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2024-09-23 10:00

heldio #65. なぜ mayn't とは言えないのですか?

#英語史 #英語教育 #英語学習 #助動詞 #否定 #省略
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おはようございます。英語の歴史を研究しています、慶応義塾大学の堀田隆一です。
このチャンネルでは、英語の先生もネイティブスピーカーも辞書も答えてくれなかった英語に関する素朴な疑問に、英語史の観点からお答えしていきます。
毎朝6時更新です。ぜひフォローして、新しい英語の見方を養っていただければと思います。
今回取り上げる話題、素朴な疑問は、なぜ mayn't とは言えないのですか、というものです。
大抵の助動詞は、ノットを後ろに付けて否定形を作るわけですが、これが包まって、nとなって、
助動詞自体とドッキングして、短い発音があります。can に対して cant ですし、should に対して shouldn't です。
must に対して mustn't であるとか、ちょっと変わり種ですが will に対して won't というふうに、
大抵この短い省略された形っていうのがあるものだと思うんですけれども、
この may に限ってはそれないんですね。少なくとも文法上ですね、
mayn't とは言わない、may not と言うんだっていうふうに習うかと思うんですよね。
なぜこれ mayn't と言えないんだろうか、というのが今日の話題です。
まず発音上言いにくいというような理由、根拠というのはありませんね。
ain't っていうのがありますし、これ自体も非標準的であまり使われないんですが、
それはまた別の理由、社会言語学的な理由で使われないというか、標準では避けられる傾向があるということなんですけれども、
決して mayn't これ言いにくいという理由で形が存在しないというような議論はできないと思うんですよね。
じゃあ何でダメなんだろうかと。これ結果を言うと、よくわからないと言えばわからないんですけれども、
少し考えるヒントみたいなものは歴史を紐解くとわかってくるんですね。
この mayn't なんですが、じゃあ絶対にないかと言うと、絶対にないわけではないんですね。
例えば Oxford English Dictionary によりますと mayn't というのはちゃんと立てられていてですね、見出しに。
ただし colloquial now rare とあります。つまり交互的で今では稀であると。
さらに rare in all varieties of English。
すべての英語の編集において、つまり標準語だけでなく様々な方言ですね、世界的に使われている方言でもやっぱりレアではあると。
全然ないとは言わないけれどもレアであるということなんですね。
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実は歴史的に見ると、この種の素朴な疑問にはよくありがちなことなんですが、歴史を紐解くと結構あるよということになるんです。
実際この mayn't というのも歴史をたどると、かつて使われてきたというような痕跡はしっかりとあるんですね。
かつてと言ってもですね、近代英語ぐらいまで遡って今回は考えてみたいと思うんですが、
例えば Milton ですね。イギリスの Milton 作家が1631年にですね、
If I mayn't carry, sure I'll nail be fetched のように、I mayn't というふうに使っています。
これがこの柔軟性域の例がですね、最も早いタイプなんではないかと思いますね。
この時代からの大型のコーパスですね。これを調べてみると、この mayn't は普通に出るわけなんですが、
この mayn't はどれくらい使われていたのかというと、やはりですね、
使われたと言っても常に少数派、マイノリティで非常にひかげものの存在として使われてきたということはよくわかるんです。
その中でも比較的、よくではないんですけれども、使われたのが17世紀後半あたりでは、
86例がありますね。これ86例と言ってもですね、
mayn't の方はどれくらいかというと、11,020例なんで、もうものの数に入りません。
パーセンテージで言うと1%ぐらいで、ほとんど使われないということがわかりますね。
あるにはあったかもしれないけれども、やはり現代と同様ですね。
あったとしても歴史上でもやはりレアだったということは間違いないようなんですね。
またですね、18世紀、19世紀あたりをカバーする、また別のコーパスを見てみますと、
取り上げているジャンル、含まれているテキストのジャンルとか、いろいろな事情によるんでしょうけれども、
もうちょっと出てくるんですね。18世紀、19世紀あたりだと割と出てきていて、
特に19世紀後半だと、1対10ぐらいの割合でmayn'tが使われています。
これでも結局11分の1ですから、マイノリティには違いませんね。
やっぱり一般的ではないということは間違いないと思います。
近代のアメリカ英語なんかでも、多少ですね、19世紀後半に使用が増えているということなんですが、
増えていると言っても前の時代から比べればということで、
全体的には、絶対的にはですね、やはりmayn'tの影で、ほとんど影が薄いというのが実態です。
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全然なかったわけではないけれども、歴史的にも、やはり非影物であったことはどうも間違いないようですね。
このような状況が19世紀ぐらいまでなんですが、20世紀になって、タダでさえ少なかったものがさらに激減します。
そして今ではですね、基本的に使わないんだというふうに言われるぐらいにまで、事実上ゼロと言いますかね、のような形になってきているんですけれども、
今まで歴史的にも非影物だったものが、20世紀にとりわけもっと非影物になって、事実上ゼロに近くなったのは何でなのかと。
これは現代の話題として面白いと思うんですね。
もともと頻度が低かったものが、さらに頻度が低いというのは、じゃあ20世紀に何があったんだろうかということになります。
これについても、よくわからないと言えばわからないんですけれども、一つヒントとしてはですね、そもそも20世紀は、
メイントとかメイノットだけでなく、メイそのものが使われなくなってきているんです。
このメイという助動詞そのものが、実は頻度をグッと下げてきているっていうのが、この英語史を全体として見るとですね、この20世紀際立っているんです。
メイの、つまり完全に衰退期に入っている。
肯定形のメイですら衰退期に入っているわけですから、当然ですね、メイノットだって衰退してるし、メイントなんていうのはもう救いようのないぐらいですね、
少数派というかほとんど使われなくなるっていうのも、これは理にかなったことではないかと思うんですね。
じゃあ何でメイ自体が、そもそも使われなくなってきているのかというとですね、
このキャンで代用できるってことが多いんですよね。
例えば、めあいっていうような決まり文句で大体覚えるわけですね。許可を求める時ですね。
何にしてもいいですかっていうことなんですが、非常にこれ堅苦しいんですね。
そもそも許可を求めるっていうのは口語というか、会話の中で出てくるものなんですが、このめあいというと堅すぎるので、
それはキャナイであるとか、その他の言い方に置き換える傾向があって、メイというのがそもそもめあいで出なかったらもっと出ないわけですよね。
で、かもしれないという意味のメイはもちろん、少し堅いですが使われることはあるんですが、いわゆる許可の意味でこのめあいなんていうのは激減しているっていうのが現状ですね。
堅すぎるので、もうちょっと柔らかいキャナイぐらいで言い換えることがどんどん多くなってきている。これが一つの理由ですね。
それから、例えば、You mayという言い方も、これ高圧的なんですね。
You canというふうに相手に何々をすることを許可するっていう場合は、You mayって言うと非常に損害で、自分が書く上であなたは格下だというニュアンスをですね。
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ズバリ伝えてしまうのがメイっていうことで、この平等主義の時代と言いますかね。
においては、このメイという高圧的な助動詞はそもそも人気がなくなってきているという、これは社会の変化っていうこともあるかと思うんですよね。
ということで、このメイ自体の頻度が激減している。
そうであれば、その否定形だって激減するし、そもそも最初から日陰物であってメインとなんていう形もですね。
ゼロではなかった、あったことはあったんですが、ますます今では使われなくて、事実上覚えなくても良いぐらいに使われない存在になっている。
そういうことだと思うんですね。
それではまた。
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