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2024-08-19 02:07

#156【青空文庫】茶話・子供

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薄田泣菫「茶話・子供」

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Susukida Kyukin title:a chat over tea/Child

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茶話 ススキダ・キュウキン
子供 小説家の小栗風揚氏に男の子が生まれた時、
氏はいろいろと名前の詮索をした挙句、「傑作」という字を選んだ。
小説の方では、どうもあまり傑作ができそうにもないが、
この子供は、自分の創作にしては、どうやら出来が良いらしいから。」
と言って、ひどくその名前を不意調したものだ。
ニューヨークに、アイルランド生まれの音楽家、 ビクトル・ヘイバルトという男がいる。
最近、この音楽家に男の子が生まれた。 そのオリ・ヘイバルトは、もうかなり子持ちであったが、
それでも赤んぼの顔を見ると、可愛さにたまらぬようにキスをしたり、頬ずりをしたりした。
仲間の友達が来ると、音楽家は危なっかしい手つきで、 その赤んぼを抱いてきて見せびらかしたものだ。
赤んぼは、ベートーベンの楽譜や、ワグネルのオペラの上へ、 口の悪い評論家のように、時折は水をしかけるようなことがあった。
友達は、赤んぼの顔をのぞき込むようにして、
「いい子だ。ほんとにいい子だよ。 君にとっちゃ、立派な音楽じゃないか。」
と、いくらか、おあいそうのつもりで言ったものだ。 「音楽だって?」
と、ヘイバルトは、まぶしそうな目つきで、 友達の顔を見た。
「そうかもしれない。 だが、少なくともオペラじゃないね。
まあ、早く行ってみれば、マーチかな。 ゆうべなんか、よっぴいてがなりどうしなんだからね。」
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