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2023-05-03 15:18

やっぱり自分の家のカレーは美味しいなと気づくための外食、みたいなもの【旅におすすめの本】

今夜の勝手に貸出カードは、ソン・ウォンピョン著、吉原育子訳『他人の家』です。

旅のおともの本選び、読書のための旅先選びについて語ります。


番組へのご感想、メッセージ、リクエストはInstagram の⁠@batayomu⁠ からお寄せください。一つ一つ大切に読ませていただいております!

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真夜中の読書会おしゃべりな図書室へようこそ。こんばんは、KODANSHAのバタやんこと河童です。
真夜中の読書会おしゃべりな図書室では、水曜日の夜にホッとできて明日が楽しみになる、をテーマにおすすめの本や漫画、紙フレーズをご紹介します。
第132話を迎えました。今夜のお便りご紹介します。ペンネームホタルさんからいただきました。
バタやんさん、こんにちは。リターンズとても楽しく聞いています。
第122話の本にのめり込むための環境の整え方にものすごく共感しました。
私も昨年一人で一泊旅行に行った際、ルローの月夜、日帰り旅に行った際には死ぬまでに行きたい海を持参して読み切りました。
とても集中できて本の世界に没頭できたのが心地よかったです。
今年は200くらいで沖縄へ読書のための旅を考えています。
特に観光はせず、海を眺めてお酒を飲みながら本を読む、それだけの旅にしたいなとぼんやり考えているのですが、こんな旅におすすめの本はありますか?
バタやんさんが本を読むために旅に出るとき、旅先はどのように決めているかもとても気になっています。
ぜひ教えてくださいといただきました。
ありがとうございます。いいですね。沖縄に読書のための旅先の本選びについては時々ご質問をいただくのと、
今日からゴールデンウィークという方もいらっしゃるかなと思いまして、
今日は旅と読書をテーマにお話ししたいと思います。
一つ目のご質問、旅のお供に選ぶ本のおすすめは?についてですが、
おすすめというか、私の傾向なんですけど、旅のお供には翻訳ものを持っていくことが多いですね。
初めて読む作家さんとか、初めて読む国の本とか、北欧ミステリーとかも旅先で読みましたね。
それは翻訳ものを読むってやっぱり結構すごく気力がいる、高い感度と集中力を求められるっていうか、
名前も、登場人物の名前もなかなか覚えられないですし、言い回しも独特、節が独特だったりするから、
例えが多かったりとかね、私にとっても翻訳ものを読むのは負荷が高い読書なんですよね。
ただその分読み終えた時の達成感が大きい気がします。
そういう意味で旅先で美術館に寄ったぐらいのイベント性がありますね。
一つの旅で一つの翻訳ものを読み終えるっていうのは。
さて2つ目のご質問。
本を読むための旅に出る時、旅先はどのように決めているかなんですけど、
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これはね、はっきりと答えがあります。
乗り換えが少なくて、なるべく1本で長く行けるところを選んでます。
飛行機で行くっていうのもあるけど、飛行機は乗るまでと降りてからの時間がかかる割には、
乗ってる時間が短かったりするじゃないですか、国内だと。
それよりは2時間とか電車に乗れる方がいいかなって思っちゃいますね。
ロマンスカーとかあずさとか踊り子とか、東京に住んでるんですけど、
東京から特急電車、特急電車に揺られてずっと行けるっていう場所が一番いいですね。
新幹線もいいけど、ちょっと高いし、早くて疲れるっていうのがあって、
なんとか特急ぐらいが一番いいかな。
1回こう寝台列車みたいなのに乗って、東北に行くとかもやってみたいなと思っていますが、
つい先日もインスタには書いたんですけど、本を読むための旅に出ようと思って、
少し前からいろいろ検索してたんですけど、やっぱりどこもホテルが高くてゴールデンウィークにかかってると、
行きたいところはいっぱいだったりして、止まらなくてもいいかと思って、
で、踊り子号に乗って新宿から伊豆の方まで2時間ちょっとですかね、日帰りで行ってきたんですよ。
行きと帰りで、柚木浅子さんの新刊オールノットをちょうど読み終わりました。
これも旅にぴったりの小説でしたね。
ノスタルジックさというか、ちょっと懐かしい感じもありつつ、苦さとキラキラ感のブレンド具合がちょうどいいっていうか、
オールノットについては回を改めてじっくりお話ししたいと思っています。
で、今回乗ったのがサフィール踊り子号っていう新しい電車で初めて乗ったんですけど、すごく快適でしたよ。
私は全然鉄太田、坂井潤子さんの言うところの鉄子ではないんですけど、
弟がね、小さい時にすごく電車が好きで、電車の名前をたくさん覚えてたなって思って、
着物図鑑みたいなやつをよく一緒に読んでたから、大人になって新しい電車を見ると、
この電車は顔がかっこいいなとかって今でも思いますね。
サフィール踊り子号も顔がかっこいいんですよ。
なんとかレンジャーとか仮面ライダーみたいな頭してて、
ちょっと検索してみてみてください。
さてさて、ちょっと前置きが長くなりましたが、
今日の貸し出しカードは孫温平さんの他人の家にしました。
こちらの方、なんで選んだのかご紹介していきたいと思います。
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孫温平さん著、吉原育子さん役の他人の家をご紹介する前に、
孫温平さんという方、どういう人なのかご紹介しましょう。
はい、こんにちは。
名前を聞いてピンときた方は相当な経文学通科と思うんですが、
本屋大賞の翻訳小説部門1位を2回受賞している作家さんですね。
有名なのアーモンドでしょうか。
孫さんのご経歴を見ると、名門蘇元大学で哲学と社会学を学び、
その後韓国映画アカデミーで映画演出を専攻されていたとありまして、
なるほど、エリートって言ったらなんですけど、
エンタメのトップ教育を受けてきた方なんだなと納得がいきました。
韓国映画アカデミーって国立の映画学校なんですけど、
ポンジュの監督とかが卒業生で、
孫さん自身も映画の脚本とか演出をやったり、
翻訳者としても活躍されている多彩な女性なんですね。
何かの記事で読んだことがあるんですけど、
韓国ってエンタメを国の産業として、一大産業として認めているところがあるから、
こういう教育にも非常に力を入れていて、
韓国で映画を見るとチケットが例えば1枚1500円とか1400円だったとするならば、
その数パーセントが映画産業の育成に当てられるようになっていて、
韓国映画アカデミーの運営費に賄われているというふうに聞いたことがあります。
他人の家は短編集なんですけど、とっても映画的と言いますか、
いろいろ要素を増やして長くしたらきっと一本の映画になりそうだなっていう小説をギュッとコンパクトに削ぎ落として、
最小限まで削ぎ落として、さらっと短い短編に収めているみたいな小説が集まった短編集です。
表題の他人の家の他に7作品収められていて、8つの短編集が収められています。
私の一番のお気に入りは最初に収録されている四月の雪という作品です。
この主人公は5年余りの結婚生活にピリオドを打って離婚を考えている夫婦なんですが、
その2人の家で少し前に民泊アプリでゲストハウスとしてゲストを募集していた経緯があって、
それに応募してきたフィンランド人の53歳の女性が韓国旅行に行くのに泊まりたいって言って、その家に泊まりに来ることになるっていうお話。
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それだけのお話なんですね。
この小説のポイントは、何でこの夫婦が5年ちょっとの夫婦生活を終えて別れるっていう決意をすることになったのかっていういきさつと、
そのフィンランド人の女性が一回ドタキャンするんですよ。
来れなくなって、でも急にもう一回来るんです。
そのドタキャンして急にもう一回来るっていういきさつは何だったのかっていう2つの謎が明かされていく要素もありつつ、
読者の私はこの夫婦がもう離婚を決意しているってことを知った状態で読んでいて、
でも旅行者の女性はそれを知らないというかな、仲良し夫婦として見ているっていうズレが独特な緊張感を生み出すんですよね。
2人の慣れそめはとか聞くじゃないですか。
社交事例としても聞きますよね。
お料理上手ですねとか素敵な家ですねとか言うっていう。
私たちは読んでる側はこの2人はもう別れようと思ってんだよなって思いながら読むこのギャップがですね、なかなかドキドキしていいですね。
やばいな、孫音平さんはただもんじゃないなって思ったら、先ほどのようなご経歴だったので、やはりただもんじゃないはずだわという。
日常の一心を切り取っただけじゃないはずだっていうふうに思ったわけです。
この8編ある中で最後の作品が開いてない本屋という小説なんですけど、これもまたすごくいいんですよね。
タイトルからして優勝してますよね。開いてない本屋。
開いてない本屋っていうのは店主が店を開ける前の本屋っていうことなんですけどね、文字通り。
吉原育子さんの役が優勝していると言えるかもしれないこの作品です。
独特の会話、リズム感がある作品で、朝ごはんを作るシーンがあるんですけど美味しそうだったりもします。
この辺もちょっと映画的なのかな、ご飯のシーンがちょいちょい印象的に出てきますね。
開いてない本屋に、その開店前の本屋にあるお客が来るんですよ。
まだ開いてないですよって言うんだけど入ってきて、どうもそのお客さんとは初対面じゃなくて過去に何かあったっぽいっていう。
開いてない時間帯からお店が開くまでの短い時間のお話なんですが、
このルーティンを守りたい主人公に他人が突然入ってきて何かが変わる、空気がちょっと変わるっていう意味では、
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4月の雪と開いてない本屋はとても似ている作品です。
他の短編も少しそんなところがあります。
ではなぜこの本を旅のおすすめにしたかっていう意味も込めて紙フレーズをご紹介したいと思います。
この短編集についての新聞各紙のインタビューで、著者は、
自分だけでなく他の世界にも視線を向ければ、逆に自分が深まっていくということを伝えたいと語っている。
各短編には、家が象徴するような安全地帯を求める人たちや、そこから一歩踏み出そうとする人たちが出てくる。
その行為はそれぞれの在り方を認めることでもあり、繋がりを求めることでもある。
そのどちらも守ろうとする著者は、無数に存在する他人の家の扉を開け、
そこにいる彼らの姿をただ私たちに見せてくれるとあります。
ここは役者の跡書き、最後の役者の跡書きに出てくる解説のところなんですね。
他の世界にも他の世界にも視線を向ければ、逆に自分が深まっていくっていうのが、
この人の作品の共通点だったのかと思ったら、すごく合点がいったんです。
ああ確かにと思って、その強い共感による行為とかではなくて、
違和感によって自分のいいところとか相手のいいところに気づくみたいなこととかね。
外国人が急に家に来ることによって、うちのカレーっておいしいよねって気づくみたいなことでしょうか。
旅にもそういうところがあるなと思いました。
ルーティンを壊される、いつもと違う時間を体験することによって、
自分の日常が深まっていくみたいな。
そんなに長い海外旅行とかずっと長いこと言ってませんけど、
ちょっとした旅でも、旅の食事が続いただけでも、うちのカレーが食べたいなとか、
自分が作ったカレーっておいしいよねみたいな気持ちになるということでしょうか。
違うかな。
そんな孫温平さんの他人の家を今日はご紹介しました。
ホタルさんリクエストありがとうございました。
沖縄もう行かれたでしょうか。
旅と読書ぜひ楽しんできてください。
皆さんも良いお休みを楽しんでください。
さて今夜もお時間になってしまいました。
真夜中の読書会おしゃべりな図書室は、
リスナーの方からのお便りをもとに、
おすすめの本や漫画をご紹介しています。
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インスタグラムバタヨムからメッセージをお寄せください。
それではまた来週水曜日の夜にお会いしましょう。
おやすみなさい。おやすみ。
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