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中川 浩孝
コミュニケーション力を究めるゴールデン・トライアングル。 仕事でコミュニケーションを扱う3人が、これまでの経験や最新の話題を語りながら、コミュニケーションとは何かを一緒に考えていくポッドキャストです。
田中 愼一
みなさん、こんにちは。コミュニケーションを極めると自分が見えてくる。 そして世界が見えてくる。
コミュニケーションの世界に携わって40年以上。 コミュニケーション命、シン・田中こと田中愼一です。よろしくお願いいたします。
高木 恵子
SEからPRコミュニケーション業界に転職して、はや四半世紀以上、高木恵子です。
中川 浩孝
外資系企業でマーケティングを経験してきた、アメリカ在住中川浩孝です。
SHOGUNの受賞について
田中 愼一
今日はなんといっても SHOGUN 将軍ですね。
やっぱり真田広之の将軍、素晴らしかった。18部門でしたっけ?
なんか総なめにした感じ感ありますよね。
高木 恵子
そうみたいですね。
田中 愼一
あれはある意味初めての出来事で、あそこまで来たというのは、あれは日本人として非常に嬉しい気持ちがします。
高木 恵子
はい、とっても。
中川 浩孝
見ました?
田中 愼一
見ようと思って、ディズニーに入ってないと見れないってことですかね。
高木 恵子
そうなんですよね。
田中 愼一
でもなんか1ヶ月、ただみたいなあれがあって、そこに入ってさっと1ヶ月以内に出ればいいのかなっていう。
中川 浩孝
まあ確かにそれもそうですよね。
高木 恵子
そういうの公共の場で言っていいんでしょうか?
田中 愼一
言ってはいけないですね。
中川 浩孝
無料期間中に見るだけなんですから、全然いいと思いますよ。
高木 恵子
でもさっと出ちゃう。それでまた。
有料になったらさっと出るっていうのはちょっとまあ、検討しましょう。
田中 愼一
あのそうですね、ディズニーチャンネルも多分いろいろと最近はね、多様化してるんでコンテンツが。
それも面白いかもしれないですけど、いずれにしても将軍っていうのは非常にいいです。
もともと僕は真田広之が好きなんで、俳優としてね。
千葉真一の弟子としてね。
テレビに出て忍者ものとかいろいろなアクションやっててね。
千葉真一自身も非常にそれなりに海外でね。
いわゆる武闘派というか、そういう侍とか武士とか格闘家とか、そういう意味で結構いろいろなそれなりの映画に出てたっていう。
中川 浩孝
そうですね。
田中 愼一
だからそれを継いだ感じはあるんだけど、今回の彼のやり方っていうのは、いわゆる俳優だけじゃなくてプロデューサーとしてね。
全体をやっぱり作り上げてきたっていうところがね、これだけ評価されたっていうのは嬉しいですね。非常にね。
言語とグローバリゼーション
高木 恵子
あとその日本語でやってくれてるっていうのが、私はそこがすごい響いたんですよね。
田中 愼一
それが非常に、ある意味これからの時代を反映してて。
我々日本人はもともと英語で聞いて、映画なんか見るときでいわゆる字幕を読んでっていうのが慣れてたんで。
これはいずれ我々は英語を学ばなきゃいけないのかななんていうふうに思ってたんだけど、実は流れはそうじゃなくて、
全ての国民が字幕で読むっていう。これがどっちかというとグローバライゼーションなんじゃないかっていう。
高木 恵子
そうですよね。
田中 愼一
みんなが英語で映画を見るんじゃなくて、ハリウッドの映画を見るんじゃなくて、みんなが字幕でハリウッドの映画を見ていくっていうのは逆に広まっていくっていう、ちょっと想定外の方への進化している流れなのかなってちょっと感じますね。
中川 浩孝
やっぱりそこに関してはパラサイトで、韓国の映画のパラサイトであったりとか、あとイカゲーム、スクイッドゲームがすごく流行ったっていうこともあって、
もうすでにネットフリックスとかで普段からやっぱりテレビを字幕で、海外の言葉を字幕で見るっていう文化が世界中に広まりつつあるっていうのが、すごくそれを感じますよね、やっぱり今回の受賞は。
田中 愼一
ですよね。7割ほぼ日本語だって言われてるわけで。
中川 浩孝
ほとんど日本語ですね。
田中 愼一
それを逆に言うとアメリカでそれが受け入れられるっていうところがですね、僕は大ショックで、驚きというかいい意味で。
中川 浩孝
驚きですよね、本当に。
田中 愼一
本当かいなって思うぐらいに。だからこれはやっぱりグローバル化の流れの一つなんでしょうね。
よりフェアですよね。英語以外はダメっていう発想から、もう英語しかなくなるっていう発想から、いろいろな多言語あっていいじゃないと。
その多言語を通じて外国語を理解するっていう字幕文化的なものは、これからやっぱりどんどん広がっていくんだろうなって。
そういう意味で、将軍のいろいろな18部門受賞っていうのは意味があるんだなって感じましたね。
中川 浩孝
本当にでもそうですね。
日本のコンテンツの重要性
高木 恵子
あとだからやっぱりコンテンツですよね。結局はやっぱり言語も重要なんだと思いますけど、
なんかやっぱりコンテンツがなんか選ばれたのが私すごい、日本の一種のあれって、今の現代社会の話じゃないですよね。
昔の日本のああいう武士とか、やっぱり侍たちの話。
そこで真田さんがちゃんと忠実に日本で見れる時代劇と同じように所作をね、やったっていう。
田中 愼一
妥協しなかったってところが、やっぱり彼の偉さで。今までも例えば、名前言っていいのかわからないけど、ラストサムライとかね、ああいう映画っていろいろあったですよ。
ラストサムライなんかできてるほうだなとは思うんだけど。
でもやっぱりちょっとね、知ってる人がこれやってないなって。
日本人からちょっと違和感があったりっていうのがまだあったんだけど、まだ僕見てないんでね、そうも言えないんだけど。
でもやっぱりね、絶えずいつもありましたよね。
日本に関する映画なりテレビドラマなり、何でもいいんだけども、見てるとちょっとまだ博来品だなーなんて思いながら。
それをやっぱり彼はしっかりとした形をプロデュースで、こだわったっていうか日本の本質でね。
たぶんね、日本人からあの将軍っていうものを見る意味っていうのはそれなりにあるんじゃないかと思います。
中川 浩孝
確かにね。
まあ私見ましたけど、
高木 恵子
おっ、そうなんだ。
中川 浩孝
もちろんね、この話自体が完全に実話ではなくてフィクションな話なので、
もちろん、ん?っていうところはあるんですけれども、とはいえ全体的に見てそんなに何かおかしいなっていうところはあまりなくて、
まあそれなりに何か納得のいくいろんなこうなんですかね、
日本を表現している感じというのはそんなおかしなことはなかったので、
全体的にすごくやっぱりちゃんと日本人が、あれだけ日本の役者さんが実際に入っているので、
今までだとやっぱりね、アメリカ育ちの日系アメリカ人が俳優で出てるみたいなちょっと日本語も拙いみたいな感じが多かったと思うんですけど、
やっぱりそうではなくて完全にね、日本人の人たちが基本的にはやっているっていうところもあるので、
そこはやっぱりそれが受けたっていうことは本当に面白いなって思うのが一つなんですけど、
まあただエミー賞ってあれなんですよね、アカデミー賞と同じように作ってる人たちが基本的には投票し合って投票されている賞なんですよね。
なので実際にこのお客さんたちがどう思ったか、その視聴者たちがどう思ったかというのはまたちょっと別のところにあるので、
そこはちょっとまあ面白いなと思っているところもあって、
例えばそれこそパラサイトがやっぱりそれだけじゃアメリカで全米ですごい大ヒットしたかっていうと、
まあそうでもないっていうところもあって、その中でやっぱりこうちゃんと作ってる人たちが認めてくれる。
もちろんそれはすごく大切なことなので、そこがやっぱりちゃんとしたものづくりをしたというか映画づくりをしたんだろうなっていうところがあるので、
それは非常に嬉しいし、日本人としても本当に。
田中 愼一
そうですね、やっぱりけいこさんが言ったコンテンツが大事っていうね、言語を越えてコンテンツが大事っていうことはすごく重要で、
だから少なくとも作り手の方がそのコンテンツを評価し始めたっていうか、本物を作り始めてきたっていうのは、
今後それを見る側の方にも大きな影響は出てくるというふうには思いますけどね。
僕なんかはですね、今回の将軍見たときに一番思い出したのが、黒澤明の七人の侍なんですね。
あれ僕初めて見たのが6つのときなんですね。
どこで見たかっていうと、アフリカで見たわけですよ。南ローデシアっていうところの。
その当時白豪主義で、いわゆる日本人は名誉白人って言うんだけど、顔の色はみんな中国人とかと一緒だから。
要するにカラードと言われて色付きは差別されてた世界で、日本人だけが名誉白人ってなってたんで。
非常にアイデンティティクライシスに陥ったときに、映画館でですね、これはたぶん日本の政府が仕掛けたと思うんですけども、
基本的に七人の侍を上映するっていう会をアレンジしたんですね、日本の総領事館が
そこにいろいろな人たちが全部呼ばれて、前になって、子供を日本人の、あの頃僕のほかに5人ぐらい日本人の子供がいたんですよ。
一番後ろの方の席で席もらって見てたんですね。
あの当時だから、もうすでにすごい半世紀近く前の話なんだけども、
その映画見た瞬間、何この古い映画って思うぐらい、まず白黒で、しかも雨が降ってるわけですよ、古い映画って。
あの当時でさえ思ったのに、それがですね、見てるうちに、
たぶん外人も同じ、ローデシア人もみんな同じことを感じたと思うんだけども、吸い込まれてってですね、
結局一時間、一番初めに、いわゆる侍っていうかね、野武士たちのが馬に乗って走って、
ダダダダダって40騎ぐらい走ってるシーンが初めに現れたりして、度肝抜く感じ。
映画そのものはすごい古いっていうふうにわかるんだけど、コンテンツが迫ってくるものがあって、
やっぱりその時に何が嬉しかったかっていうと、
白人の人たちがみんな評価してくれて、あれは面白い面白いって話になって、
それがですね、やっぱり日本のコンテンツに対して評価してくれたっていう。
その一番初めのコンテンツが侍だったわけですよ、僕の原体験として。
だからその後も結局侍とか武士道とか、
世界の中でも侍クラスっていうのが日本に実はあって、
その侍クラスっていう人たちが基本的には一つの文化の担い手であったっていう。
思い込みがその時にできちゃって。
その後いろいろな人たちが侍を使った題材でいろいろ出てくるんだけども、
なかなか本物がないなっていう。
いわゆる七人の侍を超えるまでのものがないなとは思ってたんだけども。
たぶん今回の将軍っていうのはそういう意味で言うと、
もともと外の人たちが侍っていうものはみんな知ってるんで、
ある程度ブランド化されてるんでコンテンツ。
それを実際これが本物の侍なんだっていうことをアピールした、
たぶん映画になってドラマになってるんだろうなって想像を今してるんですけどね。
たぶんそれがね、僕にとっては逆にもともと侍というコンセプトで、
日本人を主張することができた経験っていうのが蘇ってきた感じですね。
将軍の事象っていうのは非常に僕にとっても嬉しい事象だなっていうことで、
これからの日本を世界にアピールしていく上では、
非常に重要な一つの発想が隠されてるんじゃないかなって思いますね。
中川 浩孝
ぜひぜひ見てください。
田中 愼一
ぜひとも見させていただきます。あれは非常にいいなと思います。
やっぱり日本人のアイデンティティーを結びつけて考えると、
日本人も元気になるドラマになってるんじゃないかなと。
高木 恵子
あと、真田さんの受賞したときのメッセージというか、スピーチが途中から、
日本語でいいですかって言って、ちゃんと伝えたい。
真田広之のエミー賞受賞スピーチ
高木 恵子
もちろん、諸先輩方ってきっと英語がわからないし、日本語で伝えたいって気持ちで、
この日本語でスピーチをしたって、
結構日本人だったら、日本人だったら絶対英語でちょっと短いスピーチを用意しちゃうじゃないですか。
あそこが、私なんかすごいかっこいい。
田中 愼一
間違いなく、やっぱり英語じゃ言い切れない。
高木 恵子
そうですよね。
田中 愼一
かなりうまいね。英語ができる日本人でも。
やっぱり本質としてね。
彼の日本語で話した部分っていうのは、やっぱり彼の本質であって、
日本人としての彼の本質っていうものを出てきてるし、
いかに彼が強い情熱を持って、日本のコンテンツ、日本的なものを海外に伝えたい、
アメリカに伝えたいっていう、使命感というか、情熱というか、
そういうものを感じますね。
中川 浩孝
確かに。
彼は普通にインタビューとか、アメリカのニュース番組とか、モーニングショーとかで、
英語で完全に受け答えしてますからね。
高木 恵子
英語はできるけどね。
中川 浩孝
それなのに、日本語でやっぱりやるっていう意味を、彼は分かっていてそうやったっていうのがありますよね。
高木 恵子
私、またそこで共通点を見つけてしまったんですけど、
鬼滅の刃と同じ共通点。
共通点を見つけたのは、やっぱり真田さんからも出た言葉が、
継承する、つなぐってことだったんですよね。
諸先輩方が培ってきたものをきちんとつないできました。
つなげましたと。これをつなげますっていう。
これってだからやっぱり、鬼滅の刃と同じ共通点ですよね。
田中 愼一
まあそうですね。明らかに共通点ですね。
高木 恵子
同じ信念というか、同じ思いは絶対変わらない。それをつなげていくっていう。
田中 愼一
思いをつなげるっていうのは、すごくいい言葉ですよね。
高木 恵子
そこがなんか、またズキーンときましたね。
なんかちょっと最近はこう、日本も殺伐として、
日本のいいところがまだ分かってない部分もいっぱいあるのかもしれないけど、
つなげるっていうところがちょっと欠けてきてるのかななんていうのを、
自分ごとのように思ったりもしましたね。
田中 愼一
昔、一時期欧米化とか言われてましたよね。
たぶん、自分のものじゃないものを追っかけるっていうかね。
そうじゃなくて、やっぱり自分のものっていうのをしっかりと、
何なのかっていうのを見極めて、それをしっかりと継承していくっていうのは、
やっぱり僕はすごく重要な発想だろうなというふうに思いますね。
あと、やっぱり継承させるっていう言葉が出てくると、
それを言ってる本人が元気づくんですよね。
一つのミッション感っていうか、使命感というものが出てくるから。
鬼滅もそうだし、今回の真田広之のスピーチもそうだけども、
人に元気を与えますよね。話してる自分が一番元気になるんですよ。
日本の文化の継承
田中 愼一
だから非常にストーリー性が高い、途中で日本語に変わったけども、
逆に変わったことがよりストーリー性を高めてくる。
これはもう間違いなくありますよね。
ストーリー性っていうものは単に、周りに対して発信するものということに加えて、
やはり自分に対してそのストーリー性を発信して、
その中で自分を元気にしたり覚悟させたり、
あるいは使命感をより強くするという効用があるんでしょうね。
つなぐっていうのは、思いをつなぐっていい言葉ですよね。
逆に言うと、自分の日々やってることを思いをつなぐというところから整理整頓してみると、
実は結構すごい自分のストーリーが出てくるんじゃないかな。
高木 恵子
なんかそんな気はしますね。
田中 愼一
実は今週土日っていうのは、僕が6ヶ月に2回やってる集中講座2日間というのが、
グロービスのMBAコースでやるんですけども、結構ハードなんですけど、
その中でコミュニケーションの力学を解いていったらですね、
いろいろ考えていくと、だんだんコミュニケーションの力学を考えていくと、
自分というものは本当に存在してるのかわからなくなってくる。
つまりほとんどの人が、自分というものがあった前提でコミュニケーションをやってると思っているのを、
僕の力学は、相手との対話の前に自分との対話をしろってことをある程度言うんですね。
自分との対話っていうのは、一見自分の否定に後入ってくるわけですよ。
つまり自分というものを一旦否定することによって自分をゼロにして、
自分がゼロになると相手の言ってることを素直に受け取ることができる。
つまり相手を知るっていうのはコミュニケーションの本質なんですっていうところから解いて、
相手を知るためにはまず自分をゼロにしなきゃいけないんですよと。
ゼロにすると素直に相手の言ってることを吸収できる。
なぜかというと相手を知ることを邪魔する最大の敵は自分なんだと。
自分の思い込み、好き嫌い、偏見。
そういうものが相手を知ることを遮るんだと。
だからまず自分をゼロにしろっていうことをよく言うんですよ。
そうすると相手を十分に知ることができる。
そしたら質問がいくつか何人かから出てきてですね、
じゃあ自分ていうものがなくなっていいんですかって。
自分がなくなるっていうことなんですかっていうね。
はっきり僕の感覚はですね、自分て何?と思ってて、
そもそも自分なんてないんじゃないのと。
所詮この世の中は思い込みの世の中なんで、
これが自分だと思い込んでるのが自分になってるんでしょう。
所詮妄想ですよと。
ここまで割り切るかどうかってことですよ。
でも一旦これは思い込みの世界で、何でも思い込んだやつが勝ちって感じの世界なんだよと。
だから自分にとって必要な思い込みを作ればいいわけですよ。
そういうような議論をしてて、ある程度の人たちはなるほどねって腹落ちしてくれた人もいたし、そうじゃない人もいたと思うんですけども。
ただ結構僕自身もそれを説明してるうちに、確かに自分らしさって何なんだろうなと。
自分らしさって固定的なものっていうのが生まれつきあんのかないのか。
でも所詮はそうじゃなくて、その後自分っていうのが作られていく、周りの環境によって。
っていうところをすると、自分って何っていうのが実はいろいろと出てくるわけですね。
そのときに思ったのは、使命感っていうの、つまり生きるための自分のミッションって何なのかっていうところにだいたいみんな行き着いてきて、
そうするとそのミッションっていうものをどう感じ取っていけばいいのかっていったときに、
説明する中でやっぱりストーリーって話が出てきちゃったんですよ。
つまり自分のストーリーを持ちなさいと。
実際僕自身が自分で誰?って自分で問い返したときに、
唯一自分が存在している証というか、自分のストーリーを生きてるっていう感覚だった。
自分の人生を生きてるっていうのと同じ表現なんだろうけど。
自分のストーリーを生きてるっていうことが自分が存在する一つの自覚作用であるならば、
ストーリーっていうのは実はかなり重要な話で、
実際僕はその2日間のコースで一番教えたいのは、一人一人が自分のストーリーを持てってことを教えるんですよ。
じゃあストーリーって何なのか。
じゃあストーリーってどういう要素があるのかっていうんで、
僕自身が6歳ぐらいの時から実際今に至るまでの自己紹介を兼ねて、
それを全部ストーリー調に語るんですよ。
そうするとみんながなるほどっていうことになって、
自分はそのストーリーを語ることによって、
いろいろな効用というものがあるっていうことを解いていくわけなんですが、
今回はそういう質問があったんで、
より細かくストーリーって一体どういう力があるのか。
ストーリーを持つってのが一体どういう力を自分に発揮させてくれるのかっていう視点から、
みんなと一緒に考えたんですね。
ある意味で言うとこの5つぐらいの要素があると。
まずストーリーっていうのは自分を元気にするんですよ。
ストーリーの重要性
田中 愼一
結局ストーリーっていうのはよく人に語り聞かせるもんだってよく言うんだけど、
そうじゃなくて実はあれ自分に語り聞かせるもんね。
絶えず自分を元気にする。
つまり人生を落ち込んで過ごすのか、落ち込みを最小化して過ごすのかって人生変わっちゃいますよね。
ストーリーを持つってのは自分を元気にする。絶えず自分は元気にする。
だから自分が落ち込んだときに自分のストーリーに回帰して、
俺はこういうことをやろうとしてるんじゃないかっていうことを、
さっきの鬼滅みたいなもんですね。思いを繋ぐんだっていうのと元気が出てくるんですね。
だから一つストーリーを持つってのは元気になることだと。絶えず維持することだと。
それから二つ目はですね、やはりメッセージ性を高めるよと。
ストーリーがある人とない人では、その言語・非言語の発信されるものが全然変わってきちゃうんですね。
やっぱりストーリー性がしっかり自分でもって、それによって自分を元気にしてる人っていうのは、
メッセージ性がとてつもなく高く、もっと具体的に言うと言語と非言語が一致してるんです。
だから言語から発信されるメッセージと非言語から発信するメッセージがピタッと一体になって、
強烈なオーラのごとくメッセージ性を高めるんですね。
これがある意味二つ目なんだろうなっていうのが、みんなと議論してわかってきて。
三つ目はですね、感度を高めるんですね。
ストーリーっていうのは一旦自分で作るとそのままじゃダメなんですね。
日々それを進化させていくという努力が必要なんです。
進化させるってどういうことかって言うと、目の前で起こってくるいろんな事象。
だいたいそのうちのほとんどが想定外の事象なんですけど、
そういうのが起こってきたときに、自分が持っているストーリーの中にそれをどう吸収するか。
想定外のことが起こってるわけだから。もともと想定してないものが起こるわけだから、ストーリーの中に入ってないわけですよ。
その想定外のものをいかに吸収して自分のストーリーの中に入れて、ストーリーそのものを進化させるかっていう、
努力をすることがすごく重要で、実はそれが、ある意味視点の流動化って言葉を昔から作ってるんですけど、
一つの視点にいるんじゃなくて、さまざまな視点の間を歩き回れば。
視点を流動化する。自由自在に視点を変えるっていう。これ結構難しいんですけど。
それをやると、実は周りで起こっていることの意味付け力がアップするんですよ。
一つの視点から見るとこれ、全然意味がないんだけど、こっちの視点から見ると、あるいはもっと複数の視点から切っていくと、見えてくるっていう世界があるんですね。
これ意味付け力って僕は勝手に言ってるんですけども、それの能力がついてくると、
僕昔セガにいたときに、そのときの社長で中山隼雄さんってすごい人がいたんですけど、
どっちかというと反面教師的な人が多いんだけど、彼から学んだ唯一というかすごいことっていうのは、
彼は言葉では言わなくて僕はそう表現したんだけど、彼の行いっていうのは無から有を生むんですよ。
何もないところから価値を生み出すっていう。それを彼はすごくうまくやってるんですね。
無から有を生む力
田中 愼一
例えばスピルバーグと交渉してるときとか、僕はそこに同席してたんだけど、いろんな人たちと交渉してるときに、
一見無で何もないじゃんと、価値も何もないじゃんっていうとこから価値を探り出す。
だから無から有を生むっていう力を持った、それを僕は非常に大きな学びとしてるんですけども、
無から有を生むっていうのは前提として視点を絶えず流動化してるはずなんですよ。
さまざまな切り口でものを考えて、多面的にその一つの事象を分析し、
そこが無なんだけど実は有が生み出されるっていうね。
もっと言い方を変えたらピンチをチャンスにするって言うはずなんですね。
ピンチなんだけど実はその背後に視点の流動化をするとチャンスに見えてくる。
これを僕は今感度を高めるっていう、自分の感度をですね。
これが多分ストーリー性を持った人っていうのはその感度が高まってくるんですね。
今言ったように、目の前で起こっている想定外を絶えず吸収、消化して、
自分のストーリーの中にビルトインさせ、それを毎日毎日日々やってるとものすごい意味付け力が高まって、
視点の流動化っていうことができるようになる。
これが間違いなく出てくる。
クライシスへの対応
田中 愼一
あと2つあるんですけど、4つ目がですね。
これすごいなと思ったのは、実際やってみるとそのストーリーに対する覚悟が生まれてくるんですね。
毎日それやってると、つまり覚悟とか使命感とか、クロービス流に言うと志っていうのがですね、しっかり備わってくる。
これは実はこういうシーンだけじゃなくて、クライシスの時にそれを経験してるんですね。
クライシスの時にクライシスに対応する戦略っていうのを早急に作らなきゃいけないんですけども、
それを短時間、1時間ぐらいでやるんですが、そこにいるトップ5人のその企業のクライシスと向き合ってる、
その人たちのところで戦略を作り込んで、こうだこうだこうだってやっていく。
ある意味戦略を作るっていうのは、今目の前で起きてるピンチがどういう事態なのかを、
まず分析し、そこからどうあるべきかっていう戦略を作らなきゃいけないんですね。
面白いことに、1時間そのセッションをやると、基本的にはその企業がこのクライシスに対してどういうストーリーで向き合うかっていう話になるんですよ。
それを形にしていくと戦略になるんですね。
その戦略をずっと1時間、そのトップの5人の人たちと我々みたいなコンサルがファシリテーションをする中でやっていくと、
1時間後にね、そこに参加してるメンバーの人たちの覚悟のレベルが変わってる。
間違いなく使命感に近いぐらいの自己暗示力っていう効果ですかね。
それが生まれてくるとですね、これがですね、鮮やかに1時間で人間って覚悟を決められるんだって思います。
面白い発想なんです。これができると落ち着きが出てくるんですね。
そうするとさっき言ったように視点の流動感が可能になってくる。
視点の流動感が可能になると、あらゆる切り口でこのクライシスってどう理解しなきゃいけないのか、
あらゆるクライシスでこれをどう乗り越えなきゃいけないのかっていうのがものすごく出てくるんですよ。
これがクライシス対応へのフレキシビリティを飛躍的に上げるんですね。
最後のポイントね、今4つ目言ったんですけど、5つ目はですね、それが人を動かすんですよ。周りの人。
ストーリーの効用っていうのは、この週末、35人の受講生と一生懸命考えた議論して、
今までストーリーはこうだとは言ってるんだけど、ストーリーが何の役に立つのっていった視点から分析してきて出てきたのが5つあって、
まず一つは自分を元気にする。
それから二つ目は言語非言語を一致させることによってメッセージ性が非常に高められる。
それから三つ目は感度が高まる。つまり無から有を生む。あるいはピンチをチャンスとしてみる。感度が高まる。
それから四つ目が覚悟とか使命感、あるいは志っていうのがより醸成される。
最後がそれが人の心を動かす。これは相手の心、つまりクライシスなんかが起こってて周りの人たちをどんどんステークホルダーを動かさなきゃいけないんだけど、
ストーリーの効用
田中 愼一
それだけじゃなくて自分自身の行動も動かすんですね。
だからストーリーっていうのはそういう5つの効用があるんだと理解して、やはりストーリーっていうのをやっていくと非常に重要じゃないかなと。
だから先ほどの鬼滅と将軍のつながりっていうのが、思いを繋いでいくっていう、
そういうものはストーリーの一つの軸になる。
だからそういう熱いものを持ってるっていう、やっぱり熱いものを感じさせるようなものっていうのがあって、
思いを繋ぐっていうのはものすごく人間にとっては、人間が生存するっていうのは繋いでいくしかないんですから。
人間は一生生きていけるわけなくて、人間というのは絶えず繋いで生きてるから絶えず繋いでいく。
そこの感覚って、日本人ってすごく強いと僕は思って。海外に特にいたときに。
だからご先祖様とか、いわゆるそういう今までの繋いできてくれた人たちに対する感謝っていうか、
そういうものが実はいろいろな表現で日常的にあるんですよね。
よく見てみると。もちろん宗教というだけじゃなくね。
いろいろとご先祖様とかいう発想とか、将来に対していわゆる子孫に対して何を残すんだとか。
いろいろそういう日常生活の会話の中で、日本人の中ではね、たぶん僕が少なくても海外にいたとき、
海外のいろいろな方々と話している中で、日本人ほど自分の今までの過去のご先祖さんというのと、
将来に対する子孫に対する発想っていうのは、やっぱり会話の中でいろいろ感じますね、日本人の中で。
それが将軍という一つの、いわゆる真田広之のスピーチの中にある、
繋ぎましたと。これから自分はもっと繋げるし、さらには新しい、次の世代の人たちが繋いでくれっていう、
あの心っていうのはなかなかすごいものがあるなっていうふうに感じます。
高木 恵子
熱くなりましたね。
田中 愼一
将軍というものと、それが一緒に起こっちゃったんで、この2日間の集中コースで。
その中で、自分らしさって何ですかって質問を問われたときに、はたとちょっと考えさせられた。
基本的にはみんなで考えたんですけども、そういうやっぱり、自分らしさって実はそのストーリーなんじゃないかって感じですよね。
自分が持ってるストーリーが自分らしさなんじゃないのって。
それ以外で自分らしさって何ですかねっていう。そんな感じです。
という形で、すいませんちょっと熱く語りました。
そこから何か紐解いてください。ありがとうございます。
高木 恵子
なんかでも、私、そうですね、ストーリーを作るっていう話で今振り返ると、
なんか自分が何かに迷ったときに、これはストーリー性を持てるかどうかで、なんかいろんなことを決めてたような気がします。
田中 愼一
でもそれはあるでしょうね。
高木 恵子
あえて何か選択に迫られたときに、どっちを選ぼうかなとか、どうしたらいいかな。
自分はどの方向に進もうかななんて、いろいろ迷ってた。若い時期とかって。
最終的に、どっちがやっぱり自分が誰かに語るときとか、今後何か自分が振り返るときに話しやすいかっていうか、
ストーリーになるかって、なんか今思うとそこを意識して選択を全部してたような気がしますね。
田中 愼一
そうですね。多分、どのストーリーを選ぶと一番元気になって、
積極的に動くかな、あるいは動きたいなって思うもので、自分の次の行動を決めるっていうのはよくわかります。
人間って自分の行動を変えるときっていうのは、二人の相手に正当性を主張しなきゃいけないんですね。
自分の行動を変えるから当然ながら、周りの人が行動を変えたっていうのを見てるわけですよ。
だから、なんで自分はこういうふうに行動をとるのかって周りの人に説明しなきゃいけない。
そのときの理屈っていうか、正当性っていうのが必要なんですね。
ただ、その前に自分の行動を変える前に、まず自分自身の意識を変えなきゃいけないんですね。
そうすると、行動する前にまず自分の意識を変えなきゃいけない。
そうすると自分の意識を変えるときに、自分自身に対してその正当性を訴えるんですね。
だから結局、人間は自分の行動を変えるっていうのは、自分の意識を変えて行動を変えるってことは、
まず自分の意識を変えるために、自分が納得する、いわゆる正当性を理屈で理解しなきゃいけない。
次に、自分の行動を変えたときは、今度は周りが目撃してるわけだから、
周りに対してその正当性を説くっていうことを言わなきゃいけない動物だと思ってるんで。
まさにそうでしょうね。自分が行動を変えようと思ったときに、どのストーリーが一番自分にとっていいのかって判断するんでしょうね。
それでそういうストーリーにのっとって行動するんでしょうね。
多分ね、ストーリーがありきか、行動がありきか、どっちがありきかわからないんだけど。
でも人間は面白いことに、そういう意味付けをすることによってこのストーリーを演じている、
この自分がですね、これが自分なんだっていうふうに思い込んでるだけだって僕は説明するわけですよ。
そうすると人によって、いやそれはちょっと虚しいってこういう話になって、
もっと自分って何っていうふうに突き詰めてくるっていう気持ちは僕もわかりますけどね。
長年コミュニケーションの世界で生きていると40年以上も、
所詮はこの世は追い込みの世界だよと、それぐらいの気楽さで考えていかないと、
そんな落ち込んでる場合じゃないよって言いたい気持ちが最近あって、
それがね多分今回土日でみんなに伝わっちゃったんでしょうね。
そこで何人かの人が不安を思い出して、自分ってどうなったんだっていう話で。
中川 浩孝
今でもこの話をずっと聞いていて、私は採用のことを考えちゃったんですけど、
ストーリーって例えば職を変えるって人生にとってある意味大きな転換点だと思うんですけれども、
その時にその意味付けというか、なぜここで今転職したいのか、この仕事に就きたいのかっていうのが、
結構うまく説明できない人ってこんなに多いんだなって思うんですよね。
採用する側に立った時に。それができないような人は、
たぶん新しい仕事に就いても、きっと自分を見失うんだろうなっていう気はいつもしちゃうんですよね。
田中 愼一
素晴らしい洞察眼。今の言葉すごいね、本当にハマりましたよ。
そうだなと本当に思った。
中川 浩孝
そうなんですよ。なのでそういう意味ではね、それがもしかしたら本心というか本当にそう思ったかは別として、
やっぱり自分がこの仕事から次の仕事に移る時に、こういう理由だから自分はこうなるべきだとか、
それを一回頭の中で考えてくれただけでずいぶん違うと思うんですよね。
それが実際にそうなのかとはまた別の話として。
ストーリーが語れるかっていう、構築できるかっていうのがまずその能力として、
この人は高いんじゃないかなっていう風に想像できるんですよね。
田中 愼一
間違いなくそうですね。
ここあたりは皆さんの意見ちょっと聞きたいんですけど、皆さんもそれなりに多様に職というか立場変えてますよね。
僕は人生では3回変えたわけですよ。まず初めにホンダに入るとき。
2つ目には今度セガに入るとき。
3つ目は今の事業立ち上げ。この3つが大体僕のプロフェッショナルな変遷なんですけど、
ストーリーの重要性
田中 愼一
今のヒロちゃんの話を聞いてたら、なるほどなと。
ホンダに入ったときは、南ローデシアに二輪工場を建てたいですっていうことを言って、
そのためには何でもやりますっていうような話だった。
ホンダからセガっていったときは、これかなり清水寺から飛び降りる気持ちだったんだけど、
そのときは、いわゆる日本の中で時代の流れに追い越されそうですと。
そこでホンダというところ、大きな組織の中ではなくセガというところで、
あのときセガって新しかったんだよね。
セガで、いわゆるやってみたいというような、ある意味ストーリーを語ったっていう話で、
次にフライシュマンヒラードから声がかかったときは、
いやいや、こうあるべき。
たぶん非常にストーリーを語ったんですね、日本の。これから日本はこうなるって。
そのときに何が一番重要かって言うと、やっぱり日本をコミュニケーションのパワーで変えることが重要なんだって思って、
そういうのを述べて、それで入った感じですよね。
で、そのときも何でもやりますっていう。
3つとも共通してるのは、何でもやりますって。
何でもいいです、もう何でもやりますっていうことを言ってた。
それがストーリーなのかどうかわかりませんけど、いずれにしてもそういう感じだったから、
皆さんの場合どうでした?
ストーリーを語りました?
高木 恵子
やっぱり語ってると思いますね。
田中 愼一
例えばけいこさんの場合、どういうストーリーを語って。
高木 恵子
結局、私の場合は冒頭の挨拶でいつも言ってるように、何でSEから今のPR業界にっていう。
田中 愼一
ここでもストーリー性があるわけですね。
高木 恵子
ここでも一回目のストーリーなんで、私の場合は。
だからそこってやっぱり大きな何て言うんですかね。
やっぱり一つの私の多分人生記の中の一つのやっぱり節目っていうターニングポイントだったんで、
その話はかなり人と同じような流れを持ってる人ってあんまり多分皆さんお聞きにならないと思うから、
そこはすごい一つのストーリーになる。
そこからはでもベースやっぱりそこで何でわざわざ真逆のインダストリーに行ったかっていうところは全部、
その後そこの自分の思いは共通なんですよね。
共通でそこの共通なものは変わらずでやはりそのタイミングごとでの、
こうしたい、したいっていうまたそこに自分でベースがある中のストーリー作りを作っていったっていうのでやっぱり話が進められますよね。
今もまだ全然その話が続けられるって感じ。
田中 愼一
ストーリーとしてのいわゆる完成度っていうのはかなりすごいですね。
高木 恵子
どうなんですかね。
本当に死ぬまでずっとブレない一つの共通点とか軸があるからそこでガラッと変わってそこからは後やっぱり自分でストーリーを。
その世の中の動きとかやっぱり自分の環境に合わせてやっぱり作っていってるけどベースが変わらないっていうのは
そのIBMからこのPR業界に変わった大きなやっぱり。
田中 愼一
ベースが変わらないっていい言葉ですね。
高木 恵子
って言ってなんかまだ現在進行形みたいな感じでストーリーは続いてると。
田中 愼一
素晴らしい。軸線がつながってるんだ全部。やっぱりつながりなんだ。思いのつながりじゃないですかそれ。
高木 恵子
そうだからあえて自分でそうしてるのか、なんかもうそのそういう癖がついてるのかもしれないですよね。
田中 愼一
癖ですね、癖、癖。
キャリアの学び
高木 恵子
生活をする人生を送るっていう中で、思考回路がきっとそういう考え方で毎日を過ごしてるような気がします。
田中 愼一
それ完全腹落ちしてるって感じですよね。
高木 恵子
そうかもしれない。
田中 愼一
癖までなったら完全にね、僕なんか講座なんかでしょっちゅうコミュニケーション意識しろ意識しろって全部説明すると、
えーこれいちいち意識しなきゃいけないんですかって必ずくるんですよ。
そうだと、これ癖になればいいんだよっていう。
意識しなくても使えるようになるよっていうのはよく言うんだけど、
やっぱり癖になった瞬間にもはや自分ごとがパーフェクトに腹落ちしたって感じ。
中川 浩孝
本当に職業病だなって思うことありますもんねやっぱり。
なんかそれこそインタビューみたいなこととか記者会見とか見ちゃった時に、
あーこんなこと言っちゃうんだとかそういう風に見ちゃう。
その見方ってすごい嫌だなって思うんですけど。
田中 愼一
でもそれはね、やっぱり重要な感覚感度で。
高木 恵子
そうですね。
中川 浩孝
感じちゃうのでもうしょうがないですよね。
田中 愼一
感じるってのが一番自然なんですよ。
考えるよりも感じる方が、圧倒的に人間にとっては親しみがあるはずなんですよね。
中川 浩孝
そうですね。それはあれですね、確かに。
田中 愼一
ヒロちゃんの場合はどうなんですか?
中川 浩孝
僕の場合はどうなんですかね。
なんかそういう風に聞かれると浅いなってちょっと思っちゃったんですけど、
私は自分が好きだと思える、やっぱり社会がこれから良くなりそうだとか、
もっと世界が良くなりそうだ楽しくなりそうだみたいなことに興味が湧くので、
そういうサービス製品を提供しているような会社に何かしらお手伝いがしたいなと考えていて、
それが自分で言えばマーケティングであったりとか、
プロダクトマーケティングだったりとか、
そういった形で参画することも多いと思うんですけど、
いくつか失敗はしているので、そこからいろいろ気づいたことはあるんですけど。
田中 愼一
失敗ってどういう失敗ですか?
中川 浩孝
例えばそれって、私の3つ目の会社ってすごく短い会社があるんですけど、
普通は2つの会社で、自分が非常に情熱を持てるような製品とかサービスを売っている会社で2つ働いて、
10何年働いたのかな、2つ合わせると。
なので、それなりに経験も積んできたつもりになっていたので、
給料さえ良ければ、ある程度自分がすごくパッションを持てなかったとしても、
やっていけるかなって思ったんですよ。
田中 愼一
なるほどね、わかった。
中川 浩孝
結局やっぱり全然パッションが持てずに、もうダメだってすぐ息切れしちゃったというか、
この会社では続けられないんだ、自分はこの会社で働きたいって本当に思わないってすぐに発見してしまったので。
田中 愼一
ちなみにどのくらいいたんですか、その期間。
中川 浩孝
4ヶ月ですね。
田中 愼一
4ヶ月すごいな。
中川 浩孝
もうちょっと入った日にっていうくらいの勢いで、ダメかもしれないって思ったので。
なので、プロフェッショナルとしてはどうなのかなって思うんですよね。
マーケティングのプロフェッショナルだったら、いかに売れないものを売れるようにするかとか、
自分が好きじゃなかろうと、やっぱりその製品にパッションというか情熱を傾けて、
やっぱり売れるようにするっていうことがあればいいなと思うんですけど、
やっぱり自分が好きにやっぱりなれないっていうか、
いくら職業でそれを自分がやることになっても、やっぱりそこに興味が持てなかったっていうのは、
自分のプロフェッショナル度のちょっと低さかなって、その時は思ったんですけど。
だからこそ、自分はそういうふうにパッションが持てないっていうことがわかったので、
自分が素直に好きだって思えるようなこと、興味が持てることじゃないと、
やっぱりやっていけないんだなっていうふうに思ったっていうのは、その時の学びだったので、
それ以降はそういうことには手を出さないことにしているので、
逆に言えば非常に早い段階でそれを知れたのは、もしかしたらよかったのかもしれないですね。
現実とのギャップ
田中 愼一
それはいいですね。
自分が売ってる商品やサービスに対してパッションを持てるか持てないかって、僕すごく重要だと思ってて。
僕がホンダに入ったときはやっぱりそのパッションで。
はっきり言って、実際ホンダのシビックを乗ってたからっていうこともあるんだけども。
あと僕の場合はもっとご縁があったんでね。
例えばローディションに行ったときにホンダに救われたっていうかね、経験もあるし。
うちのいとこが1人2人3人、僕以外に3人もうすでにホンダに入ってたというですね。
ご縁もあったんだけど、やっぱり商品が好きだったですよね。
これは本当に他の日産トヨタよりも全然違うぞという感じで。
それがやっぱり一つの起点っていうかあったから、
やっぱりその売ってるものに対するパッションっていうのをやっぱり持ってたのは非常に重要だと思いますね。
ただ一方で、僕は入社するときに必ず何でもやりますっていうことを言うわけですね。
実はうちにホンダの採用候補の方がいらっしゃって、
いわゆるかつてホンダを受けたことがあるっていう。
基本的には受かったということで、ただ辞退したと。
なんでって聞いたら、ホンダの方から何でもやれますよねって言われて。
いや何でもって言われちゃうとね。別に他のところもないって聞いてたんで。
そっちの方に行ったっていう話をちょっと耳にしたんですね。
なるほど、そういうふうに考えるのかっていう。
ここで人の考え方の筋っていうのが見えてきて、
会社から何でもやりますねって言われたときに、えーってなる。
ある意味さっき言った、この商品は好きで僕はホンダに入ったっていうのは、実は似たメンタリティなんだろうなというふうに思うと。
これは僕も理解できると。
ただ一方で僕みたいに、実際何でもやりますってこっちから言って、何でも来いって言うのも、実はもう一方のメンタリティで。
どっちかがどっちってことじゃなくて、違うメンタリティっていうか、人間はその両方を持ってるわけですよ。
僕の後半の何でもやりますっていうふうに、何でずっと一貫して言い続けてるのかと。
もちろんホンダに入るときはまだ学卒だから、経験ないから何でもやりますってのはまだわかるんだけども。
世界に行ったときはもうはっきり言って40ですからね。
そこで何でもやりますっていうのはバカかと思われるくらいに。
なんだけども、そこの裏にある発想っていうのは、何でもね、所詮は何でも来いと。
ストーリー作りゃいいんだろって。
自分に納得するストーリー作りゃいいんだろと。
単にそれはもう完全思い込みの世界だよっていう、一見悲観主義というか。
だから何が来ても、そのときに新たにストーリー作って、自分が納得するストーリー作りゃいいだけの話で、
ストーリーなんてはっきり言って何でも作れるんだから、所詮ストーリーだからっていう。
そういうのが今話を聞いてて、そうかと。
だからそれも一つの考え方なんだけど、両方のバランスなんでしょうね。
自分が好きなものを売っていきたいっていうところを軸にするのか。
そうじゃなくて、どんなものが来てもストーリー作れるんだから。
それで自分は元気になって抑えればいいんだろうっていう。
この2つっていうのを、そこが結構人生の面白さっていうところなんじゃないですか。
中川 浩孝
確かにそうですね。
田中 愼一
ホンダ入ったときはもうまさにこれっていう思い込みがあって。
で、入ってびっくりしたんですけどね。
現実とのギャップに悩まされるって。
でもその中から自分のストーリーをまた編み出してね、それに適応したってこともあるんで。
だから要は両方必要なんでしょうね。
エミー賞受賞作品の考察
中川 浩孝
そこは適応力っていうか、そこでアジャストしていくっていう能力もすごく求められると思うんですよね。
田中 愼一
求められるってことになるでしょうね。
ただやっぱり、正直言うと自分のやりたいことをやるっていうのが一番正しいことで。
やりたいっていうのがどう作られたかは、本当にその商品が好きなのか、
あるいは僕みたいに何でもいいから適当に思い込みっていうストーリーを作って、
それで適当にこうやったのかっていうかね。
それはどっちでもいいんですよ。
それがいずれにしてもどっちも自分なんで。
だから自分に素直になるっていうのが一番いいんでしょうね。
高木 恵子
そうですね。
中川 浩孝
大切ですね。
高木 恵子
そう思います。