1. 小島ちひりのプリズム劇場
  2. #011 雨音が響く家にいる人
2024-02-24 06:35

#011 雨音が響く家にいる人

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ただ、家族に尽くしてきただけなのに、隣とどうしてこんなに違うのか。

脚本・出演:小島ちひり
収録・編集:三木大樹(有限会社ブリーズ)

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https://note.com/child_skylark

◇小島ちひり
7歳より詩を書き始める。
大学・大学院で現代詩を中心に近現代文学を学ぶ。
2013年 戯曲を書き始める。
2016年 つきかげ座を旗揚げ。3公演全ての作・演出を手がける。
2023年 プリズム劇場を配信開始。
日常の中の感情の動きを繊細に表現することを得意とする。
現在は表現の幅を広げるべく社会に潜伏中。

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#ラジオドラマ #朗読 #物語 #シナリオ #脚本
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サマリー

小島ちひりはこたつに入りながらテレビを見ています。すると、雨音と隣の藤井さんの声に気づきます。雨の中洗濯物と布団を取り込みます。藤井さんが布団乾燥機を持ってきてくれます。家事の負担が軽減されることに、小島ちひりは驚いています。

00:01
小島ちひりのプリズム劇場
この番組は、小島ちひり脚本によるラジオドラマです。
プリズムを通した光のように、さまざまな人がいることをテーマにお送りいたします。
雨の中の洗濯物と布団
こたつに入ってテレビを見ていたら、玄関の扉がガラガラと開く音がした。
竹井さん、雨よ、雨!
隣の藤井さんの声が聞こえて、窓の外を見ると、ざーっと雨がしきりに降っていた。
大変!
私は慌てて縁側の窓を開け、庭に出る。
藤井さんも玄関から庭に回ってくれて、洗濯物と布団を一緒に取り込んでくれた。
びしょびしょになった洗濯物と布団はひとまず置いておき、タオルを藤井さんに渡す。
ごめんなさいね、こんなに濡れちゃって。
いいのよ、私も知らせるのが遅くなっちゃったし。
でも珍しいわね、竹井さんが雨に気づかないなんて。
藤井さんはタオルで体を軽く拭きながらそう言う。
そうね、そうかしら。
私は曖昧に答えながら、濡れた洗濯物を洗濯カゴに放り込む。
そうよ、いつもは竹井さんの方がちゃんと気づくのに。
私は濡れてしまった布団を前に考え込んでしまう。
このままだと匂ってくるだろうし、カビも出てきてしまうかもしれない。
さて、どうしたものか。
布団乾燥機持ってこようか。
藤井さんは私の心を読んだようにそう言った。
布団乾燥機の出現
藤井さんは隣から白い何やらホースのついた四角い機械を持ってきて、
濡れてしまった布団と掛け布団の間にホースを入れ、スイッチを入れた。
すると何やらゴーゴーと音がし始め、掛け布団が少し浮いた。
ホースから温かい空気が出てね、これで布団が乾くのよ。
この世にはこんな便利なものがあったのか。
孫が買ってくれたのよ。
これのおかげで布団を干さなくても大丈夫になったし、
寝る前に温めておくこともできるし、とっても楽よ。
あなたも買ってもらったら。
藤井さんは楽しそうに言う。
でも、こんな楽をするための機械なんて。
私が渋っていると、何言ってるのよ。
家事なんて楽してなんぼでしょ。
私はその言葉に驚いてしまった。
家事は手間暇をかけてこそだとシュートメーや夫に言われてきたし、
私もそう思っていた。
あなたまさか、お嫁さんにもそんなこと言ってたんじゃないでしょうね。
私は驚いて藤井さんに反論した。
当たり前じゃない。家事こそが家族への貢献であり、
夫への忠誠なのだから、絶対に手を抜くな、楽はするなってずっと言い続けてきたわ。
藤井さんは口をあんぐりと開けて私を凝視した。
まさか、こんなところにそんな急事態のシュートメーがいたなんて。
私より若いとはいえ、そんなに大きく年の変わらない藤井さんにそんな言い方をされる言われはない。
何よその言い方。
だから竹井さんのところにはなかなかお嫁さんもお孫さんも来ないのね。かわいそうに。
私はだんだん自分が哀れになってくる。
そうよ、息子が亡くなってしまって大変だったときに、嫁も孫も私のこと気にかけないんだから。
私はぎゅっとズボンを握る。
いえ、かわいそうなのはお嫁さんたち。
私は驚いて声を上げる。
どうしてよ。
だって、こんなかたぶつで寄り添ってくれないシュートメーなんて私でもごめんだわ。
そういえば、藤井さんのところは亡くなったシュートメーさんとこの奥さんは本物の親子のように仲が良かった。
実際、今でも息子さん家族と同居しているが、お嫁さんと一緒に買い物に行っているところもよく見かける。
それに比べてうちは、この広い広い家にずっと私一人だ。
まあ、あなたにとってのシュートメーさんもきつい人だったし、貧乏口ひいたところはあるわよね。
でも今からでもお嫁さんたちに優しくしとかないと孤独死しちゃうわよ。
孤独死?私が?
だって、息子のこと気にかけないんだから。
私は血の気が引いていく気がした。
まあ、今日は布団乾燥機貸してあげるから。
そろそろ孫が帰ってくるから。またね。
そう言って藤井さんは帰っていった。
私はこたつに入ってぼんやりする。
お嫁さんのこと気にかけないと孤独死しちゃうわよ。
私は孤独死しちゃうわよ。
そう言って藤井さんは帰っていった。
私はこたつに入ってぼんやりする。
家の中には布団乾燥機のゴーゴーという音と、
雨が地面に落ちるザーッという音だけが響いていた。
いかがでしたでしょうか。
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それでは、あなたの一日が素敵なものでありますように。
小島千尋でした。
06:35

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