすい考え方なんですけど、
そのイクルスのまず最初に考えることとして、
排除、不要な業務とか作業そのものをなくしましょうっていう考えがあります。
私としてもやっぱり搬送っていうのはまず無くせないかっていう考えになります。
ついでにイクルスの4種類を順番に説明していくと、
まずは排除、その作業自体無くせないか考えてみる。
今度は結合、無くせないんだったら複数ある業務とか作業を一つにまとめられないかって考えます。
それも難しいとき、今度は交換とか再配置、業務の順番ですとか担当者、場所などを入れ替えてみます。
順番を変えるだけで効率的になることって結構あるんですよね。
そして最後に簡素化、やらざるを得ないんだったらもうちょっと楽にしましょう。
手順とか内容を単純にしましょう、というところに落ち着きます。
やっぱり化学プラントで働いていると何千万何億っていう仕事があります。
やっぱり装置がも高いですし、人もたくさん使って工事するので値段がどんどん上がります。
こういうことして改善したいです、問題を解決したいですって言うものの、
偉い人たちからすると、それやる意味あんの?その作業無くせえんの?ってまず言われちゃうわけです。
だからまずその作業自体無くせないかって考えて、大体は無くせないです。
もちろんやっていることなので、無くせないか、とんでもないお金がかかったり、
とんでもない処理フローとか、国の申請が関わったりもします。
それで無くせませんってちゃんと言えることができたら今度は、
業務を一つにまとめていったり、別の業務の順番を変えたり、
そういうことでそもそもの作業を可能な限り減らしていけないかなって考えていきます。
そしてそれでもどうしようもなかったら、今ある作業をなるべく楽にしていく、安全にしていく、
という方向に落ち着いていきます。
そうしてやっとお金が使えます。
ここだけの話、私はこの工程がすごく嫌いです。
もういいから早くやらせてほしいなとか、もういろんなこと考えるとめんどくさいから、
とりあえずこれで終わらせたいなとかいっぱい思います。
少し話はそれちゃったんですけど、やっぱり搬送っていうのも一つの無くしたい要素ではあります。
バリューエンジニアリングの観点では価値としては上げられないので、無くせるなら無くしていきたいです。
でもやっぱり物の配置っていうのがありますので、
物理的な制約もあって搬送装置を入れざるを得ないってことは当然あります。
むしろあった方が効率的なんてこともあります。
主に搬送っていうのは価値を出す加工と加工の間をつなぐ役割があります。
その搬送を無くそうと思ったら、つないでいる二つの加工を一つの場所でできるようにしたらいいってことです。
例えば料理でいくと、まな板で切る工程と鍋で温める工程、この二つの作業を同じ場所でやるっていうことです。
順番にやっても同時にやってもOKです。
こういうことを生産現場でやってるんですけど、台所で切ると温めるを一緒にするってどうやるんでしょうね。
こういう頭の悩ませることが多いので、結局搬送装置をつなげた方が単純な装置同士を組み合わせるので、結局安い、効率的というわけです。
それだけだと面白くないので、ちなみに言っておくと、鍋で野菜とかを入れて温めて柔らかくしてその鍋の中で箸とかを使って崩せば、その鍋の中で切るのと温めるのがいっぺんにできます。
そもそもの切る工程をなくして、加熱の工程で切ってしまうっていうことになります。
これのおかげで、切った野菜を鍋に運ぶ搬送がなくなりました。
っていう感じで、アイデア次第でなんとかなるときもあります。
化学工学、化学の生産を工業的にできるように考えるような手法の場合、こういう新しい作り方をプロセス革新って言ったりします。
化学プラントでは当たり前で装置同士をつないでいるんですけど、そういう常識を取っ払って新しい製造方法で安定して作れるようにする手法を考えていきます。
すでにいろんなプロセス革新の手法が出ているんですけど、個人的にはもう意味がわからないです。
どういう思考でそう思い立って実現できるようにしたのかがわかんなかったり、なぜそういうことができるのかっていう原理そのものが理解しづらいっていうことも多々あります。
それぐらいプロセス革新って難しいんです。
どの会社もプロセス革新考えますけど、結局は配管でポンプを使って運ぶ、搬送するってところは避けられなくなっています。
やっぱり搬送は必要なんですよね。
でも忘れちゃいけないのは、搬送そのものは機能を向上させるわけではないっていうこと。
とは言っても、生産を成り立たせるんだったら絶対必要になってくるものということです。
ここまで搬送は大事だけど無くしていきたいって話はしつつも、やっぱり私はコンベアが好きです。
最後に私の好きな会社を1社紹介して終わります。
マルヤス機械という会社です。
コンベアメーカーさんなんですけど、このマルヤス機械のYouTubeチャンネルを私よく見ちゃうんですよね。
製造詳しくない、科学技術詳しくないっていう方でも見るだけでわかりやすい。
あ、こういう運び方あるんだって見ただけで面白い、そんな動画があります。
マルヤス機械のYouTubeチャンネルの面白いところは、展示会などで展示している商品、コンベアを一つ一つこんな特徴がありますよって分けて載せた動画がいっぱいあるんですよね。
それがすごくわかりやすいです。
特徴は搬送って聞くとただ運ぶだけっぽく聞こえるんですけど、そのコンベアでの搬送にいろんな機能を持たせています。
運びながら整列をする、逆に振り分ける、さらに裏表を変える、ぐちゃぐちゃに詰め込まれているものを一つ一つ分けて運ぶ。
個人的にはピタゴラスイッチに近い形の印象を受けてまして、それを大量生産する生産現場で実現するための搬送のアイディアが詰まっています。
そもそも搬送ってすごく難しいんですよね。
運ぶだけじゃなくて目的の速さに調整したりとか、先ほど紹介したみたいに整列させたり裏返したりとか、いろんな機能を運びながら持たせたり、搬送するのにももちろんスペースが要ります。
90度右に曲げようと思ったらL字のコンベアがいるんですけど、あれも意外と場所を取るんですよ。
90度回すための最小半径というのがありまして、90度に曲げたかったらこれぐらいのスペースがいるよっていうのがもう物理的に決まっていてどうしようもなかったり、
本当にどうしようもなくなったらロボットを使って搬送したりとかするんですけど、それはそれで安全の面でいろいろ考えることがあったりします。
そうやって技術者はいろいろ搬送について悩みに悩んでいるんですけど、無価値って言われたらやっぱり嫌なところはありますよね。
最後に技術者と搬送メーカーさんに敬意を込めて、搬送はやっぱり無価値ではありません。
というより捉え方次第なのかなと思います。
物の機能という物差しで測ると、搬送そのものは価値を生みません。
搬送が変えるのは物の場所だけだからです。
ただし価値を生まないことといらないことはまた別の話です。
上手に運ぶ技術っていうのは他の工程を減らしたりとか、どうしようもない問題を解決したりして工場全体の価値を上げてくるということです。
結局のところ搬送をなくすっていうのは実質的に不可能な話でして、だからこそ搬送を減らす、効率的に搬送をするっていうのは会社の強みになります。
そして搬送メーカーさんの商品もその商品をうまく組み合わせて生産システムとして成り立たせる技術者もどちらも価値のある仕事をしていると私は思っています。
でもやっぱり忘れちゃいけないのは商品の機能を上げているものではないので、
なくせるならなくす、なくせないなら減らす、どうしようもないなら搬送機の力を借りる、この考え方が重要だと思います。
今回は搬送は無価値というかなり強めの言葉に対していろいろ私の考えについて話してきました。
搬送は無駄じゃないけど価値は直接的には上がっていないのでなるべく減らした方がいいという話でした。
結局は根本的に搬送はなくすべきという形で、機能の面から搬送は価値がないというのか、搬送はどうしてもなくせないから、
逆に搬送があるおかげで効率的に全体が回っている、つまり価値があると言っているのか、
どちらも間違っていることは言ってないんですよね。
Xのちょっと難しいところです。
そしてここまで聞いていただいた方に一応言っておくと、
多分私の話って100%合ってるわけじゃないので、
例えばマルヤス機械のこういう機構があるって話した時に、別のメーカーでも普通にあるけどとか、
当たり前の搬送機構だけどって言われるかもしれませんし、
トヨタ生産方式の無駄の話なんて皆さんよくご存知なので、この辺の説明間違ってるって言われるかもしれません。
ただこの番組自体は馴染みのない方にお届けする番組なので、
多少の誤りというか多少抜けている部分とかあるかもしれませんけど、そのあたりはご了承ください。
っていうのもやっぱりXって難しいんですよ。
この配信もちょっと話題が落ち着いた段階で出すようにしてます。
でも面白い話題だから出したいんです。
ということで、多分ないとは思いますけど、
冒頭ちょっとだけ聞いてこいつ間違ってるなって感じで変なコメントをしてこないように、
一応終わりのこの辺りで許してねっていう話だけさせていただきました。
もしなんか変なコメントついてるなーって思ったら、私の方でどうしましょうか。
顔文字で驚いた顔とかだけつけるかもしれないです。
そういう時はエピソード丸々全部聞いて欲しかったなっていう心の叫びだと思ってください。
今回はここまでです。
プラントライフでは化学や工場に関するトピックを扱っています。
配信は毎週水曜日と日曜日の朝6時です。
番組への質問やご感想は概要欄のお便りフォームからお待ちしております。
最近コラボ収録が増えてきておりまして、
リスナーさんで出てみたい方、ぜひご連絡ください。
ジャンル、内容は何でもよくてですね。
話したいことを言っていただければお聞きしますし、
最初にバックグラウンドをお聞きできれば、それを元に話す内容を考えたりもできます。
プラントライフで話してみようかなーって方もぜひお便りお待ちしております。
そして、もし感想をいただける場合は、Xでも大丈夫です。
ハッシュタグプラントライフをつけていただければすぐに見に行けます。
そして、私は今noteでメンバーシップかねまるのここだけの話というものを公開しています。
発信の試行錯誤とか技術者のキャリアの話など、
最近だとポッドキャストに対して思っていることを話したり、
自分の所属と野望の話をしてみたり、
オープンな場では少し話しにくいけど残しておきたいような本音をお届けしておりますので、
もし興味がある方はぜひ覗いてみてください。
それではお聞きいただきありがとうございました。