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2024-05-23 25:58

読書ラジオ『賢者の愛』山田詠美/『痴人の愛』谷崎潤一郎⚠️ネタバレ含

いつも聴いていただきありがとうございます。
今回も勢いよく長めに話してしまいました…
なにに興奮しているんだかw

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(配信の冒頭部分は本の説明文・あらすじを読み上げています。)

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00:06
こんばんは、ゆうこです。このチャンネルでは、私の読書ログや日々の学びを音声配信しています。
今日は、山田詠美さんの『賢者の愛』について話してみようと思います。
幼い頃からの思い人、領一を奪った親友のゆり、2人の息子にナオミと名付けた日から、真由子の復讐が始まった。
21歳年下のナオミを調教し、自分一人のための男に育てる真由子を待つ運命は。
谷崎潤一郎⚠️痴人の愛に真っ向から挑んだ話題作、解説は、ゆずきあさこさん、ということで。
ちょっとあらすじを読みながら笑ってしまったんですけれども、なかなかすごいパワーワードがありましたね。
思い人を奪われ、復讐を始める。
21歳年下のナオミを調教し、自分一人のための男に育てる。
これがすごいんだな。
21歳年下のナオミを調教し、自分一人のための男に育てる。
マジか。尋常じゃない復讐心ですね。
なかなか理解し難い強い思いだなと思いますけれども、
これを一気に読んで、面白かったんですよね。のめり込むように読んでしまって、
ラスト、最終章とその前にかけてから、
ずっとですね、私これラストを通勤中の電車で読んでたんですね。
本当電車でね、ブックカバーもせずに賢者の愛を読んでいるアラフォーの女の人がいたらちょっとゾッとしますよね。
まあそれはいいとして、電車で立ちながら読んでいて、最後ですよね。
読みながら、足首からふくらはぎを通って背中を伝って、後頭部の首の付け根あたりまでずっと誰かにずわわわとなぞられているような、
すごいゾクゾクして、微弱電流が走り続けているような感じ。
でそれがですね、なんか人の気配のようにも思えるぐらいの、なんかすごい嫌な感じ、背中に感じる。
03:07
ずっとそう、後ろからね、誰かに見られているような、誰かがいるような気配で、さらにゾクゾクしてました。
私にとってホラーなんですね、この小説はね。
いやー、すごい面白かったですね。
で、谷崎寿一郎の知人の愛というね、話がありますよね。
これを下敷きにしているということで、今回賢者の愛を読むにあたって、私はまず知人の愛を読みました。
こちらは初めて読んだんですね。
なぜならもうあんまり、こういう内容、興味がなかったというか、ちょっと気持ち悪いかもしれないって思ってて、ずっと読む気がなかったんですけれども。
これはあらすじを読んでみると、知人の愛は将来美人確実の家出娘に一目惚れし、
同居生活に持ち込んだ僕、ジョージ。
洋服、食事、習い事、欲しがるものは何でも与え、一流の女に育てようとしたが、いつしかあいつは僕を完全に支配下に置いていた。
僕の可愛いナオミちゃん、お前を崇拝しているのだよ。
独自の悪魔主義的作風が一気に頂点へ極まった傑作。
こっちもこっちで、なかなか笑っちゃうところとかありましたね。
一回り以上年上のおじさんが、十五六の娘を育ててあげようと思いながら、裏では小鳥のように囲って、あわよくばめでてやろうみたいな。
やっぱり私こういうの女性視点で読んじゃうから気持ち悪いって思うんですかね。
パパですよね、パパね。
大正時代の言い回しがそのまま書かれているからかもしれないけど、
30歳過ぎたおじさんがですね、十五六の娘に、ナオミちゃんちょっとここへおかけとかね。
どうだねナオミちゃん、ナオミちゃん、ナオミちゃん、ずっと言ってるんですよ、ナオミちゃん。
最後の方にはですね、立場が変わって、ナオミにも支配される奴隷のようになっていくジョージなんですけれども、
それもなんだろうなと思いながらも、でもね、このジョージさんはずっとね、なんか幸せそうなんですよね。
06:06
これがこの人が求めている欲求なんだろうなと思った。成立してるんだろうなと思いましたね。
なので、谷崎純一郎の知人の愛、ジョージは本当に知人だなと思ったし、
盲目でナオミに比例風しているその様っていうのは、最後の方はですね、どんどん確立されていって、
そういうジョージの持っていた一面をナオミが引き出したのか、2人の関係性がお互いのその連続関係、
SとMっていうんですかね、支配する喜び、される喜びみたいなのを引き出し合ってしまったのかもしれない、なんて思いながら読みましたが、
三島由紀夫にして、この谷崎純一郎というのは、日本の敗戦をなぞってこんな風に言われているそうです。
日本の男が白人の男に敗れたと認識してがっかりしている時に、この人、谷崎一人は、
日本の男が巨大な乳房と巨大な尻を持った白人の女に呼べれたという、喜ばしい感動的構図として敗戦を眺めていた。
やっぱりこう、一風変わったエロの感覚を持っている人なんでしょうね。変わっているのかどうかわかんないけれども。
谷崎純一郎っていうのは、白人の女性だとか、欧米に対する憧れを持っていたと同時に、そうではない自分だったり自分の見た目、英語が喋れない自分みたいなものにすごくコンプレックスを持っていたんですよね。
そのコンプレックスが発揮されてしまったのが、この知人の愛で、谷崎が自分を投影したのが主人公のジョージであって、ジョージも欧米に対するコンプレックスをすごく強く持っていて、それを違う形で解消しようとして直美を囲い始めた。
そんな風に言われていて、それは賢者の愛の解説の雄月浅子さんの文章にもそのように書いてありました。
なので、私にとってすごく面白いというか、気味が悪い面白さみたいなものがあった知人の愛、賢者の愛なんですが、感想を語ろうとするとなかなか言葉が出てこなくて難しいところがあるので、解説の雄月浅子さんの内容を補助線にしながらちょっと喋ってみようかなと思います。
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話は戻りまして、賢者の愛の方ですね。これはですね、真由子が百合に復讐する長い長い復讐劇。それは単なる復讐劇ではないということなんですよね。
百合は真由子に対して、真由子がずっと好きだった領域を奪った。それを知ってて奪った女なんですね。
真由子はついに百合に復讐をしてやろうということで、百合に子供が生まれた瞬間に名付け親として直美、男の子だったんですけど直美と名付けて、これを知人の愛の直美のように、
私がこの赤ちゃん、生まれたばっかりの男の子直美を自分の一人のための男に仕立てることで、百合に復讐をしてやろうと思ったわけですね。
ただ、谷崎の知人の愛。
ジョージは最終的には直美に冷蔵庫に置かれてしまったと、自分がひれ伏す立場に逆転してしまったが、私はそうならないということで、真由子は
私は知人の愛ではなく、賢者の愛なんだというふうに言うわけです。それがタイトルにもなっている賢者の愛なんですね。
百合は真由子から思い人両一を奪う以外にも、他にも真由子の大事なものを奪っているわけですね。
それが真由子の尋常じゃない復讐心に火をつけてしまう。
二十何年にわたる復讐劇に火をつけてしまうんですけれども、
百合はそうやって真由子から奪い続けているようでいて、自分の手元には残せていないわけですよね。
結局、いろんなものを百合は失っていくわけです。
奪ったものを自分の中に抱えて大事にしておくということができない。
人が持っているもの、真由子が持っているものは何でも欲しくて、ちょうだいちょうだいって言ってしまうんだけど、
手にしてしまった瞬間に大事にすることができなくて、どんどん手からこぼれていくみたいな。
百合子ってすごい嫌な女だなって思うんですけど、
追い立ちもすごく語られたりするんですが、そういうところを見ると同情してしまうというか、
百合にも百合の事情があるんだなというのも垣間見えてきてですね、
一本的な真由子の復讐劇が繰り広げていくというよりかは、
12:02
複雑な関係性の中での二人の女性の苦悩みたいなふうに見えてきます。
そういうふうに見えるとですね、知人の愛でジョージとナオミがお互いのS家とM家、
支配する喜び、される喜びをお互いに引き出し合っていたような関係性が、
真由子と百合にも投影されているのかなという部分もあって、百合は奪い続ける。
真由子は奪われてから自分がじゃあどうするかということで、自分をどんどん変えていくんですよね。
そうやって憎しめ合っているかもしれないが、ある意味ではお互いを結果的に成長させ合っている。
なんかその辺がすごくシニカルだなというふうに思いました。
知人の愛が下敷きだとしたら、知人の愛に出てくるジョージですね。
西洋への憧れがありつつもコンプレックスが邪魔をしていて、少女ナオミを小鳥のように囲い育てることで、
その自分のコンプレックスを消化させようとする男なんだけど、ナオミの美しさだとか、魔性に奴隷化してしまう。
このジョージが増えされているのがユリであり、ユリが抱える真由子へのコンプレックスが真由子のことを奪うということに繋がっていく。
一方知人の愛のナオミは本性不明で、いつからかジョージを馬扱いし金鶴扱いし奴隷化していくという女なんですけれども、
本当にダンスとか男とかオシャレで遊ぶ。これが後年の真由子なのかなと思いますね。
そういったことがゆうずきあさこさんの解説にも書いてあって、解説の中で唸ったのは、ユリが戦っているものがあるということですね。
ユリは、ちょうだいちょうだいって言って真由子からいろんなものを奪っているようでいて、
ユリは過不調性と戦っているんだと、そこに真由子を巻き込んでいるんだというのがゆうずきあさこさんの読み筋ですね。
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真由子っていうのは、裕福な資産家の家に育って、いい父親、いい母親がいて、
すごくセンスのいい家に住んでいて、優雅な暮らしをしているわけです。
そこに隣に引っ越してきたユリの家っていうのは、ある意味成金で、
そういったもう代々資産家の家の人たちからすると、急に成り上がってきてお金の使い方も知らないし、
大事なものを使い続ける、見抜くっていう神秘感も持ってない、ちょっとバカにされるわけですね。
それ自体がユリの一家のコンプレックスにもなっているわけです。
真由子の家は、日本古来の父親が大黒柱で優しいんだけれども、みんながナチュラルにそれに従っている一家であって、
ただユリの家は、一家崩壊しているというか、ユリの下に弟が二人いるんですけれども、
両親は育児をしようとせず、お金だけを入れて、家の中はもうしっちゃかめっちゃか、
見栄えだけで作った庭のプールももう錆びてしまっているとか、
そういうユリはですね、自分が置かれた環境、男が支配して、女子供はそれに従わざるを得ないみたいなところで、
やっぱり苦しさを抱えていて、ただ子供の自分、女の自分ではどうすることもできない。
そんな世界から隣に見える家の真由子は、同じ家父長生の家庭に生まれながらもあっちは幸せそうにしていると、
そういうところがユリの行動につながっていくのかなと。
そしてユリはですね、真由子を男の支配から守るために領域を奪い、また別のものを奪い、
そして最終的には自分の子供であるナオミを差し出している。
そんなふうに見えてきます。
真由子はですね、日本古来の家父長生の家に育って、何の疑問も持ってないわけですよね。
初恋の男だとか父親に守られながら慈しまれて生きているということを疑わない女なんです。
実はそのユリ子がこうやって自分の戦いの中に真由子を巻き込んでいくことで、
18:01
真由子も自然とこの男の支配からどんどん解き放たれていっているという事実が見えてくる。
ゆずき朝子さんの解説で、この小説の見方がまたガラッと変わったなというところでした。
そして不気味なのがですね、領域ですね。
領域は小説家なんですけれども、真由子の気持ちを知っていながらもユリのアプローチに流れてしまって、
子供を作ってしまって、そこから編集者として働く真由子と小説家という形で付き合いを始めるんですけれども、
この領域がすごく不気味でですね、もしかしたらこの領域の視点、観察者の視点というのは山田恵美さん作者自身なのかなというふうに思いました。
そういうふうに見えてきた時に、これは私の勝手な妄想なんですけれども、このユリと真由子の2人の関係性、真由子の復讐劇、
21年にも渡る赤ちゃんで生まれたナオミの長居、マインドコントロールですね。
自分一人のための男に仕立てていくという、鬼畜のような復讐劇を仕組んだのがもしかしたら領域だったとしたらみたいに考えると、
これさすがにホラーすぎるなと思うんですが、もう本当にナオミが生まれる前から、
領域がそのユリが自分の方に向かうことを仕向けることだとか、もう一つユリが真由子から奪うもの、
それすらも含めて領域が仕込んでいたとしたら、これまた違った見え方になるのですごく面白いなと思います。
ユリを洗脳し、真由子に憎しみを持たせ、そしてそこに自分とユリの子供であるナオミを与えて復讐させる、
それを観察して小説にする領域だとしたら、これはまた面白いんですけど、そんなことはどこにも書かれてないわけです。
読んだことがある人、これから読む人、いろんな解釈ができるというか、いろんな妄想が膨らむ問題作だと思うので、
その辺もちょっと楽しみながら読んでいただければなと思いました。
最後ですね、私が持った感想としては、人っていうのは何を守るのか、何と戦うのかみたいなことはすごく意識していて、
21:14
特に自我がしっかり確立されて、20代30代以降っていうのは自分の時間だとか命を使って何を守り、何を戦うのかみたいな、
何をやり遂げるのかっていうことにすごく意識を持って取り組んだり考えたりするわけですけれども、
この知人の愛とか賢者の愛によって改めて思わされるのは、そんなことではなく、人はどの欲に従うのかというものが実は最も人の人生を左右するものなんじゃないかなというふうに思ったということです。
自分を満たしてくれる欲かどうかに関わらず、人は欲求の前には無防備というか、自分の欲には勝てない欲があるということをしっかり自覚しておかないと、人生が転落していくことになるのかなと思ったりするんですよね。
欲とか欲求っていうのは執着とも言い換えられるかなと思います。知人の愛だと、ジョージはナオミの美しさに執着してしまった。
この賢者の愛では、ユリはマユコが持っているものに執着し、マユコはユリに執着して復讐するという、自分の人生の20何年間かを棒に振ってしまったわけですね。
なので、マユコはユリに執着して復讐する親友の息子、自分を裏切った親友の息子を自分の奴隷にすることで得られる優越、若い男をマインドコントロールしているという優越、そういう欲から逃れられなかったというのがマユコのことなんだろうなと思います。
なかなかこの本を読んで自分の人生に何か変化が生まれるかとか、価値観が変わるかって言ったらそうではないと思うんですけれども、改めてそういう人間の欲、執着でそこから生まれる業みたいなものに身を震わせるような小説でしたね。
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最後に賢者って何だろうなってことですね。
昔よく絵本とかで読んだ賢者の贈り物ですね。
ご存知の方いらっしゃるかと思いますが、クリスマスのプレゼントに恋人同士がお互いのために自分の一番大事なものを失ってでも相手のためにプレゼントするお金を作ろうとしてプレゼントすると。
で、それがすれ違ってしまうんだけど、そのものじゃなくてお互いを一番大事だと思いやるその行為が賢明だと言われる賢者の贈り物っていう絵本があるんですけれども、そこで使われている賢者とこの賢者の愛は全く違うものだなと思いますね。
その辺をこう、皮肉っているところも山田衣美さんの小説のタイトルの素晴らしいところなのかなと思います。
両一がね、すごくずるくて嫌なやつなんですけども、私はこの中に出てくる登場人物のうち誰かなって言われたらこの人かもしれないなと思いました。
欲とかね、コンプレックス、執着ってほんと厄介だなと思います。
ということで今日は山田衣美さんの賢者の愛について話してみました。
この配信が気に入っていただけたら、いいねやコメント、フォローお願いします。励みになります。
今日も最後まで聞いていただいてありがとうございました。
ではでは。
25:58

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