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戦後史開封
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ビートルズが日本にやってきた!
第3話
チケットの応募総数21万通
引きこもごもだった公演当日
ご案内役は私、ナレーターの小杉和則がお届けします。
昭和41年6月28日
福岡県立明善高校の3年生だった
シーナ&ロケッツのギタリスト、あゆかわ誠はバイクに乗り
友達5人とコサメ混じりの国道を突っ走った。
久留米市から福岡空港までおよそ40キロである。
実はこの日、福岡では台風4号の影響で晴れなり着く予定のビートルズが
福岡空港に来るという噂が流れていたのだ。
あゆかわは中学3年の時、友達の弁当箱を包んであった新聞の記事を見て
初めてビートルズを知り、虜になっていた。
だが噂は全くのデマだった。
ビートルズが本当に福岡に来ようがこまいが、なんか嬉しかった。
バイクを飛ばしていて想像が広がり、それだけで楽しい。
空港には僕ら以外にも、こいつらもそうだなというのがうろうろしていた。
6月30日午後6時40分
ビートルズのコンサートが東京のグロー館で始まった。
コンサートは30日から7月2日までの3日間で計5回行われるが、チケットを入手するのは至難の技だった。
混乱を避けるため、主催者側が往復ハガキによる応募と抽選の方法を取ったためだ。
応募はなんと21万枚に達し、1人1枚限りのところを1300枚も送りつけたファンもいる。
しかし、実はチケットは相当数余っていたという。
共同エージェンシー代表取締役の荒白三郎は、
当たった人が取りに来ないなどで相当怒ったんです。
広告を出すとまた大騒ぎになるので、知り合いなどに電話をして最終的には完売になったと打ち明ける。
東京杉並区内の私立女子校に通う熱烈な女性ファンの一人は、
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クラスの友人とその両親の名前までをも借りて50枚のハガキを書いた。
幸運にもそれぞれ貝が違うチケットが3枚当たった。
学校では一応ビートルズを見に行ってはいけないということになっていた。
でもジョージ・ハリスンが好きで友達と一緒に2回見て、
あとの1回は悪いから友達にも内緒で言った。
数年前にやっと打ち明けましたけど。
会場には後にチューリップを結成し、心の旅などヒット曲を放つことになる
ザイツ・カズオの姿もあった。
この年、高校を卒業し浪人中のザイツは、
福岡から夜行列車に長時間揺られていた。
ザイツ・カズオは、
東京に行くこと自体がワクワクしました。
武道館では遠い席で豆粒ぐらいにしか見えない。
歓声もものすごかったが、音はちゃんと聞こえた。
それより、ビートルズと同じ空気を吸っているということに感動した。
ステージ正面2階席では、グループサウンズのスパイダースのメンバーが
膝を叩いてリズムを取り、体を揺する。
実はスパイダースには以前、ビートルズのコンサートの前座をやらないかという話が持ち込まれていた。
スパイダースは、ビートルズのコンサートの前座をやらないかと言った。
実はスパイダースには以前、ビートルズのコンサートの前座をやらないかという話が持ち込まれていたのだが、断っていたのだ。
メンバーの一人、鎌康博はこう振り返る。
僕らはビートルズの真似をしていたし、自分たちのお手本と一緒にやるのは嫌なもんですよ。
それで客席で見ることにした。
あそこどういう風に弾いてる?コードはどうなっているのかな?と気にしながら聴いていたが、結構ミスもあり、意外に下手だなとびっくりした。
レコードと全然違うし、上手いバンドはレコードと同じように演奏できるものだと信じていましたから、見るまでのイメージが凄すぎた。
同じグループサウンズのタイガース・沢田賢治もメンバーと一緒にレコードと生のサウンド等を聴き比べていた。
曲目は全部で11曲。
ロックンロールミュージックに始まり、アイムダウンで終わったわずか35分のコンサートに観客は酔いしれた。
コンサートの前座として、歌手の美棟勲、内田裕也や、翌年にブルーシャトーで日本レコード大賞を受賞するブルーコメッツなどが出演している。
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悲しき願いなど2曲を歌い、1万人が集まるところで歌うのは生まれて初めてだったという美棟は、
ビートルズのコンサートが終わり、内田とプレゼントを手にビートルズの4人に会おうと試みる。
しかしビートルズサイドのガードは固く、スタッフらと推し問答になっただけだった。
ブルーコメッツのギタリスト三原恒樹もステージ付近でビートルズの演奏を生で聴こうとしたが認められず、楽屋で備え付けのスピーカーに耳を傾けた。
失神し救護室に運び込まれる少女も続出した。警視庁警備課長の山田秀夫は様子を見に救護室に出向いた。
ところが係員の警官は、たとえ警備課長といえども男性である以上お見せするわけにはいきませんと妙なことを言う。
山田は、なんだと思ったら少女たちが興奮のあまりおもらししちゃっていたと苦笑いする。
武道館の外ではファンは一向に帰ろうともせず、たむろしていた。
麹町署警備課長の河原春夫は、もう早く帰りなさいと促しながら白い手袋をした手をあげ、
おじさんはこの手でビートルズと握手をしたと冗談を飛ばした。
その瞬間河原は、ああ、握手させて、触らせてと色めき立つ少女たちに取り囲まれてしまう。
下手なことを言うものではない、と河原は改めて思い知らされる羽目になった。
次回は第4話、外出禁止の4人をお届けします。
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