1. 小林希「島を歩く」
  2. 西表島 多くの炭鉱労働者が密..
2022-08-15 04:41

西表島 多くの炭鉱労働者が密林に眠る

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島国の日本には、北海道、本州、四国、九州を含めて6852の島があります。それぞれに歴史があり、景色の移ろいも違います。

旅作家の小林希さんが産経新聞に連載中の「島を歩く 日本を見る」は、小林さんが実際に島の土地を踏みしめながら、国の表情や陰影を浮き上がらせています。連載の一部を、小林さん本人のナレーションでお届けします。

最終回は、多くの炭鉱労働者が眠る八重山諸島の西表島(いりおもてじま)(沖縄県竹富町)です。

■産経ニュースでの記事ページはこちら

小林希さんの記事本文

 

【この番組は】

島国の日本には、北海道、本州、四国、九州を含めて6852の島があります。それぞれに歴史があり、景色の移ろいも違います。 旅作家の小林希(のぞみ)さんが産経新聞に連載中の「島を歩く 日本を見る」は、小林さんが実際に島の土地を踏みしめながら、国の表情や陰影を浮き上がらせています。この番組では、小林さん本人のナレーションでお届けします。 

【語り手】小林希:旅作家/フォトグラファー/離島アドバイザー 2011年から世界放浪の旅をはじめ、2014年に作家デビュー。旅先での体験を綴り、文庫本や単行本、フォトブックなどを出版。主なテーマは『旅』『島』『猫』。自分の足で歩いて取材しています。

 

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小林の座に、島を歩く。日本を見る。
入尾もて島。万骨眠る蜜林に思う。
八重山諸島の入尾もて島には、約80年に及ぶ炭鉱の歴史があります。
平成19年、入尾もて島の炭鉱関連施設が、経済産業省の近代化産業遺産群に認定されました。
沖縄特産の黒糖とともに、黒いダイヤと呼ばれる石炭です。
ただ、地元の人を含めて、炭鉱の歴史を知る者は少ないようです。
竹富町などによると、明治18年、民間消費者が沖縄県で唯一石炭が発見された入尾もて島で試しに採掘をし、
翌年に明治政府の後押しで採掘事業を開始しました。
島西部に浮かぶ内離島が入尾もて炭鉱の最初の舞台です。
内離島は炭倉が発達しており、島内のあちこちに港口が開けられました。
採掘に従事する千人ほどが暮らし、名屋、学校、商店、郵便局などが建てられ、村が形成されました。
昭和に入ると、採掘は浦内川支流の宇多良川沿いに移りました。
採掘業種の講師は、炭鉱員の娯楽用に芝居小屋も作りましたが、炭鉱員は過酷な労働とマラリアに苦しめられていました。
逃亡に失敗して亡くなった人の多くは密林の中で白骨となりました。
地元の人たちは炭鉱員に同情的で、逃亡の手助けをするケースもあったそうです。
そもそも炭鉱員たちは募集の甘い言葉に騙されて内地から来たものが多くいます。
大正時代には台湾や朝鮮半島からも多くの人が来ていたようです。
二畳部屋を二人で使い、那谷頭の下生活や労働の一切が管理されていました。
賃金は炭鉱の購買所のみ通用する金券で、逃亡防止策でもありました。
明治以降、近代化と軍需産業に貢献してきた炭鉱事業は、重油営の転換というエネルギー革命などを経て、やがて縮小に向かいました。
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現在、宇多良炭鉱跡地には木洞が設置され、死者を追悼する日も混流されています。
入尾もてやまねこも暮らす島の豊かな自然が、緑の監獄であった史実に立然とするほかありません。
過酷な歴史の記憶は薄れゆき、フリージャーナリストの三木武さんが20年かけて調べた5冊の著書が貴重な資料となっています。
地元の内浦観光代表の平翔健さんは、三木さんの調査に協力してきました。
地元の史実を後世へ伝えなくては、と語ります。
密林に眠る蛮骨は、今も声なき叫びを上げているでしょう。
アクセス方法は、石垣島の石垣港から安永観光と八重山観光フェリーの高速線で35分から60分です。
小林望美、島を歩く日本を見る
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