WEBVTT

00:00:03.760 --> 00:00:18.080
どうも、かねまるです。 プラントライフは、化学プラントの技術者が、化学や工場に関するトピックを分かりやすく紹介する番組です。

00:00:18.080 --> 00:00:29.160
皆さんは、レゴブロックで遊んだことはありますか? 小さいブロックを組み合わせて、家ですとか、車、

00:00:29.200 --> 00:00:43.520
もしくは想像上の生き物まで、何でも作れてしまいますよね。 では、そのレゴブロックが目に見えないほど小さな分子サイズだったらどうでしょうか?

00:00:43.520 --> 00:00:55.120
今回は、そんな分子サイズのレゴブロックを現実のものにした、2025年ノーベル化学賞の受賞内容のお話です。

00:00:55.120 --> 00:01:04.280
有機金属構造体、通称モフの開発に送られました。 モフとは一体何なのか、

00:01:04.280 --> 00:01:17.080
そしてこの発明が社会にどのような影響を与えるのか、 専門でない方にも分かるようにゆっくり解説していきます。

00:01:17.080 --> 00:01:24.920
まずこの有機金属構造体、モフという名前で呼ばれています。

00:01:24.960 --> 00:01:39.280
なんだか難しそうに聞こえますけど、考え方はとてもシンプルです。 これは金属の部分と有機物の部分でできた骨組みという意味なんです。

00:01:39.280 --> 00:01:54.680
一番わかりやすい例えは、公園にあるジャングルジムですね。 モフというのは目に見えないほど小さい分子レベルのジャングルジムだと想像してみてください。

00:01:54.680 --> 00:02:06.600
このジャングルジムの棒の部分が有機分子、 棒同士をつないでいる継手の部分が金属イオンです。

00:02:06.600 --> 00:02:20.720
高校で有機化学を習っていない方は有機物という部分は一旦無視してもらって大丈夫です。 大事なのは棒と継手を使って

00:02:20.760 --> 00:02:31.640
ジャングルジムのような骨組みを作ったということです。 この小さいジャングルジムも誰かが組み立てないといけないですよね。

00:02:31.640 --> 00:02:42.240
でもそんな必要ないんです。 材料となる金属イオンと有機分子を溶液の中で混ぜるだけで

00:02:42.360 --> 00:02:58.240
自然と規則正しい立体構造を作り上げてしまうんです。 ですけれど本当に重要なのは骨組みそのものではなくて、その内側にある広大な空間なんです。

00:02:58.240 --> 00:03:11.920
この広大なミクロの空間がモフのすごいところです。 空間の広さは今まで使用された物質よりも圧倒的でした。

00:03:11.960 --> 00:03:21.040
似たような広い空間を持つ材料に活性炭ですとか ゼオライトというものがあります。

00:03:21.040 --> 00:03:31.760
活性炭は脱臭剤などに使われますね。 こうした物質よりも空間の広さが遥かに上回ります。

00:03:31.760 --> 00:03:39.200
そしてここからはモフが科学の世界に革命を起こした最大の理由です。

00:03:39.360 --> 00:03:47.360
それはこのジャングルジムの空間を自由にデザインできるという点です。

00:03:47.360 --> 00:03:58.040
狙った大きさや形の空間を精密に作れます。 じゃあ活性炭ではできないのかという話なんですけど

00:03:58.040 --> 00:04:07.120
活性炭というのはヤシガラーですとか石炭を高温で処理して作られる炭素の塊です。

00:04:07.120 --> 00:04:15.800
こうしてできた炭素の塊は内部が不規則で複雑な亀裂や隙間が無数に広がっています。

00:04:15.800 --> 00:04:28.800
作り方の関係で大小様々な大きさの空間が混在しているというのが特徴です。 この活性炭よりも精密なのがゼオライトです。

00:04:28.800 --> 00:04:37.200
ゼオライトはアルミニウムやケイ素の酸化物になってまして規則正しい結晶構造を持つんですけど

00:04:37.200 --> 00:04:47.760
空間のサイズというのは物質の種類によって決まってしまいます。 活性炭やゼオライトとは違ってモフというのは

00:04:47.760 --> 00:04:56.280
継手となる金属イオンや棒となる有機分子の種類を変えることで空間の大きさや形

00:04:56.360 --> 00:05:07.840
さらには性質というのを自由自在にカスタマイズできます。 最初にモフをジャングルジムのようだと紹介しました。

00:05:07.840 --> 00:05:15.040
これって間違ってはないんですけどモフはジャングルジムの四角い形以外にも

00:05:15.040 --> 00:05:25.520
アニカム構造みたいな多種多様な形の空間がデザインできます。 そして空間が広いという強みもあります。

00:05:25.600 --> 00:05:31.400
さらに作りやすい。 完璧なんです。

00:05:31.400 --> 00:05:43.240
ここから今回ノーベル科学賞を受賞した3名の紹介です。 受賞したのはオーストラリアのリチャードロブソンさん

00:05:43.240 --> 00:05:51.720
日本の北川スムさん そしてアメリカのオマーヤギーさん3名です。

00:05:51.800 --> 00:06:00.600
それぞれどんなことをされたのか紹介します。 始まりはリチャードロブソンさんからです。

00:06:00.600 --> 00:06:14.400
モフの原型となる空間を作れるような金属と有機分子の組み合わせを発見しました。 ダイヤモンドのような規則正しい結晶構造だったそうです。

00:06:14.440 --> 00:06:27.280
詳しい人向けに一応話しておくと、金属に一化の銅イオン、有機分子には4つのニトリル基を持つテトラニトリル化合物が使われました。

00:06:27.280 --> 00:06:44.160
そしてこの構造体がイオン交換という用途に使えるというところもロブソンさんは発見しました。 単に形が美しいものを作ったということではなくて、実用性があるということですね。

00:06:44.160 --> 00:06:53.640
ただ、それでも安定性や耐久性の面で課題が残っていました。 そんな中、

00:06:53.640 --> 00:07:07.680
北川スムさんが安定したモフを作り出すことに成功しました。 さらにその構造が機体を吸着して放出できることを実証しました。

00:07:07.680 --> 00:07:20.440
モフはジャングルジムみたいな構造しているので、ちょっと硬いのかなって思いますよね。 ですけれど、今回北川さんが発見したのは、

00:07:20.440 --> 00:07:35.600
ガスを吸い込んで吐き出す、つまり体の肺みたいな役割をしているんです。 こうしてガスを吸ったり吐いたりすることで形を変える、柔軟な性質を持つはずだろう

00:07:35.600 --> 00:07:45.800
ということを提唱しました。 そして3人目、オマーヤギーさんがこの分野をどんどん開拓していきました。

00:07:45.800 --> 00:08:03.040
ヤギーさんはモフ5と名付けられた極めて頑丈かつ非常に多効質なモフを開発しました。 多効質というのは穴がいっぱい空いていて空間が広いということですね。

00:08:03.040 --> 00:08:17.040
今まで用いてた金属は単一のものでした。 今回ヤギーさんは複数金属をクラスターとして用いることで今までの問題を解決しました。

00:08:17.040 --> 00:08:28.640
継手部分にも自由度が与えられるような素晴らしい考え方です。 さらにヤギーさんは、望みの機能を持つモフを作るために

00:08:28.640 --> 00:08:42.760
どの金属イオンとどの有機分子を組み合わせれば良いかという大事な情報を集めてくれたんです。 これによってモフという概念が一般化されました。

00:08:42.760 --> 00:08:53.440
ここで3人の役割をまとめます。 ビチャード・ロブソンさんがモフの概念を提唱して最初に構造を作り上げました。

00:08:53.440 --> 00:09:04.280
次に北川すすむさんが安定で機能的な構造を実証して柔軟性という新しい概念を導入しました。

00:09:04.280 --> 00:09:16.240
さらにオマー・ヤギーさんがモフ5という極めて頑丈なモフを考案して目的の設計をするための方法を確立しました。

00:09:16.560 --> 00:09:27.480
ここからモフが何に使えるのかを紹介します。 モフの空間の中には様々なものを収納できます。

00:09:27.480 --> 00:09:36.160
スポンジみたいですね。 CO2がきれいに入るサイズや形にしたらどうなるでしょうか。

00:09:36.160 --> 00:09:48.440
工場などの排気ガスから効率的にCO2が回収できます。 大気に放出させないので、地球温暖化対策になります。

00:09:48.440 --> 00:10:00.520
回収したCO2は原料として使えます。 今度は水を選択的に集められるモフを使ったとします。

00:10:00.560 --> 00:10:14.880
水がほとんどない砂漠で、空気中の水分から飲み水を作れます。 ただ考えとしては素晴らしいんですけど、未だに実用化されていません。

00:10:14.880 --> 00:10:28.880
モフ自体が水に弱いという特徴があるんです。 なんでかというとモフの棒の部分、有機分子のところが水と置き換わっちゃうんですよね。

00:10:28.960 --> 00:10:39.160
それによって空間の形が変わってしまうんです。 その他にもコストや大量生産の問題だったり

00:10:39.160 --> 00:10:53.280
砂漠で使おうってなると過酷な環境で長期的に機能を維持できないという問題もあります。 今紹介した内容は分離という操作ですね。

00:10:53.280 --> 00:11:03.280
複数の混ざり合ったものから一つのものを取り出す操作です。 今度は貯蔵の役割を紹介します。

00:11:03.280 --> 00:11:20.480
モフは水素やメタンといったガスを低い圧力のまま高密度で貯蔵することができます。 こうした水素やメタンといったガスは非常に高い圧力をかけて保存します。

00:11:20.560 --> 00:11:35.960
圧力にも耐えられるような頑丈な金属容器が求められます。 頑丈にするには構造で工夫するというのもあるんですけど、やっぱり金属の厚みを増さないといけません。

00:11:35.960 --> 00:11:47.920
たくさん金属が使われるので重くなります。 モフを使うことでより安全に、より軽く、そしてより効率的に

00:11:47.920 --> 00:11:57.720
貯蔵を運搬することが可能になります。 実際にガスボンベの中にモフを入れて使った事例があります。

00:11:57.720 --> 00:12:10.430
反動対応の有毒ガスを低い圧力で保存できるようにしました。 次はモフを化学反応に活用する話です。

00:12:10.430 --> 00:12:21.190
モフを触媒に使います。 触媒というのは普段だったら進みづらい反応を進みやすくするものです。

00:12:21.190 --> 00:12:34.470
この放送の2つ前の回で話をしました。 シャープ37番、ノーベル科学賞の鍵になる触媒の話、ぜひ聞いてみてください。

00:12:34.470 --> 00:12:45.670
そもそも特定の金属は触媒としての機能を果たします。 金属を用いたモフは触媒として十分機能します。

00:12:45.670 --> 00:12:59.350
そしてモフには有機分子部分もあります。 この有機分子部分を調整することで触媒の機能を向上させることができます。

00:12:59.350 --> 00:13:12.870
こうした触媒としての機能はモフ以外の触媒でも持っています。 じゃあモフだと何がすごいのかと言いますとモフの形ですね。

00:13:12.870 --> 00:13:27.310
均一な空間サイズを利用できるので特定の大きさや形の分子だけを内部に取り込めます。 こうして内部に取り込んでから反応させることができます。

00:13:27.350 --> 00:13:46.590
余計な反応が起こりづらいということです。 さらに空間によって反応の選択性を向上させられるので今までは複雑な分子デザインが必要だった触媒も単純な構造で済むかもしれません。

00:13:46.590 --> 00:13:54.870
分離や貯蔵、反応など様々な用途が鍛えされるのがモフです。

00:13:55.030 --> 00:14:05.650
すごいですよね。 今回のノーベル科学賞は単なる新しい物質の発見に送られたのではありません。

00:14:05.650 --> 00:14:14.530
それは科学のあり方そのものを変えた新しい方法に対する賞だと私は思っています。

00:14:14.530 --> 00:14:28.410
もともと科学というのは特定の物性になるような分子や材料を設計して作ってみるもの なんですけどモフというのは今までよりもデザイン性が上がっています。

00:14:28.410 --> 00:14:44.490
分子の形がある程度決まっているので穴の形やサイズが予想しやすいんです。 これからモフの研究が進んで様々な社会問題を解決していく未来が期待できます。

00:14:44.610 --> 00:14:54.530
実用に向けてこれからはコストや大量生産の技術革新の部分が進められていくはずです。

00:14:54.530 --> 00:15:06.250
次にどこかでモフという言葉を耳にしたらぜひ今回の話を思い出してみてください。 最後に少しだけ宣伝です。

00:15:06.290 --> 00:15:12.930
10月24日金曜日にポートメッセ名古屋で行われる大型の展示会

00:15:12.930 --> 00:15:25.530
メカトロテックジャパン通称MECTでポッドキャストイベントに登壇します。 その名もものづくり系ポッドキャストの日in MECT

00:15:25.530 --> 00:15:35.770
これまでもものづくり系ポッドキャストの日という企画で何度もお話ししてきましたけれど 今回はリアルイベントです。

00:15:35.770 --> 00:15:49.810
ものづくり系ポッドキャスト番組6番組が集結して自由に語り合うイベントとなっています。 私は科学分野なんですけど他の方は機械や電気制御

00:15:49.810 --> 00:15:59.170
ネットワークセキュリティなど幅広い分野の方が登壇されます。 時間は16時から行われます。

00:15:59.170 --> 00:16:09.890
企業ではなく個人名義でも参加可能ですのでぜひお越しください。 概要欄にイベントのリンクを載せています。

00:16:09.890 --> 00:16:20.490
不明な点は私金丸までXのDMやお便りフォームから連絡ください。 今回はここまでです。

00:16:20.530 --> 00:16:34.730
プラントライフでは化学や工場に関するトピックを扱っています。 毎週水曜日の朝6時に定期配信していますので通勤時間や朝の準備などにお聞きください。

00:16:34.730 --> 00:16:48.250
番組へのお便りは概要欄にあるお便りフォームから投稿ください。 プラント技術に関する専門的な内容はケムファクというブログで解説しています。

00:16:48.330 --> 00:16:58.410
最後にこのプラントライフがいいなぁと思っていただけたら番組のフォローや各ポッドキャストアプリから評価をお願いします。

00:16:58.410 --> 00:17:10.770
Xで発信していただける場合はハッシュタグプラントライフをつけてください。 それではお聞きいただきありがとうございました。
