SCP-834-JPの特性
スピーカー 1
アイテム番号 SCP-834-JP オブジェクトクラス ユークリッド
スピーカー 2
特別収容プロトコル SCP-834-JPはクッション製の壁に囲まれた小型生物オブジェクト用の収容室に収容されます。
スピーカー 1
SCP-834-JPとの接触はできる限り避け、部屋の清掃はDクラス職員を用いて行ってください。
SCP-834-JPと接触した職員は本人の意思に関わらず記憶処理を受けなければなりません。
スピーカー 2
収容室から SCP-834-JPが壁に体を打ち付ける音が聞こえることがありますが、保安上の問題はありません。
スピーカー 1
説明 SCP-834-JPはウサギを簡略に申した体長約15センチメートルの雪像です。
スピーカー 2
検査により SCP-834-JPを構成する雪には主成分である水の他に微量のアルコールが含まれていることが判明しています。
SCP-834-JPは人間に対して有効的で、人間を発見すると小さく飛び跳ねながら接近し、積極的に交流を図ります。
SCP-834-JPはウサギ類に類似した鳴き声を有し、主にこの鳴き声を通して人に対し感情の伝達を試みます。
また感情の伝達方法には鳴き声以外にも大きく飛び跳ねる、涙を流す、天髪をするなどがあります。
人間がいない環境下にあるSCP-834-JPは落ち着きを失い、収容室内を走り回る、壁に体を打ちつけて収容環境下からの脱出を試みるなどの行動を起こします。
SCP-834-JPの非力さゆえ、この行為は収容設備の破損をもたらしませんが、SCP-834-JP自身の損傷を伴います。
SCP-834-JPとの接触は接触者の精神状況の好転をもたらします。
Dクラス職員を用いた実験においては、1週間の連続的な接触により鬱症状の改善が見られました。
スピーカー 1
また、SCP-834-JPからの隔離後も効果は失われませんでした。
ただし、SCP-834-JPとの接触後長期間強い個人差がありますが、経過すると接触者の精神状況は悪化します。
スピーカー 2
SCP-834-JPとの長期かつ密接な接触は悪化を早めます。
この悪化はSCP-834-JPとの接触に関する記憶を処理することにより防ぐことができますが、これは同時にSCP-834-JPの精神治療効果を無効にする行為です。
スピーカー 1
SCP-834-JPは民間の心理カウンセラーである鈴木氏の自室で発見されました。
SCP-834-JPの治療効果
スピーカー 2
以下の文書群はSCP-834-JPの確保時発見されたものの一部です。
治療経過などの詳細な文書の一覧は添付のSCP-834-JP関連文書一覧を参照してください。
スピーカー 1
お元気ですか?突然押しかけてびっくりさせてしまいましたね。ごめんなさい。
でも今そこにいるその子はとっても優しい子です。時々失敗する不器用なところもありますが、一生懸命あなたのために頑張ってくれるはずです。
ですからどうかこの子が帰り道を思い出すまで一緒にいてあげてください。
最初は少し大変かもしれませんが、少し経てばきっとあなたもこの子のことを好きになってくれると思います。
スピーカー 2
そしてもしその子が道を思い出したときは、その子と一緒にぜひこちらを訪れてくださいね。
名庭外より愛を込めて。
メモ帳の記述。突然現れたウサギ?何これ?
スピーカー 1
クライアントさんが反応を示したので貸し出すことに。
鬱の改善に効果あり?アニマルセラピー的な?
今持っているクライアントさんたちにアニマルセラピーとして実験に協力してもらう方法は貸し出しが一番効果がありそう。
スピーカー 2
同業者に知られないように情報管理しっかり。
スピーカー 1
臨床実験記録、抜粋。
被験者、須田さん。症状、軽度の鬱病。
スピーカー 2
待余期間、10日。結果、感知。
スピーカー 1
被験者、神田さん。心的外傷後、ストレス障害。
スピーカー 2
期間、13日。結果、肝炎。
スピーカー 1
病気の症状が軽減またはほぼ消失し臨床的にコントロールされた状態。
治癒とは異なる。
スピーカー 2
感知ではないけど、まあ、良好になったよってことか。
被験者、西菜さん。全般性不安障害。12日間の貸し出し。結果は、感知。
スピーカー 1
木戸さん。重度の相鬱病。29日間の貸し出し。結果は、感知。
スピーカー 2
前田さん。乖離性健忘。11日間の貸し出し。結果は、感知。
スピーカー 1
メールデータ、日付。2015年9月5日。
SCP-834-JPの問題点と考察
スピーカー 1
from to 鈴木陽介。
臨床実験の結果、拝見しました。
スピーカー 2
結論から申し上げますと、この試みが実際に行われているのならば、それは中止すべきです。
スピーカー 1
確かに治療の結果は常に素晴らしいものであるように見えます。
私は未だにこれを信じることができていません。
しかしそれこそが第一の問題です。
我々のカウンセリングという仕事は、クライアントに対し様々なアプローチを取らなければなりません。
一口に心の病であると言っても、その種類は多種多様です。
体の病がインフルエンザや肝硬変など多様であるのと同じで、そして肝硬変にタミフルは効きません。
ですから逆にここまでの成果は異常です。
スピーカー 2
第2の問題ですが、被験者の問診票に学習性無力化に近い傾向が若干見られます。
スピーカー 1
現在はそれほど大きな影響のあるものではありませんが、これは熟慮すべき傾向です。
最後にもう一度、しつこいようですが、この試みの中止を提案します。
スピーカー 2
目先の利益に惑わされぬよう深くお考えください。
日付2015年9月7日 from 鈴木陽介 to
スピーカー 1
ご中言ありがとうございます。
治療法に賛同しない先生
スピーカー 1
せっかくのご意見ですが、私はこの治療法をやめるつもりはありません。
先生は聡明な方でした。
常に新しいことを求め、過去のくだらない束縛にとらわれることはありませんでした。
しかし残念ながら、それはもはや過去のことのようです。
先生ならばこの新たな治療法に賛同し協力してくださると思っていましたが、
スピーカー 2
それは私の勝手な期待でした。
スピーカー 1
目先のことにとらわれるなと言いますが、私は未来を見ているのです。
もしこの治療法が確立されれば、様々な病を治すことができるのです。
それこそ心理学の発展ではありませんか。
私に手出しはしないでください。
私も独立した事業者です。
そして、やっていることはあくまでアニマルセラピーです。
スピーカー 2
あなたが業務を妨害するというのなら、法は私の味方です。
鈴木氏の実験の失敗
スピーカー 2
鈴木陽介
スピーカー 1
実地運用記録 最新5件
被験者 金田さん
スピーカー 2
症状 対人恐怖症 10日間の貸し出し 結果は勘知
小野さん 心的外傷後ストレス障害 14日間の貸し出し 勘知
スピーカー 1
佐藤さん 不安障害 16日間の貸し出し 勘知
西田さん 脅迫性神経症 13日間の貸し出し 勘知
スピーカー 2
木戸さん 重度の鬱病 19日間の貸し出し 結果は自死
スピーカー 1
音声記録 録音開始
あー、録音できているかな。よし、大丈夫。
うん、あー、こんにちは、鈴木です。
私は相談室を閉めて、これからあのウサギと一緒に生活を始めます。
スピーカー 2
これからはこの実験が終わるまで他の人に会うこともないでしょう。
スピーカー 1
とにかく、まず私は失敗しました。
今になってみれば、あの中言を聞いていた方がよかったと思います。
スピーカー 2
沈黙 まあ、今更言ってもどうにもならないですが。
スピーカー 1
このウサギは確かに悪意の欠片も持っていないし、人の心を癒します。
スピーカー 2
それは間違ってません。ただ、やり方がまずいようです。
もう頑張らなくてもいいんだよ。無理して進む必要はないんだ。
スピーカー 1
ウサギはこうやって優しい言葉をかけ続けます。
もちろん実際に言葉にしているわけではありませんが。
確かに最初は効果があります。
全てを捨てていけば楽になれるのは本当です。
スピーカー 2
ただ、一通り捨て終えてしまうと、沈黙、限界がきます。
スピーカー 1
私たちは変化し続けるこの世界に生きる以上、どんな方向にであれ進み続けなければなりません。
ウサギが悟す思想の生き方はこの世界では不可能です。
それなら最後に捨てなければいけないものは、沈黙、続いて小さな笑い、自命ですね。
自分勝手な優しさは残酷です。
私が予約の時間に訪れなかった木戸さんの自宅を訪れたあの日、
スピーカー 2
ウサギは天井からぶら下がった木戸さんに向かって心配そうに泣き続けていました。
スピーカー 1
自分が彼をそうさせたのにも関わらずです。
あの光景を見れば誰もが私の言いたいことを理解できるでしょう。
私は今まで治療を施してきた何人ものクライアントさんに次元爆弾を仕掛けたわけです。
私はただ、助けたかっただけなのに。
スピーカー 2
その方法を誤ったせいでこのざまですよ。
鈴木氏の覚悟
スピーカー 2
本当に笑えない。
スピーカー 1
だから私はこの身を捧げます。
爆弾の解除行動を探すために。
そして、まだ助かるクライアントさんを幸せにするために。
この問題を解決するには、このウサギがクライアントさんに与える影響に対する主観的理解と、
それなりの専門知識が必要ですから、私が直接被験者になるしかないんです。
もちろん、家族や知人は反対すると思います。
スピーカー 2
だからこのことは誰にも言っていません。
スピーカー 1
この音声記録は私にもしものことがあった時のために残すものであり、
同時に私がこの覚悟を忘れず進み続けるためのものです。
ああ、安心するんだ私。
必ず無事に全てを解き明かして、誰もが幸せな結末を迎えよう。
それじゃあ録音はここでやめます。
また諦めそうになったらこれを再生するんだよ。
きっとあなた、そう、私はやれる。
大丈夫。じゃあまた。
録音終了。
鈴木氏の遺書と見られるメモ。
スピーカー 2
幸せになるにはこうするしかなかった。
スピーカー 1
注釈が5つ。
肩に乗る、鳴き声などを用いて意思疎通を試みる、追いかけっこと見られる行動をとるなど。
ウサギのいろいろな感情表現ですね。
動物の飼育経験のある人間の場合、この鳴き声を通して、
SCP-834-JPの感情を直感的に押し量ることが可能です。
患者が持参した精神科医の診断をもとにカウンセリングを行うことが主たる業務であったようです。
鈴木さんの元々の業務内容かな。
スピーカー 2
心理カウンセリングにおいてカウンセリングを受ける側の人間を指すクライアントさんですね。
スピーカー 1
鈴木氏が大学時代通っていた研究室の教授。
SCP-834-JPの確保後、記憶処理済み、手紙の相手ですね。
スピーカー 2
ウサギ、精神影響、明定外のタグが付いてます。
スピーカー 1
明定外で合ってるかわからないですけど、多分明定外からの贈り物ということですね。
お元気ですか?突然押しかけてしまい、びっくりさせてしまいましたね。
今そこにいるその子は優しい子です。時々失敗する不器用なところもありますが、一生懸命頑張ってくれるはずです。
SCP-834-JPの特徴
スピーカー 1
この子が帰り道を思い出すまで一緒にいてあげてください。
道を思い出した時はその子と一緒にぜひこちらを訪れてください。
明定外の住人がこっちの世界に迷い込んできて、
この人は誰だ?
以下の文書は確保時発見されたものの一部です。
スピーカー 2
治療経過などの詳細な文書の一覧は添付を参照してください。
微妙なアルコール。明定外だからってことかな。
スピーカー 1
うさぎ類に類似した鳴き声を言うし、主にこの鳴き声を通して人間に対し感情の伝達を試みます。
人間がいないと不安、落ち着きを失い、部屋を走り回ったり、壁に体を落ち着ける。
接触者の精神状況の好転をもたらします。鬱症状の改善が見られました。
接触後長期間が経過すると精神状況は悪化します。
長期かつ密接な接触は悪化を早めます。
記憶処理ででもなんとかなるんだな。
スピーカー 2
接触という事実自体が大引くというか、思い出を繰り返す感じで
スピーカー 1
プラシーボみたいな思い込みを強くしていく、リフレインさせる感じかな。
スピーカー 2
記憶処理でなんとかなるなら比較的安全なのかなという印象ですね。
スピーカー 1
鈴木さんが実験失敗して自分を被験体としてやってました。
SCP-834-JPの発見
スピーカー 1
SCP-834-JPは民間の心理カウンセラーである鈴木氏の自室で発見されました。
スピーカー 2
鈴木さんがどうなったかは書いてないですね。
なんか鈴木氏は自死していましたみたいなの書いてあっても良さそうだけど。
あーでもあれか。一番最後鈴木氏の遺書と見えられるメモって書いてるので
スピーカー 1
書いてないだけでおそらく亡くなってるんでしょうね。
スピーカー 2
というSCPでした。ではまた次回お疲れ様です。